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ANDOLL*ACTTION未来世界編  作者: 文丸くじら


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流れ星に願いを

時永悠真は北エリアに遊びに来た竜宮健斗達と雪合戦していた。

レーザー銃で撃たれた腹の傷は完治したが、消えない傷となっている。

しかしこれは復讐しようとした自分への報いだと思い、時永悠真はもう馬鹿なことを考えない戒めとした。

雪合戦には他エリアで知り合った籠鳥那岐や仁寅律音を含め、竜宮健斗の同級生である笹塚未来達も混じっていた。

時永悠真は雪の壁に隠れながら雪玉を作りつつ、たまに投げて応戦するスタイルを取っていた。

横で玄武明良の顔に大玉が命中し、絵心太夫が仇を取ろうと大きな雪玉を作り始めた。

猪山早紀は倒れた玄武明良を膝枕している。扇動美鈴はあまり動くのが得意ではないので綺麗な球を作り続けることに夢中になっていた。


時永悠真はアダムスを殺すために渡された十徳ナイフを捨てた。

もう必要ないと思ったからだ。持っていても銃刀法違反で声をかけられてしまう。


アダムスは深くクラリスのデータが混じっているらしく、会議場というスーパーコンピュータ内部で会議は続いているとマスターは言った。

セイロン達は消失文明の頃のアダムスを思い出しつつ、さらには幼いアダムスが再び過ちを犯さないように意見を統一しようと奮闘しているらしい。

竜宮健斗達と遠く離れているのに記憶を保持できるのはマスターが考案した、というよりクローバーの未来の技術を盗んだからだ。

あらゆるスーパーコンピュータにどんな状況にも対応できるAliceというウィルスをばら撒き、強制的ながらも秘密裏の大型ネットワークを構築。

そのネットワーク通信には電波通信という従来の方法ではなく、時空論理まで発展する粒子通信を使っているのだ。

クローバーが未来から時永悠真達が存在する過去に通信できたのは、その粒子通信を用いているからだ。

時空特定の際には粒子計算という特殊な計算を用い、座標を特定できれば何処何時何某でも通信できる技術なのだ。

だから例え竜宮健斗達が海の果てや地底世界、宇宙空間から恐竜時代にタイムスリップしようが問題ない。

セイロン達は粒子通信のおかげで竜宮健斗達の脳にアクセスし、記憶保管ができるのだ。


アダムスを元の状態を戻すのは年単位の時間が必要らしく、さらに正常な精神状態に戻すには十倍の時間。

しかし経過は良好で、マスターは定期的に会議場の様子を確認しつつ必要なことを補助してくれている。

だがセイロン達をアンロボットに移すのはまだ難しいらしく、竜宮健斗達はセイロン達と出会えるのはまだ先の話である。


時永悠真は戸籍を青頭千里の根回しにより手に入れ、今は玄武明良の家に居候している。

というのも柊と楓の両アンロボットが扇動美鈴の傍にいたいと初めて我儘を言ったのだ。

未来の主となるべき存在である扇動美鈴のことが気にかかるのは自然だが、まさか我儘を言うとは思っていなかったのだ。

なにせ時永悠真のいた未来世界では人工知能の感情は乏しく、基本命令を聞くのが通常スタンスだった。

しかしクラカが感情を手に入れようと間違いを起こしたのに感化されたのか、柊と楓は少しずつ本当にわずかに変わっていた。

玄武明良の家には扇動岐路もおり、クラカも住んでいる。クラカは最近玄武明良と猪山早紀の恋の行方が知りたいといきなり呟くようになった。

死んだ両親が研究のため大勢が泊まれる家を作ったため、玄武明良の家は大きいので問題はないが、家主である玄武明良は不機嫌そうである。

その不機嫌の一部には急にいなくなったアニマルデータの存在もあるのだろうと、誰もが思っていた。


ちなみに最近少女漫画にはまったクラカは雪合戦にて柊と楓とチームを作り、驚異的な攻撃を見せていた。

流石はロボットと言わんばかりの行動の素早さと雪玉作成スピードは子供達にとってラスボスのようだった。

