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大人の社会

質の良い生地で仕立て上げたスーツを着て、青頭千里は準備を終わらせる。

その顔は白いと言うよりは青白い。しかし血色が悪いという訳ではない。

まず血の色が違うのだ。青頭千里の中に流れるのは青い血である。

人間と変わらない姿した人間のように生活して人間のように振舞う人外。

BlueBlood社という会社の社長をやっている。それは人間社会に馴染むため。

若いながら前社長より期待されて育てられたという、設定で世の中には通している。

黒い髪や整っているが特徴のない顔、どこからどう見ても人間と変わりない。


「さて、と…ややこしいことになったけど想定内だね」


青頭千里が経営する会社はアンドールの制作をしている。

販売や多くの権利は御堂正義のCROWCROWN社が掴んでいる。

それも計算の内で請け負った制作だが、テレビジャックされた影響でアンドール関係の会社は注目を集めていた。

しかも悪い方向にである。隠し事というのはそれだけで黒いイメージがついてしまうものだ。

言うほどのことではない、今はその時ではない、と黙っていたことさえ隠し事と言われたらそれだけで悪い印象がつく。

自分達が隠し事する分には何も言わないのに、他人にされたのがわかった途端批判する。

本当に人間は厄介でちまちましてて可愛さ余って憎さ百倍だと青頭千里は心の中で嘲笑う。


テレビジャックされた内容によって、アニマルデータの単語は動画によって世界中に知れ渡った。

まだ販売の多くは日本だけだが、いずれは世界販売も狙っていたロボット産業のため、知名度が上がるのはいい。

しかしそこに会社が不祥事を隠していたというのがついてくれば話は別である。

ネット掲示板やニュースなどで取り上げられ、マスコミも会社や関係者にマイクを向けてくる。

それが大人だけの世界ならまだ我慢できただろう。しかしアンドールは子供用の玩具ロボットである。

アニマルデータはそのアンドールに入っている。つまりアニマルデータの持ち主は子供達になる。

つまり子供達の生活に大人達が土足で踏み入ってきた、厄介な話なのである。




竜宮健斗はセイロンと共に家の玄関からそっと外を見る。

隠れているようだが僅かながら塀の上に集音用マイクが見える。

またすぐにでも飛び出せるようにスタンバイしている司会者の黒い靴のつま先も見える。

静かに扉を閉じて竜宮健斗は溜息をつく。


「俺、いつになったら学校に行けるんだろう…」

<面倒な世の中だ…>


御堂正義が会長を務めるエリア管理委員会。

管理委員会に認められたエリアボスの子供達とアンドール。

マスコミはすぐに何かあると掴み、表に立っている各エリア五人の子供達に注目したのだ。

ボス、副ボス、マネージャー、書記、会計、その他の団員として付属している子供達はまだマスコミの手から逃れられている。

団員名簿はプライバシーに関するとして非公開にしているからいい。だがそれをまとめるエリアチームばかりは堂々と公開していた。


そのため竜宮健斗は検査を終えて帰宅した翌日から家から出られないほど、マスコミに追われるようになった。

もちろん今まで黙っていた家族にあっさりとセイロンのことはばれた。

セイロンも観念して自ら話し出して深い謝罪と大まかな筋を説明した。

元はすでに青年として社会に活動していたため、態度に申し分はなかった。

しかしロボットの中身が元は人間であり、流暢に喋ることに母はショックを受けていた。

竜宮健斗の父親は真面目に聞きながら、一言尋ねた。


「セイロンさんは、健斗の友達なんだね?」

<はい。俺はそう思ってます>

「じゃあいい。これからも馬鹿な息子をよろしく頼む」


そう言って普段通りの生活に戻り、新聞を読み始めた。

父の堂々とした態度に母も冷静さを取り戻した。

しかし姉と兄は理解が追い付かなかったらしく、何気なくセイロンを避けている最中だ。

