第21話 小さきもの
ーーー無人島・山の麓ーーー
ジャングルに囲まれた広場に十数人の男達がせわしなく動いていた。
「工作員達なのよ」
なのよ達はジャングルの茂みから気配を殺して覗いていた。
「ビンゴだな」
一人の工作員が上官らしき工作員に報告をしていた。
「島の海岸に真夏島の使節団の船を発見!いかがいたしましょう?」
「こちらに気付いていないはず。やり過ごせ」
「はっ!」
上官はきびすを返すと広場の中央に歩いていく。
そこにはーーー
「何だあれ?」
広場の中央には小さな台が置かれており、その上には、
「タコなのよ」
なのよが呟く。
そう、台の上にはタコが乗っていた。
工作員の上官がタコの前で膝をつき、
「パタ様、使節団の船はあなたのお父上が沈めたのではなかったのでは?」
詰め寄る。しかしパタと呼ばれたタコは動じずに、
「親父でも沈められなかったのか。余程いい船に乗っていたのかそれとも、かなりのてだれが乗っていたのか或いはその両方か」
「そんな無責任な!」
「まあそう慌てるな、親父は海の上では無敵だ。次の航海で確実に沈むさ」
「だと良いのだが・・・」
上官の男は呻く。
セカイノとなのよは茂みの中で、
「なにか様子が変だぞ?タコが海神の人質に囚われているもんだと思っていたんだが」
「なぜか立場が逆なのよ」
そんなことを話しているとタコが、
「おい、そこの下っ端」
「なんでしょう?」
「肩を揉め」
「肩・・・ですか?」
「そうだ」
工作員は困惑して、
「どこからどこまでが肩なんでしょう?」
至極もっともなことを口にする。
タコは真っ赤になって、
「いいんだよ!大体で!気分の問題なんだよ!」
「は、はぁ」
隊員はしぶしぶタコの肩(足?)を揉み始めた。
セカイノは少し腰を浮かせると、
「ちょっとあのタコを〆てくる」
「ま、待つのよ。もう少し状況を見守るのよ」
慌ててなのよが制止する。
セカイノは舌打ちして腰を下ろすと、話し声に耳を傾けた。
「しかしあれだな、まさか親父殿もこの俺が人間に結託してるとは夢にも思ってないだろうな」
「「!」」
「さらわれたフリしてるだけで、ご馳走にありつけてさらに殿様気分を味わえるんだから人間様さまだな」
セカイノは黙って茂みから出て行く。
なのよももう止めなかった。
「なんだおまーーー」
セカイノが一番近くにいた工作員を投げ飛ばす。
「て、敵しゅーーー」
セカイノは持っていたトランクから電気ネットを射出する。
4、5人程度の工作員が身動きが取れなくなる。
「撃て、撃てぇー!」
その声と同時に、工作員達はなのよが放った爆風に吹き飛ばされる。
「仕方ないのよ」
残るは上官だけになった。
「A級エージェントでも勝てないのに、お前ら下っ端が俺らに勝てると思ってんのか?」
「ぐううう!覚えていろよ!」
捨て台詞をはき、上官は逃げ出した。
「さて、と」
セカイノはパタを見やる。
「な、なんだお前、俺とやる気か?」
パタはセカイノを威嚇する。
セカイノは、
「おい、なのよ。腹減ってないか?俺は島の周りを歩いたり、山に登ったりでペコペコなんだが」
「わたしもペコペコなのよ。丁度、焼きタコが食べたい気分なのよ」
パタは一転、態度を変化させ、
「よ、よせ、話し合おう。話せば分かり合えるはずだ」
「おい、なのよ。こいつらの使っていた鍋と燃料を探して来い。その辺にあるはずだ」
「わかったのよ」
なのよが道具を探しに行く。
「ま、まて。宝か!?宝が欲しいのか!?わかった、いくらでもやる!だから命だけは助けてくれ!!」
「別に宝をくれとは一言も言ってないが。まあくれるんなら貰っておこう。とりあえずお前はお前の親父に引き渡す」
「ありがたき幸せ!」
パタはひれ伏した。
ーーー船上にてーーー
「この馬鹿息子が!」
「ひい~父上、ごめんなさーい!」
海神はセカイノに頭を下げ、
「この度は愚息がとんだご迷惑をお掛けし、まことに申し訳ない」
「いいってことよ。宝も貰ったしな」
「それはどうぞお納めください。息子を取り返してくれたほんのお礼です」
船の一角に財宝の小山が置かれていた。
1億キャシュはくだらないだろう。
その向こう側で警備団がざわめいている。
「まさか一日で解決だと?」
「おいあいつ海神と会話してるぜ」
団員のセカイノを見る視線に畏怖の念がこもっている。
団長が前に進み出て、
「おいセカイノ。一つ聞いていいか?なんでこの島に海神の子が捕らえられてると思ったんだ?」
「子供がいるのは知らんかったが、海神が天候と波を操っているのは『見えた』からな。この島に流されてきたのは偶然じゃない。あとはこの島にある海神の大切な『何か』を探すだけだったんだ」
団長は理解できないものを見る目でセカイノを見る。どうやらセカイノへの過小評価は消えたようだ。
「それより海神、あんた達普通の一般人とも会話できるようだが」
「ああ、わしらは実体を持って、もう数百年もこの辺の海を束ねておりますから」
「じゃあ自称唯一神が一部復活したというのはわかるか?」
「大陸の方から何か良からぬ気配が漂ってきてるのがわかります。・・・そうですか、あの悪魔が復活したのですか・・・」
海神はなにやら考え込んでいる。
セカイノは手を合わせ、
「海神、頼みがある。もしかしたら東の大国との戦争が起こるかも知れねぇ。その時に真夏島に加勢をして欲しいんだ」
海神は目を細め、
「わしの一存では決めかねます。他の海類族との合議を経て決めねば」
「それでいい。頼む」
「わかりました。では人間よ、また会いましょう」
海神はパダを連れて海へ帰って行った。
セカイノは腰に手を当て、
「さて、あとはスクリューが直るのを待つだけだな」
「素晴らしいですわ」
「?」
セカイノが振り返った先にいたのは統率議員のマリーネだった。
「素晴らしいですわセカイノ様。セカイノ様は土地神とも仲良くなれるのですね」
「何でもというわけではありませんがね」
なのよがセカイノの後ろで餅のように顔を膨らませる、がセカイノは気付かない。
「後ろの小さな騎士様もこれからの護衛、よろしくお願いしますね」
「わかったのよ」
なのよはしぶしぶ承諾する。
「じゃあ、俺達は船が直るまで船室に待機するか。行くぞ、なのよ」