しかし頭に当たると一時的に動きが止まるので、容赦なく鞍馬蓮実が雪だるまを作れそうな大玉を能力を使って軽々と投げた。

A*Aが流行歌として広まる中、アニマルデータを持っていなくても能力に目覚める子供が増えていた。

マスターの見解では成長途中の脳に影響を与えており、目覚める素養が持った者が目覚めてるのではないかという。

もちろん能力に目覚めない者も普通にいる。しかしどうも目覚めるのは成長途中の子供達だけで、大人は発見例がない。

おかげでPSIという超能力科学分野が目覚ましい発展を遂げているらしく、世論は活発なままだ。


少しずつアニマルデータも世界中でインストールされており、能力者も増えてきている。

それに比例するように世界は変化している。しかし子供達は相変わらず全力で雪合戦で遊んでいた。




雪合戦の小休憩で時永悠真が自動販売機で買ったお茶を飲んでいたら、その隣に笹塚未来が座る。

相変わらず外見美少女なのだが、素の性格がやや男前なので女性人気は上がっているが、男性人気が急降下している。

しかし手に持った缶ジュースを握り締め、膝をすり合わせる様子はどこか恥じらう少女のようである。

時永悠真はその様子を見てトイレに行きたいのかと勘違いしているのが残念なところである。


「…あの、さ…わた、いや俺は将来医者になりたいんだけどよ…その、未来での医療ってどうなってたんだ?」

「え、ああ。ほぼ廃止状態で風邪薬すら貴重品。正直アニマルデータになる方が安いくらいだったよ…」


時永悠真にとっては過去、笹塚未来にとって将来の世界を思い出しながら、時永悠真は苦笑する。

死を恐れなくてすむ世界、不老不死が当たり前の世界、病気で苦しまなくていい世界。

確かにそれは誰かの希望だったかもしれない。しかし時永悠真にとっては地獄のようだった。

少し遠い目をする時永悠真の横顔を眺める笹塚未来の顔は赤い。そして捲し立てるように一気に言いたかったことを言う。


「お、俺のい、医者の勉強に付き合ってくれ!!未来の医療知っていれば対策も…」

「え?無理」

「…そ、そうか…付き合って…え?」

「いや、だから…未来の医療は廃止状態なもので、文献すらもほとんど残ってなかったし、僕はその分野に一切興味なかったから知識全くないから手伝えない予感が」


時永悠真のいた世界で医療とは過去の遺物だった。

病魔と闘ってきた先人の知識など紙屑のように扱われた無惨な時代。

例え時永悠真でなくともその分野の先駆者や研究者はほぼいなかったのだ。

なので笹塚未来の勉強を手伝うことができないのは当たり前のことなのである。

だが恥を堪えて頼んだ乙女の相談を一蹴した時永悠真は、それなりの報いを受けるのである。


「てめぇ…俺に起こされた恩も忘れて手伝えないとかどの口がぬかしやがる…」

「いや、それは感謝してるけど…それとこれは話が別というか…」

「いいから手伝え!!週一で北エリアに行くから手伝わなかったら細胞に命令して雪道で腹踊りさせんぞごらぁ!!!!」

「なんかもう脅しの予感!?わ、わかったよ…」


押しに押されて時永悠真は承諾する。顔を真っ赤にした笹塚未来が見えない位置でガッツポーズをしている。

それを崋山優香をはじめとした同じクラス女子である山中七海達がにやけた顔で眺めていることを二人は知らない。

おそらくNYRON大会から助けられて意識したところから始まり、その後ずっと悩みと一緒に時永悠真のことを考えていた結果なのである。

笹塚未来はらしくないと思いつつ、人生初めての想いに対してやや横暴な行動をしつつ戦っていた。

その戦いに知らないまま巻き込まれた時永悠真は訳がわからないと溜息をつくのであった。




部屋に青い西洋竜のアンドールを置物として竜宮健斗は飾っていた。

アニマルデータがなくても動くのだが、どうしてもセイロンが忘れられないのだ。

だからまた会う時にすぐに入れるように掃除はしているが動かしていないのだ。