竜宮健斗は問題の中心なので家から出られなかったが、家族は少し早目の行動でいつもの生活をしていた。

姉は彼氏でありDJ・アイアンである信原鉄夫をバイクで呼んで大学へ。

兄は自家用車で学校へ。父は自転車で電車の駅まで出かけている。

全員マスコミに囲まれたが姉と兄は突っ切った。父は危ないですよーと自転車のベルを鳴らして散らした。

母も買い物があるため出かけるが、今はなるべく屋内の家事で気を紛らわしている。


「健斗とセイロンも手伝って。お布団干そうにも外に人がいたら落ち着かないのよー」


洗濯物すら屋内干しなので湿気が酷い。加湿器を稼働して誤魔化しているが気分は良くない。

いつもは明るい竜宮健斗も渋い顔をしている。干したばかりの布団が好きなだけ、この状況は辛い。

しかし母は忙しい忙しいと言っていつも通りだ。セイロンにも慣れてくれたようだ。


「一番の問題はただでさえ馬鹿なのに、学校生活に支障が出たことね…」

「うーん…なんか御堂会長は手を打つって言ってたけど…」


検査の翌日に御堂霧乃から父親達が何とかするから余計なことは言うなと釘を刺された。

それ以来連絡が取れない。どうやら忙しいのと、御堂霧乃もマスコミに追われているのだろう。

御堂霧乃は御堂正義の娘である。家族関係として巻き込まれているのだろう。

他のエリアの子供達や崋山優香達ともメールや電話で状況を確認し合っている。

しかしどこも芳しくない結果しか出てこない。マスコミの方に学校が抗議入れていると担任からも連絡が来た。

学校の方にも張り込みや、ニュースを見てどう思ったなどのマスコミや不審者が現れているらしい。

学校自体に影響が出ているのは良くない。だが状況としては加速している。悪化の方向で。

何かしようにも竜宮健斗は子供である。なんの力もない、いたって普通な子供である。

今の状況を打開する方法などなにも思いつかない。ただただ耐えて過ぎ去っていくのを待つしかない。

しかしそれがとても苦痛なことに悶々としている最中、インターホンの音が聞こえた。

母が用心深くカメラと音声を伝える受け口機械を操作する。

そこには青白い肌したスーツを着た青年と、白衣を着た金髪の美女二人組が立っている。


『青頭千里とマスターです。こう言えば健斗くんはわかってくれると思います』

「…あ、青い血のおっちゃん!!」


インターホン越しに聞こえてきたおっちゃん発言に青頭千里は笑顔のまま固まった。

隣でマスターが盛大に吹き出し、私も今後そう呼ぼうかなと思案する。

母は青い血という単語に首を傾げたが、すぐに大企業名の名前を思い出す。

一流企業BlueBlood社。そこで母は青い血というのを自己解釈して納得した。

そして驚く。なんでこんな馬鹿息子がそんな偉い人と知り合い、しかもおっちゃんと呼べるほど親しいのかと。


「マスコミは?おっちゃんも関係者だろ?」

『ああいうのは正式な手続きや法律などを元に脅せばある程度は蹴散らせるんだよ』

『マスターが近所の法律勉強家ということで騒音被害で訴えるために詳しい会社名を聞いたら蜘蛛の子散らすように去ったよ』

「………え?マスターって、え?」

<…これまた予想外の美人が来たもんだ>


マスターと指差された女性を見て竜宮健斗とセイロンは驚く。

青頭千里はインターホン越しじゃ長くいられないし、まずは出かける準備をしてくれという。

今ならある程度マスコミがいないから大丈夫と、念も押してくれた。

竜宮健斗はすぐさまボスバッジをつけている愛用の帽子と上着とリュックを部屋にとりに行く。

母から遅くなるようだったら連絡入れるのよ、という言葉に返事しつつ玄関の扉を開ける。

確かにマスコミはある程度散っていた。しかし少しずつ戻ってきている。

しかしその視線は竜宮健斗ではなく、青頭千里に向いている。


「おっちゃんも有名人だっけ?」

「せめてお兄さんが良いなぁ。さっきまで僕は隠れてたんだけど…鼻が良いねぇ」

「…あれ!?マスターは!!?」

