第27話 アラート山まで
ーーー翌日、街道ーーー
「昨晩は活躍でしたね!セカイノさん!」
アラート山に向かう馬車の中、トトが元気よく話しかけてくる。
「普通の人が手練の工作員を退けるなんて凄いですよ!」
「それほどでもないさ」
セカイノが手を振る。
「お前らがあれだけの大人数を引き付けてくれたから出来たんだ」
セカイノは笑う。
「トトの精霊魔術も凄かったのよ」
なのよがトトを向く。
「水の精霊?で全ての相手の足を止めたのよ」
「それほどでも」
トトは照れる。
「水の精霊といえばトト、お前よくもそんなものを飲ませてくれたな!」
セカイノがトトの頭をぐりぐりする。
「結果オーライだったからいいじゃないですか!」
「お前、工作員がいなかったら俺達を水の精霊で操るつもりだっただろ!」
「司教様の命令ですよ!僕のせいじゃありません!」
「まったく」
トトは咳き込み、
「それはそうと、なのよさんも凄かったんですよ。足止めされた人達をまとめて吹き飛ばしていったんですから」
「怪我人を出さないなのよの手加減の調整は相変わらず化け物じみてるな」
セカイノが茶化す。
「女の子相手に化け物は失礼なのよ」
「これは失敬」
セカイノが後ろにもたれる。
「あっ!あっち!」
突然、なのよが一方向を指差す。
「おお」
セカイノもそちらを向き、感嘆の声を上げる。
「地平線ですね。そういえばなのよさんは島国育ちでしたっけ?地平線を見るのはこれが初めてですか?」
「そうなのよ」
なのよは頷く。
「あれが地平線・・・感動なのよ」
「こんな所まで出張ってきた甲斐が少しはあったかな」
セカイノが笑う。
「こっちも見えてきましたよ」
トトが南の方角を指差す。
山々の間に、ひときわ高い山が姿を現す。
「あれがアラート山です」
「おお」
今度はセカイノが感嘆の声を漏らす。
「高けぇな。何メートルあるんだ?」
「3000メートルです」
「ほえー」
なのよも見入っている。
「今度は雪だる魔に襲われたりはしねぇだろうな」
「なんです?雪だる魔って?」
トトが不思議そうに聞く。
セカイノは真夏島の寒冠山脈での出来事を話した。
「へー。話には聞いてたけど、真夏島って不思議な場所なんですね」
「万国ビックリショー並みにな」
なのよとトトは顔を見合わせる。聞き覚えの無い言葉らしい。
とりあえずトトは気分を入れ替えて話しを変える。
「ところでセカイノさん」
「何だ」
「セカイノさんてロリコンですか?」
ぶっ!
セカイノは息を吹き出す。
「なんでそうなるんだよ!」
「いや、なのよさんとやけに仲が良いから、そうなのかなと」
「違うよ!俺の好みはもっとムチムチとしててボイーンな感じだ!」
セカイノはずれた帽子を直して、
「なのよは真夏島で案内役をしてもらってたんだ。この国では議員の護衛として一緒に来ている」
セカイノは後ろにもたれかかって、
「まあ冒険仲間みたいなもんだ、なあ?」
なのよに向くと、
「ど、どうせ私はムチムチボイーンじゃないのよ・・・」
いじけていた。
「まあそう言うなって。お前もあと4年で16だろ?その頃にはマシになってるさ」
トトはへぇそうなんですねと気のない返事をして、
「まあそれはともかく、山の麓に街があるので、そこで準備を整えましょう」
トトは馬車を進める。