夜、宿題が進まずベットに転がっていた竜宮健斗のデバイスにメールがやってくる。

それは崋山優香から送られたメールで、こっそり家を抜け出して河原に行かないかという相談。

断る理由もなく、また面白そうだと思った竜宮健斗はすぐに行くと返事して、こっそりと玄関から外へ飛び出した。

その日は澄み渡った夜空で星が輝き、少しだけ迫る冬の寒さが息を白く染めた。

竜宮健斗は帽子を被っているが、その帽子にはもう東エリアのボスと示すバッジはない。

セイロンと一緒だから大会に出て泣いたり笑ったりした。しかし今ではアンドールすら動かせないから辞退したのだ。

籠鳥那岐や玄武明良達も同じ考えで辞退している。それでも繋がりは消えることなく、今でも雪合戦で遊ぶほどである。


河原に着けば魔法瓶に温かいお茶を入れて飲んでいる崋山優香が笑顔で手を振ってきた。


「急にどうしたんだよ?」

「今日ね、流星群なんだって。流れ星見たいからさ…願い事しない?」

「願い事?いいな、面白そう!」


笑って竜宮健斗は崋山優香の隣に座って夜空を見上げる。

いつも以上に輝く星達は雨のように零れそうなほど眼前一杯に広がっている。

崋山優香から紙コップに入ったお茶を受け取りつつ、空を眺めてた他愛ない話をする。

明日の授業は楽しそう、とか、あのドラマが面白くなってきた、とか。

尽きない話題に竜宮健斗は不思議な居心地の良さを感じていた。

ふと、夜空を見上げ続ける崋山優香の横顔を眺めて高鳴る鼓動を一瞬感じ取る。

その鼓動に背中押されるように言葉を出そうとした竜宮健斗だが、崋山優香が人差し指で夜空の一点を指す。


つられるように見上げれば、光の尾を引いて流れて消える星が一つ。

連鎖するようにいくつも流れていく。星の雨模様というよりは魔法の輝きと言った方が似合う光景だった。


一瞬で消えていく星、それでも輝き続ける星が夜空を明るくする。

竜宮健斗と崋山優香は言葉を交わさないまま、その流れていく星達に見惚れた。

そして胸の中でこっそりとお願い事をする。




流星群は他のエリアからも眺められた。

籠鳥那岐は自室から、仁寅律音は母親と一緒に、玄武明良は猪山早紀に手を引っ張られ強制的に。

相川聡史は家族と一緒に、鞍馬蓮実は瀬戸海里とメールをしながら、伊藤三つ子はベットに入りながら願い事を必死にする。

錦山善彦は流星群のことを知らないまま眠りについていて、凜道都子は15までに運命の出会いが見つかるようにと祈っていた。

クラカは楓と柊を横に並べて訳も分からないまま涙を流していた。その涙の中に星の輝きが映っていた。

笹塚未来はその流れ星に夢は乗せず、想いを乗せていた。夢は自分が叶えたいと勉強のためのペンを握りながら。



時永悠真は流れ星を見て呟く。遥か先にある自分や仲間が変えていった未来に向けて。






「過去から君達の未来を守ろう…哲也、雷冠」





どこか晴々とした顔で時永悠真は決意したことを言葉にした。

復讐するのではなく、未来を守ると決めた。例え二度と会えないとわかっていても。

二人が人間のまま笑って過ごせる未来がやってくるように。仲間達と一緒に作り上げようと。

大切な友達のために時永悠真は星に誓いを立てた。その友達の中にはこの時代で知り合ったアニマルデータのロロも入っている。

そしてもう一度流れた星には、ロロに再会できますようにと願った。そして雪合戦したいな、と。



こうして竜宮健斗達はアニマルデータによって起きた出会いや別れを成長の糧とした。

そして未来を夢見て、再会を願って、流れ星をそれぞれの思いで眺めていく。

未来と過去、そして現在を巻き込んだ大きな流れが一つ、終止符をつけた。












「なにを願った?」

「多分同じこと」

「応。俺もそんな気がする」

「じゃあ声を合わせて言ってみようよ」

「せーの、でな」


「せーの」









『未来に会いに行こう!!』








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