「愛人として騒がれたら舌噛み切ってやるとか言って帰ったよ。まぁ無茶を頼んだからね」


いつの間にかいなくなっているマスターに竜宮健斗は目を丸くする。

青頭千里は笑顔のまま竜宮健斗の背中を押して、歩かせていく。

その際にセイロンを抱いたまま絶対放さないでねと忠告もする。

門を出るまではマスコミは来なかった。出た瞬間に群がって逃がさないように囲んでくる。

青頭千里は慣れた感じで手を使いながら通りますと笑顔で言う。足取りも迷いがない。

しかし竜宮健斗は慣れない大人の取り囲みに委縮する。セイロンを抱く力が強くなる。


「竜宮健斗くんだね!その抱いているのがアンドールの…」

「アニマルデータについて君達が所持をしていると…」

「今回の一件では…」


頭がパンクしそうな程の質問責めに向けられてくるマイク。

マイクの内いくつかはセイロンに向いているが、セイロンは沈黙を貫く。

しかし痺れを切らした誰かがマイクを強くセイロンに押し付けてくる。

押し付けられたマイクでセイロンの首辺りが強打され、皮膚の役割をしている布地が裂ける。

嫌な火花の音が弾けた。


<…っ!?>

「セイロン」


息を詰めたような機械音声。

音声を集音マイクが拾う。誰もが反応してセイロンに視線を向けた。

その視線を遮るように青頭千里が竜宮健斗とセイロンの前に立つ。


「はい。器物損害罪。大衆への迅速な情報伝達にしては些かやりすぎではありませんか?」

「青頭社長、それは我々への脅迫として…」

「いえいえ。じつはこれから記者会見がありまして、彼もそこでセイロンと共に話してもらう予定です」


青頭千里の一言に場が騒めく。竜宮健斗は全く聞いていなかった事柄に目を丸くする。

青白い顔は変わらないが、その目に愉快さを含ませて朗々と語る。

指定時間や指定場所、また収容人数において全てのマスコミが納得する場を用意。

そこでアニマルデータについて正式な情報公開、及び説明や今後の発展について。

ありとあらゆる質問も受ける、一番最初の公の場での発表。


「ですので彼に支障があっては我々としても会見を引き延ばすことになりますので…」

「中央エリアホテルグランドユートピア…」

「ええ!そこで会見受付もやっていますのでぜひともそちらにご参加を」


竜宮健斗の目の前でマスコミ達は迅速な移動を開始した。

そして数分で残されたのは青頭千里と竜宮健斗とセイロンだけである。

やっと息苦しい取り囲みがなくなり、一息をつく。

青頭千里のスーツは乱れ一つ見当たらず、しかし埃を払う動作をしている。


「本当は後で説明しようと思ったけど…急にごめんね」

「いや…うん。セイロン、大丈夫か?」

<ああ…眩暈に似たのを感じただけだ>

「恐らく中のコードに触れたんだろうね。ホテルでマスターに見てもらおう」


そう言って青頭千里は改めて竜宮健斗を案内する。

路地の先に普通のワゴンカーが停めてあり、ボディガードらしき男がドアを開けてくれる。

中は外見から想像もできないほどの豪華さで、向き合う座席に机まで用意されている。

移動用の車だよ、と青頭千里は補足するように言う。

そして二人で後ろに乗り込んだ後、ボディガードが運転席に乗って車を動かし始める。

ブレーキやカーブを感じさせないことから、車の質と運転技術の高さも窺える。

青頭千里はクーラーボックスからジュースを取り出して、竜宮健斗に渡す。


「今から南と西、北と回って各エリアボス回収。で、最後は中央エリアで会見だからゆったりするといいよ」

「四つエリア回るの!?時間かかるじゃん!!」

「そうしないと会見準備が間に合わないし、君達は本番に強そうだからね」


快活に笑う青頭千里は、お菓子の袋を取り出す。

ポテトチップスの袋を綺麗に開けようとして力を入れるが、開かない。

笑顔のまま少し考えた後、大人しく開けてない袋を竜宮健斗に手渡す。


「…青い血のおっちゃん不器用なんだな」

「子供に言われるとは思わなかったよ」


失態で顔をさらに青ざめながら青頭千里は言う。

