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Massacre of cultism  作者: 新生 旧太郎
6/7

5話

バルブロは後悔とかの男からの侮蔑への怒りに震えていた。

『まあ、落ち着けよ。おっさん』

目の前にいるのは……独房に幽閉された者。

宿泊棟から離れの警備棟の地下二階の独房…こいつしかいないが。バルブロは相談しに来ていた。

何故、独房にいるような者に相談するか。

答えは一つだ。


こいつが《高等神話生物》だからだ。


高等神話生物────度々出てくるが、よくわからねえよ、という読者様も居るだろう。簡単に言うと、ア・ウファーヴ眷属や邪神のどちらにも着かない生物だ。しかし、人類よりも遥かに知性などは上回っており、脅威でもあれば助けにもなる。逆も然りだが。

そして、バルブロの目の前に居るのはその高等神話生物の中でも最高の知性、魔力、理性を持った『グ・ゾー』という生物だ。

人の形を今は取っているが、本来は緑のスライムにカラフルなモールがくっついたようなファンシーな姿をしている。しかし、彼の魔力があれば、月一つくらいなら余裕で消し飛ぶらしい。


バルブロは高等神話生物に聞けば、契約の穴や強さがわかるはずだ、と思ったのだ。そして、彼の話すにはこういうことらしい。



眷属との契約はほぼ完璧で、正直どうしたらいいか“一見”わからない。しかし、犠牲にしているものは《表面上のもの》と《内部のもの》とがあるはずだという。その二つの欠陥を突けば、案外簡単に怯ませる事はできるらしい。それでも、殺す事は不可能だという。


『それよりも、おっさん、パートナーのあの娘、支えてやることだな。あの娘はアンタが思う以上に弱いし、アンタが思う以上に強くなれる可能性が多くある。だから、支えてやることだ、アンタら地球の愚鈍な人類が言うところの《愛》だとか《包容力》とかでな。醜い生き物からはこれくらいしか言えねえな。』


バルブロはありがとうな、と煙草を吹かせて独房を後にした。

紫煙が天井を這って、換気口に吸われて行く。バルブロも地下から地上に上がる。なるべく宿泊棟には近寄りたくはない。

あのパニックがあったが、大広間の死体は“探索者の死体は30体ほどの中に2体しかなかった”という。あとは知らない顔だったりしたという。それも不自然な話ではある。ただ、用心しなくてはならない。リクハルドはここに来ることができる、つまり自由なのだ。


考え事をしながら医療棟に着いた。

ズラトゥシェはどうしてるだろう。現場に無理に連れて来てしまった。あんな光景、何度か惨状を見た俺でも怖かったのだ。ズラトゥシェは大丈夫なのだろうか…。


心配しながら扉を開けた。


そこにはベッドに座ったズラトゥシェ……座った?

バルブロを見ると、ほっぺを膨らませた。

『恥かいたじゃないですか。』

ズラトゥシェは怒った口調で言った。

『え?』

バルブロは何が恥なのかわからなかった。

ズラトゥシェが言うには────


確かに吐いちゃったりしましたよ、けれども、クソ恥ずかしくてリクハルドどころじゃないでしょうよ!!お漏らしですよ?!しかもパートナーの目の前で!敵前で!死体降ってきてもそれどころじゃなかったですよ…


詰まるところが、前話の呆然としていた理由はそれだったのだ。

恥ずかしくて呆然としていた、というのだ。

バルブロは驚愕した。失禁は大して気にしていなかったが、そこが彼女のショックのポイントだったのだ。…地味に精神力強くないか?バルブロはグ・ゾーの言葉を思い出した。


『アンタが思う以上に強くなれる可能性がある』


確かにそうだよ、グ・ゾー…とバルブロは思っていた。

すると、ズラトゥシェが、『あいつらの弱点ないんですか?!復讐してやりたいですよ』と意気込む。

バルブロはそれを聞いて安心した。

そして、二人は離れにある本部の会議室を借りることにした。



────話は少しすっ飛ばして会議室。

面倒だからこれでいいと言ってズラトゥシェは病院服のまま出てきた。バルブロは特に気にしないようにしていたが、彼も男である。張り裂けんばかりの胸元や、淡色の病院服に映える赤く艷めいた髪、真っ白な肌に目が行ってしまった。しかし、何とも、パートナーとは不思議なものだ。いや、異性同士だから惹かれ合うのは当然か。ズラトゥシェもバルブロの哀愁漂う雰囲気に心を射抜かれていたのだ。まあ、そんな恋愛話はいつかにしよう。

話す内容は《何でもいいから弱点》だそうだ。

しかし、肉体的にダメージを与えるのはリクハルドがいる限り無理じゃないか、という一つの結論に逢着するばかりだった。

そして、《精神的ダメージ》について話すことに。

調査資料を大型タブレットに映し出す。

何十とある…普通に面倒な気もする。

そもそもどこから何を再調査するべきかもわからない。

すると、隣の会議室の談笑が聞こえた────


『でさー?俺の親が爆笑もんなのよ!!』


バルブロは煩いな、と呟いていると、ズラトゥシェが突然叫んだ。『そうだ!!』

バルブロは驚いて椅子から落ちそうになる。


『な、何だ?』

『親ですよ!親!』

『お前の親も爆笑もんなのか?』

『違いますよ、バルブロさん、あいつらの親!』

『ああ……ああ!!』


タブレットで調べる。


51代当主、ゲルハルト・マルテンシュタイン。

神話研究に一生を懸けた。グ・ゾーとの対話成功などの偉業はあるが、ガタンドからの至上命題により黒猫館の一員から妻レオナ諸共虐殺される。享年38歳。

ちなみに三人いた娘、息子たちは黒猫館に一度誘拐されるも、二ヶ月で逃亡、その後の生い立ちは不明。


────精神的ダメージと為りうるだろうか。

父母の虐殺。


常人なら触れられたくはない傷だろう。


バルブロとズラトゥシェは一歩近付いた。



襲撃まであと五日。

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