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ANDOLL*ACTTION未来世界編  作者: 文丸くじら


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27/28

未来へ繋がる会議をしよう

時永悠真が目覚めて、アダムスが壊れかけて、笹塚未来が裏切った夜から一日経った。

青頭千里の指示で時永悠真以外は帰宅することになり、いつも通り学校に向かった。

竜宮健斗が驚いたのは笹塚未来が一人称を俺のままで行動し、素のままで活動していることだった。

不機嫌そうな顔で竜宮健斗におはようと言い、足早に先に学校へと向かう。

崋山優香も驚いていたが、そちらの笹塚未来の方が自然な気がして不思議だった。


「なんか未来ちゃん…変わったね」

「色々あったからなー。しかし光輝達は目ん玉飛び出るほど驚くんじゃね?」


竜宮健斗が言った通り、笹塚未来を知る人物は全員驚いていた。

中身も外見も美少女と思っていた憧れの同級生が、一変して中身不良のような状態に変化したのだ。

誰かが恋をしたんじゃないかと呟いたが、恋をして変わるには凶悪すぎる変貌である。

山中七海は最初驚いていたものの、すぐに打ち解けて昨日見たドラマの話を始める。

するとクラス委員の浅野弓子や笑いっぱなしの七園真琴、山中吹雪なども女子らしい会話を始める。

竜宮健斗が話しかければ羽田光輝や白子泰虎も戸惑いつつ話に参加する。


「一人称チョーウケる!でも似合ってるねー、ギャップ萌?」

「あっははははは!!いいんじゃない?見た目は美少女頭脳は男前!その名は笹塚未来!!」

「ていうかさー、最初からその性格でいれば余計なやっかみ買わないんじゃない?」

「あのな、俺のこの外見で最初から痛い一人称で言ってたらただのやばい奴だっつーの」

「さ、笹塚だけは俺の周囲で唯一の完璧美少女だと思ってたのに…」

「光輝くん?それって私達は美少女じゃないってことかぁなぁ?ん?」

「うお、委員長が静かに怒ってる」

「委員長やっちゃえー」

「ぐーぐーぐー」


普段と変わらない学校生活をしつつ、竜宮健斗はずっと不安なまま待っていた。

アダムスのことは青頭千里に任せてくれと言われてしまい、竜宮健斗達は連絡を待つだけである。

その連絡一つであらゆることが変わってしまう。怖いのはそれが良い方か悪い方かどっちに傾くかわからないのだ。

不安な気持ちのまま放課後になり、羽田光輝達と自宅まで帰る。するとセイロンが慌てて竜宮健斗を呼ぶ。

青頭千里から連絡があり、今すぐ時永悠真が入院している病院に来てほしいと言われたのだ。

竜宮健斗は急いで出かける準備をしてセイロンと共に中央エリアにある病院へと向かう。





中央エリアにある病院に着いてすぐに竜宮健斗は病院の安置室よりも地下にある秘密の部屋に案内された。

案内したのは時永悠真を治療した片言の医者で、ドームほどの広さがある秘密の部屋には今回の出来事に関わった全員が集まっていた。

もちろん笹塚未来もクラカも、柊や楓も何事もなかったように立っていた。しかしどことなく空気が悪い。

居心地の悪さを感じながらも竜宮健斗は部屋の中央にある巨大な機械に目が釘付けになった。

コードがばらけて無骨なイメージである機械と、その周囲にケーブルで繋がれている数体のマネキンと同じようなアンロボット。

何事かと思っている間にマスターが現れて、事前説明や大切なことを抜かして本題だけを伝えた。





「アダムスを救いたい奴は、アニマルデータをこの機械に差し出せ」




ひんやりした気温の秘密の部屋の温度が数度下がったような錯覚。

その錯覚を言葉で表すならいきなりトチ狂った人を目の当たりにして声が出なかったである。

玄武明良が額に青筋を浮かべながら怒鳴り散らす。


「説明を!!しやがれ!!!」

「現段階でアダムスのデータは崩壊を続けている。そこで救済措置として個を保つために全体の流れというのを利用する」

「…????」

「あのー、ケンが混乱してるんですけどというか…私にもわかるように説明をしてもらえると助かります」


崋山優香の控え目ながらも正統なる主張に何人も同意の頷きをする。

盛大なため息をついてマスターは説明を始める。


「例えばお前達は自己を認識する時に、自分による主観と客観を必要とするのはわかるか?」

「え、えっとつまりは僕という個というのは他人の認識も必要ということですよね」

「そうだ扇動美鈴。己だけでは限界がある。記憶喪失や…今のアダムスみたいに自分自身の判断が怪しい奴は特にな」

「クラリスのデータを輩出するのは無理なの?」

「無理だと思います、律音さん。私クラカは人工知能として混じりあったと言いますが、データ単位で混同していただけで魂単位では別々…という説明が正しいと思います」