青い血であるから顔が青ざめているが、これが赤い血だったら顔は真っ赤である。

青頭千里がいつも笑顔でいるのは、そんな顔色を誤魔化しているからである。

ちなみに竜宮健斗はあっさりと袋を開けて、中にあるお菓子を食べ始める。

美味しそうに食べている姿を眺めながら、青頭千里はジュースの缶を開けようとする。

すると今度は力加減を間違えて、蓋の部分を中に勢いよく落としてしまう。

服にはかからなかったものの、派手な音がした。


「…おっちゃん」

<不器用だな…>

「…うん」


青頭千里は消え入りそうな声で肯定した。





南エリアでは竜宮健斗は車待機をしていた。

すると数分後苛立った顔で籠鳥那岐が入ってくる。

青頭千里は相変わらずスーツに乱れ一つない。


「いやー、那岐くんってばお母さんが海外仕事と、お父さんが遺跡監視強化で家に一人でいたよ」

「うるさい。いつもは一人で平気だったんだ」

<しかし外出ができなくて家がなああああああ>

「黙れ」


余計なことを言おうとしたシュモンの首辺りを強く握る籠鳥那岐。

ゴミが庭先に溜まって内部もあまりいい状態ではないと青頭千里が簡単に説明した。

つまりはゴミ家状態になりかけていたらしい。掃除はしていたらしいが、食料が米くらいしかない状況でもあった。

籠鳥那岐の父親は御堂正義の部下で、南エリアにあるアニマルデータの遺跡を任されている。

そのため関係者の中でも強く注目を集めたのだろう。目にクマも少しできている。


「…久しぶり」

「応!久しぶり!」


電話やメールでは満たせない何かが目の前にある。

それを感じ取った籠鳥那岐は車が動き出した後、安心したのか眠り始める。

車が少し揺れた際に竜宮健斗の膝上に頭を落としたが、起きる様子はない。

竜宮健斗は気にしないまま、セイロンとシュモンを交えて簡単な話をする。


シュモンの話では南エリアにある遺跡はまだ知られてないとのこと。

しかし時間の問題で、今日の会見で先に発表できたらいいと話す。

籠鳥那岐の母親は海外弁護士をしており、滅多に帰ることはない。

父親も仕事があるため一人で過ごすのは普通のことである。

だが今回は外出に制限がかかった上に、扇動涼香の件で追及されたらどうしようもない。

そのため籠鳥那岐は黙っていたものの、精神的に疲労を溜めこんでいたと言う。

あと数日遅くなっていたら本格的に危険だったとシュモンは真剣な様子で告げた。



そして少し時間が経った後、西エリアに着く。

西エリアではまだボスが決まらないまま活動している。

そのため竜宮健斗は副ボスである葛西神楽を迎えに行くのかと思った。

しかし着いたのはヴァイオリンの音が聞こえる、仁寅律音の家であった。


「…なんで?」


そう言って即座に扉を閉めようとした仁寅律音。

だが扉の隙間につま先をねじ込み、青頭千里は竜宮健斗の頼みだと嘘を吐く。

仁寅律音は扉を閉める手を止めて、少し考えた後仕方ないと言って準備をする。

そして車に乗せられた後、嘘だとわかって青頭千里を勢いよく睨みつける。


「降りる」

「動いたから降りれないよ」

「飛び降りる」


本気で飛び降りかねない仁寅律音をシラハと竜宮健斗が必死に止める。

なにせ前科がある。その時は尋常でない精神であったため、窓から本気で飛び降りた。

しかし今なら止められると必死で止めたため、なんとか思い留まってくれた。


「だから僕は何度も…」

「でも俺は律音がボスになってくれたら嬉しいんだけどな」

「………」


竜宮健斗の笑顔に圧倒され、仁寅律音は続きを言えなくなる。

それを眺めてた寝ぼけまなこの籠鳥那岐は時間の問題だなと感じる。

同じく眺めていた青頭千里はちょろいなと先は見えたと言わんばかりに微笑んでいる。

シラハはセイロンとシュモンの視線を無視し、もうあの部下たちの面倒を見たくないと心の底から思うばかりであった。


仁寅律音の話だとマスコミのせいで母親である仁寅董子がまた入院したらしい。

父親のショックから立ち直っていたとはいえ、まだ通院が必要な状態の中に息子のマスコミ騒動。

