第23話 潜むもの
ーーー西の首都、街道ーーー
異変は突然、始まった。
セカイノたちを乗せた馬車の馬が、ヒヒーン、と突然いななくと、急に暴走を始めた。
「どうっ、どうっ!」
御者が必死に押さえ込もうとするが、馬は止まらない。
「私に任せるのよ」
なのよはリュックから花を一本取り出し、
「沈・静・花!」
馬に突き刺す。
馬はしばらく興奮していたが、やがて落ち着きを取り戻し、停車する。
「なのよ!周囲を警戒しろ!」
「わかってるのよ」
なのよは周囲を見回す。道行く人たちが何事かと遠回りに囲んで見ている。
襲撃者らしき人影を探すが特にそれらしい人影は見当たらない。
「能力者もしくは魔導具か」
セカイノは周囲を警戒しながら呻く。
「どうなされたのですか!?」
マリーネが馬車から顔を出す。
「あんたは馬車に隠れーーー」
セカイノはそこで気付く。
マリーネの影からナイフを持った手が突き出てくるのを。
セカイノは咄嗟にマリーネを抱きかかえ、ナイフから逸らす。
「なのよ!影だ!」
なのよも気付いたらしく、リュックから花を取り出す。
影は手を引っ込め、影から影へと移り、逃げてゆく。
「ちっ、逃がしたか」
セカイノは舌を打つとマリーネに向き直り、
「面倒なことになった。影で覆われた場所や夜間での警備体制を変えなきゃなんねぇ」
「大精堂へ行きましょう。あそこなら結界が張ってあるので敵も侵入できないはず」
「馬車は無理だな。また暴走させられるかもしれねぇ」
セカイノはため息をつくと、
「歩いていくか」
「ここからなら徒歩で30分といったところでしょうか」
警備団長はようやく口を開き、
「警備団員に互いの影を見張らせながら進みましょう」
進言する。
ーーー30分後、大精堂ーーー
「ここです」
マリーネが建築物をさす。
「おおーっ」
「おっきいのよ」
広大な敷地に白と水色を基調とした、巨大な建物が建っている。
「中の収容人数3000人、広場の収容人数は30000人、約500年前に建設され、数度の改築を繰り返し、現在の姿になっています」
マリーネが解説する。
「歴史を感じるなぁ」
セカイノが感心していると、中から数人の僧侶が出てきた。
「これはこれは、真夏島の皆様、遠路はるばるよくぞ来られました」
「悪いが挨拶は後にしてくんねぇか?たった今しがた工作員の襲撃を受けたばかりなんでね。結界の中に入れてほしいんだが」
僧侶は驚き、
「なんと!そうなのですか!?」
マリーネは頷く。
「わかりました。どうぞ中にお入りください」
セカイノたちを奥に招く。
「我々の台詞を取らないでほしいんだが」
団長が渋面になる。
セカイノ達は精堂の一室に案内された。
「司教がお会いになられるまでこの部屋でお待ちください」
マリーネは首をかしげ、
「すぐに司教様にお会いできるのですか?」
「それほど東の大国の暗躍が多いということです」
僧侶は背を向け、司教を呼びに行く。