「そうだ。魂単位で混じりあっているのがアダムスの現状で、ここまで来るとアダムス自身だけの判断では処理しきれない」

「で、どうしてアニマルデータを差し出す話になる?」

「アダムスの自己というのを客観を元に抽出する。そのためにはアダムスを知る…消失文明の人間が十数人必要なんだよ、籠鳥那岐」


そこまで聞いて玄武明良と扇動美鈴は理解を得た顔をする。

しかしその顔は明るくない、というよりは今にも沈みそうな暗い顔だ。


「そこでこの機械だ。これは私の特別製でな、個人を保存したまま全体で意識を共有する…という計算をさせるスーパーコンピュータだ」

「…ちゅーことは、そこに俺のギンナンやボスのシュモンが入ったら、それぞれの意識を保護したまま同じ思考になる…あー、自分で言っといてわからなくなってきたで…」

「データの会議場だと思えばいい。それぞれ個で話し合うが、結果は一つしかない…なイメージだな」

「にゃー、そうか!会議場でアダムスについて話し合ってアダムスという答えを出すにゃ!どうだにゃ!!」

「か、神楽くんが頭使ったよ、麻耶くん!!」

「明日西エリアに雪降るんじゃねぇの?この単純馬鹿がこんなに頭回転できたんだしよぉ」

「会議場で却下された意見データ、つまりはクラリスのデータも回収できる…まぁ残骸みたいなもんだけどよ」



「…でもそれって、アニマルデータはアンドールから離れるっていうことだよな?」


笹塚未来の言葉に何人かが顔を上げる。

アダムスを救うには会議場というスーパーコンピュータでアダムスを知るアニマルデータに会議をさせなくてはいけない。

するとアンドールのまま接続することはできないので、データは会議場の中に収納される。

子供達はせっかく仲良くなったアニマルデータ達と離ればなれになる、ということだ。


「…私も一応犠牲が出ない計算をした。答えは…一時的な犠牲だが、後々救える方法が最善ということだ」

「もしかして…あのアンロボット達は…」

「会議場からアニマルデータを個人単位で抽出、アンロボットの試運転に付き合ってもらう建前で用意した」

「一時的な離別…なんよ…けど…」


腕の中にあるぬいぐるみのようなロボット達。苦楽以上のことを共にしてきた。

変な事件に関わっても全員で協力して頑張ってきた。その陰にはいつもアニマルデータがあった。

竜宮健斗はセイロンを見る。一時的とはいえ、どれだけ離れるかはわからない。もしかしたら一生の別れもあり得るかもしれない。

そうするとアダムスを救うと諸手を上げて言うことはできなかった。


「…全部救いたいんだろう?竜宮健斗」

「…お、応」

「私はそのために協力してやった。これは一時的な犠牲で総合的に見れば犠牲はない」

「…」

「決めるのは子供達であるお前達だ。そこを間違えるな」


マスターの静かだが迫力ある声音に迫られながらも、竜宮健斗は決めることができなかった。

これからもずっとセイロンと一緒にいるつもりだった。大人になっても変わらないと思っていた。

しかしあっさりとしながらも別れは突然にやって来た。思い悩む竜宮健斗にセイロンは言う。







<健斗、俺はな…お前に会えたからここまでやってこれた。ありがとう>




そして背中にある翼を動かし、竜宮健斗の腕の中から抜け出る。


「せ、イロン…」

<今生の別れじゃないんだ…俺とクラリスみたいに何千年先の未来でも、会える可能性だってあるんだ>

「…そうかもしれないけど…今すぐ決めろだなんて…」

<俺はクラリスを救えなかった。けどその弟くらい、カッコつけさせてくれよ>


セイロンは少しずつ竜宮健斗から離れてスーパーコンピュータの前まで距離を詰めた。

マスターは最低でも二十人の客観的なアニマルデータが必要だと言った。

するとシュモンやガトといったアニマルデータが入ったアンドール達がセイロンの元に集まり始める。

子供達は目を丸くして集まっていくアンドール達、消失文明の人間達が入ったロボットを見る。


<那岐、これからも健斗みたいな友達作って、立派な刑事になれよ>

「…今生の別れじゃないのに、なんでそんなこというんだよ…」

<律音、お母さんと仲良くな。お父さんを超えろよ>

「シラハ…」

<主殿、いや明良。早紀とは夫婦として幸せになるのじゃぞ>

「うるせぇお節介焼き。そんなこと言うくらいなら…傍で見てろよ」


子供達はまだ納得していない顔のままスーパーコンピュータ前に集まったアンドール達を見る。


竜宮健斗のセイロン

相川聡史のキッド

鞍馬蓮実のベアング

瀬戸海里のタマモ

籠鳥那岐のシュモン

錦山善彦のギンナン

伊藤三つ子のイッキ、ニキ、サンキ

仁寅律音のシラハ

葛西神楽のビャクヤ

凜道都子のススギ