精神的に参ったらしく、祖父母にも影響が出たため三人は病院で過ごしていると言う。

仁寅律音は相手の裏をかくことや、行動を読み取るのが上手である。

そのためヴァイオリン稽古や買い出しなどマスコミを上手くかわして生活していた。

もちろん見つかることもあったが、そこはまだ昔の面影を残す西エリアの特長が幸いした。

騒ぎを嗅ぎ付けた御近所の方々が壁になって助けてくれたらしい。

少し照れながら仁寅律音は、一人で何とか生活できていたのだと言った。




雪降る北エリア前ではタイヤにチェーンをつけ、少し速度を緩めて移動する。

ちらほらと小雪が舞うように落ちていく。そしてすぐに玄武明良の家の前に着く。

玄武明良は事前に説明を受けていたらしく、渋々と言った様子で外に出てくる。

普段から外に出ることを厭うので、いつも通りの姿である。


「なんか明良は変わってなさすぎないか?」

「まあな。他と比べてここはマスコミが少なかったし」


北エリアは常に雪降るエリアである。

いきなり吹雪になったり、電車が止まる事態など日常茶飯事である。

マスコミも外で張り込みを続けるには北エリアは厳しいものがあった。

玄武明良の家にはアンドールの生みの親と言える扇動岐路がいる。

しかし扇動岐路は会社の方に缶詰めにされ、ここ数日は帰ってきていない。

また義息子の扇動美鈴は玄武明良の婚約者である猪山早紀の豪邸に避難させている。

猪山早紀の実家は猪山財閥の元締めであり、警備体制は他の子供達と比べて万全である。

玄武明良は死んだ家族が残した家に居たいと、一人でいつも通り引きこもっていただけである。

その引きこもりは筋金入りで、一か月出ないのはざらである。食料もそんな生活のため常に蓄えがある。

もちろん猪山家に仕える執事の田中が差し入れに来てくれていたため、何も問題はなかった。

つまり関係者ではあるが、インタビューするには言葉通り命がけの環境で待つしかない。

そのため北エリアに挑む豪胆なマスコミは少なかったのである。


「…贔屓と言いにくいな」

「でもなんか一人だけ得してる気がするよね」

「俺なんか母さんに馬鹿に拍車がかかると言われるほどの生活だったのに―」

「普段の行いが良いからとか言えよ」

<主。引きこもり良い行いとは言えないかと…>


ガトが遠慮がちに言う。それに全員が頷く。

青頭千里は全員揃ったし、中央エリアに向かう間に説明をしておくと言う。

会場についたら質問や説明は全部大人達が行う。

竜宮健斗達四人とセイロン達は出番があるまで座っててほしいこと。

最後の締めとして重大な発表を行い、それを境に子供達へのマスコミを失くすことを告げた。


「君達にはアニマルデータ所持者代表の顔になって欲しい」

「…宣伝か」

「そう。だから律音くんに来てもらったと言うのもあるかな…ほら、顔可愛いし…神楽くんだと、ちょっと」

「ああ、阿保そうだからね。しかし可愛いは余計かな」

「明良くんもできれば笑顔、もしくは怒らない顔でお願いね」

「…善処はする」

「健斗くんは顔を引き締めてね。常に見られてることを意識して座っててね」

「お、応……うーん、辛そう」


説明を終えると青頭千里は窓の外を見る。

中央エリア、NYRON代表ホテルと言われるグランドユートピアの巨大な姿が見える。

光り輝くその建物の中に今はマスコミや関係者が多く集まっているだろう。

青頭千里はほくそ笑む。やっとアニマルデータを公にすることができたと。

遅かれ早かれ青頭千里はこの時を待っていた。それだけで自分の計画が進むと。

その計画に竜宮健斗達は全く関係がない。しかしアニマルデータの一部分が必要なのである。

青頭千里は光に照らされた青白い顔を笑顔にする。


「ああ、本当に人間は可愛いね」


僕の想定内で動いてくれるんだから、と後半の言葉は口にしなかった。



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