袋桐麻耶のカルメン

筋金太郎のムサシ

玄武明良のガト

猪山早紀のエル

扇動美鈴のホチ

絵心太夫のタイラノ

時永悠真のロロ

布動俊介のビータ

有川有栖のアルル

基山葉月のバグリ

御堂霧乃のリスリズ


二十を超えるアンドール達はそれぞれ子供達に一声かけていく。

頑張れや夢叶えろよ、といったものからまた会えるよという言葉まで千差万別だ。

笹塚未来はその光景を少しだけ羨ましそうに眺めていた。もしアダムスともっと違う接し方をしていたらと考えるのだ。

裏切りをしておいてこんなことを考えるのはずるいと思いつつも、割り切れない想いは燻っていた。


「セイロン、俺さ………俺……」

<健斗…>








「俺、将来の夢決めたんだ。世界中旅するんだ!セイロンと一緒に!!未来だけじゃなく世界を見たいんだ!!だから…絶対もう一度会おうな!!!」





竜宮健斗は鼻を真っ赤にしつつ、涙が零れそうながらも快活な笑みをセイロンに向けた。

ずっと密かに考えていた将来の夢を竜宮健斗は今決めた。約束の意味も含ませてセイロンに聞かせるために。

別れたくないなら、結果的に別れなければいい。多少方向は違えとも、竜宮健斗はマスターと同じ道を見つけた。

大切なことを間違えたくないと歩んできた少年は、アダムスを救うために大切な存在との一時的な別れを受け入れようとしていた。

セイロンは言葉が出なくなり、しかし嬉しそうに頷く。


「未来で…会おうな、セイロン」

<ああ。未来で>






その日、二十体以上のアンドールが抜け殻になった。


アダムスを救うための会議場というスーパーコンピュータ内部で、壊れかけていたアダムスのデータは微睡む。

一人なのか二人なのかも曖昧でわからなくなっていた頃、自分の周りに集まるいくつもの存在を感じ取る。

それは懐かしい、人間だったころの姿をデータで再現したセイロン達。

彼らは少し泣きそうな笑顔ながらも、前を向いてこう宣言した。


『アダムス弟殿下を救うため、子供達の元に少しでも早く戻れるように…会議を始めよう!!』







東エリアの河原の傍を竜宮健斗と崋山優香は歩いていた。

その河原はかつてANDOLL*ACTTIONのミュージックプレイヤーを捨てた場所だ。

その時から一年も時間は経っていない。それなのに何年も前のような錯覚を覚える。

前を歩く竜宮健斗の顔は崋山優香から見えない。だからこそ彼女は切り出した。


「泣いても、いいんだよ!」

「…にぁ、何言ってんだよ優香……また会えるんだから泣く必要なんて…」

「だって…だって私は泣きたいもん…」


そう言って涙を零し始めた崋山優香の方を竜宮健斗は振り向く。

その腕の中にはセイロンというアニマルデータが無くなった、ぬいぐるみのように竜の動きを再現したロボットが一体。

流暢に喋ることも、人間のような動きを見せることもなくなった普通のアンドールがそこにいた。

大粒の涙を流す崋山優香に竜宮健斗は慰めの言葉を言おうとした。

しかし声が引っかかって、嗚咽のような息継ぎのような辛い音だけが出てくる。

気付いたら竜宮健斗の頬にも熱い滴が流れていた。


「っあ、ああ、う……ああ…ああああ…」


竜宮健斗は外聞も気にせず泣き始めた。崋山優香も同調するように涙の量を多くする。

子供達は一時的とはいえ、友達を失くした。仕方がないとはいえ別れを決めた。

他のエリアに戻った子供達が何人も泣いている頃、竜宮健斗も泣いていた。

涙一つで誰かを救えるなら安いものだと、誰も言えないような悲痛な泣き声を河原は聞いていた。




一週間後、エリアチームメンバーが全エリアで総入れ替えという事態が起きた。

原因は不明ながらも子供達が次の世代に任せると、一致団結したのだ。

御堂霧乃は後任をNYRON大会で優秀な成績を残した者に声をかけつつ、奔走していた。

その肩に乗るリスのアンドールは愛らしい仕草をしていた。人間らしくはなく、本物のリスと変わらない動きで。


またNYRON大会で不祥事はあったものの、アニマルデータの有用性や子供達の熱意によって保守派が多くなった。

懐疑的な意見が多いが、世論の動きは今後の発展にいかにアニマルデータやアンロボットを使用していくかに焦点が当てられた。

また人権の面や利点だけでなく不利益も見越した議論はどこでも花を咲かせ、テレビで日常的にその話題が放送されることになった。

かくしてアニマルデータは自然と生活の中に溶けこんでいった。アイドルのケイトが歌ったA*Aも爆発的大ヒットを記録した。

世界も社会も変わる中、子供達も否応なく変化に身を投じた。その結果、子供達は少しずつ新しい道を歩きはじめていた。


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