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ANDOLL*ACTTION未来世界編  作者: 文丸くじら


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19/28

悠かなる真実の終着

時永悠真の時代ではアダムスというアニマルデータがあらゆる権力を掴んでいた。

この世界に、時代にアニマルデータとアンロボットを広めた立役者として活躍して王位についていた。

しかし不思議なことにアダムスは人間の体を使っていた。本人曰く人間としての尊厳を保つためだと唱っていた。

時永悠真からすれば忌まわしい時代を作った存在だが、雲の上すぎて唾を吐きかける気にもなれないほど遠い存在だった。

ニュース番組で戦地を訪問と聞いても活躍してるなぁとしか感想を抱けない程度の存在であった。


「哲也はアダムスのことどう思う?」

「まぁ、時代を変えた人物ではあるんだろうな…」

「でもおかげでロボット化強行派とかアダムスを崇拝しすぎた宗教に人間兵器を作る要因になった奴だよな…」


アダムスが活躍したことによりロボット化やアニマルデータ、能力者の認知は高まっていった。

しかし全てが良いことでは終わらなかった。過激な派閥や思想、活躍しすぎた上での新興宗教テロなどが生まれたのだ。

また豊穣雷冠のような人間兵器と言われる存在まで生まれるようになってしまった。


「俺様からすればどうでもいい奴だけどなー」

「雷冠のそういう大らかなところ嫌いじゃないけどね…ははは」

「俺は…人間の逃げ道を作った奴だと思うな」

「逃げ道?」

「ああ、死とか病気とかな…ただおかげで人間は戦うのを忘れた。代償は小さくないだろうな」


医療の発展は時永悠真の時代ではほぼ停止していた。

永遠に続くであろう死との戦いはロボット化という答えのせいで、終焉を告げた。

おかげで病気に怯えることはなくなった。不治の病で苦しむこともなくなった。

突然の別れや悲しみで泣くことはなくなった未来。しかし人間は戦うことすらしなくなった。

今や戦争ですらロボット同士の戦いで、いかに強い兵器で戦うだけが求められている。

そのことに求道哲也は溜息を零した。


「過去の哲学者達は死の中から人間の本質を見つけてきた…だが今の時代では哲学の名言すら塵箱行きだ」

「…そうだね。僕達は死を失くすと同時に大事な物を失くしたんだね…」

「まぁそんな難しい話より、朝ご飯食べて遊びに行こうぜー」


真剣な話は豊穣雷冠の呑気な一言で終わりを告げた。

三人で求道松尾が作った朝ご飯を食べ、外に出ては走ったり寝転がったり秘密基地を作ったりして楽しんだ。

秘密基地の上ではロボットにならない同盟など冗談で作った用紙を張り付けて笑いあった。

いつか死ぬ体だとしても、三人はロボットにならないと暗黙の了解のように確かめ合った。

確かめ合って約束と言わんばかりに円陣を組んで手を重ね合った。


「僕達はずっと友達で、人間のまま生きよう」







三人の約束はあっさりと消えてしまう。

アダムスが今の人間の体を捨てると宣言し、新たに選ばれた器は求道哲也の体だった。

選ばれた器の人間は魂をアニマルデータ化して、ロボットになる。拒否権はない。

国家命令と同等の価値を持った指名であった。抗うことはできなかった。

求道哲也は抵抗一つせずに連れていかれ、そしてロボットの体になって戻ってきた。

麻呂眉や半眼のような目つきも変わらない、人間の体と同じ容姿だった。

しかしもうその姿から年取ることはない。成長せずに生きていくことになる。

求道哲也は戻ってきた直後に、豊穣雷冠と時永悠真にこう告げた。


「…約束守れなくてごめんな」


この体でも泣けるんだと、求道哲也は泣き笑いした。ロボットの体で泣いた。

アンロボットは人間と変わらない生活ができる体。それでも人間ではない。

求道哲也と一緒に時永悠真も泣いた。拳を握りしめてなんでと何度も呟きながら泣いた。

豊穣雷冠はテレビ画面の向こうで新しい体に入って挨拶するアダムスの姿を眺めていた。

求道哲也から奪った体で笑いながら手を振っている姿に、怒りが湧くのを抑え込みながら。



アダムスを信仰する宗教はいくつもあった。

その中でも過激派と言われる団体が、求道哲也の姿をしたアダムスを見てこう思った。

あの体はアダムス様の物だから、同じ姿をしていて元々入っていた魂は殲滅するべきだと。


無茶苦茶な理論を掲げて時永悠真の目の前で求道哲也を浚い、スクラップ工場のプレス機まで繋がるベルトコンベアに乗せる。

重い音を響かせるプレス機が近づく中、縛られた求道哲也は逃げ出そうとしなかった。

ロボット化した後、いつも通り生活できているようでなにか違和感を感じていた。

その違和感は日々大きくなっていき、生きているのも辛くなっていた。

なにより二人の友人との違いに苦しんでいた。だからいい機会かもしれないと感じていた。

だがプレス機に潰される手前、慌てて追いかけてきた豊穣雷冠と時永悠真が工場の入り口から求道哲也の名前を呼ぶ。


「哲也ぁ!!!」

「なにやってんだよ、すぐ逃げろよ馬鹿野郎!!」


その声を聞いた途端求道哲也は頬を叩かれたように意識を鮮明にする。

ずっと違和感を感じていた。生きるのが辛かった。でも二人と別れたいとは思わなかった。

求道哲也はプレス機が稼働する音にも負けないほど、声を張り上げた。

それは求道哲也にとって珍しい声で、最後の言葉だった。






「雷冠、悠真…俺は、まだ生きたい!!いや、人間の体で生きたかった!!」





豊穣雷冠が雷でプレス機を止める前に、重圧な鉄の塊が求道哲也を潰した。




潰れる音はプレス機がベルトコンベアを叩く音で掻き消されてしまったが、確かに時永悠真達の目の前で求道哲也を潰した。

雷で宗教団体の人間達を気絶させ、流れていきそうになるベルトコンベアを止める。

求道哲也だった物は鉄くずになっていた。CPUも骨組みの鉄も配線も全て粉々になっていた。

人間の体はどこにもなく、工場に散らばっている塵と同じ鉄くずしか残っていなかった。

残った求道哲也の体の破片を掻き集めて、時永悠真は声も出ないほど泣いた。涙が枯れたら目から血を流した。

豊穣雷冠は自分の力不足に憤り、そして生まれて初めて殺意を抱いた。


「悠真…俺様は…アダムスを殺す!!哲也の体を奪ったあいつを、俺様は絶対許さない!!!!」


下唇を噛んで血を流しながらそう宣言した豊穣雷冠は、そのまま時永悠真を置いて走り出す。

時永悠真は死んだ目で求道哲也の体だった物を集めた。集めて求道松尾がいるカフェに帰った。

破片を父親の求道松尾に渡せば、膝から崩れ落ちて求道松尾も泣いた。

もう求道松尾はロボット化したため、妻と子供を作ることはできない。なにより求道哲也は二度と帰ってこない。

時永悠真は大事な友人を一人失った。そしてもう一人もすぐに失うことになる。



ニュース番組でアダムスが挨拶訪問した場所に豊穣雷冠が現れて襲撃したと報道された。

豊穣雷冠は人間兵器の名に恥じない殺傷力と殺害を繰り返したが、アダムスを殺す前に不意を突かれた一斉射撃に蜂の巣にされた。

あと一歩でアダムスが殺せる場所まで進んだが、一人では限界があった。

最後に豊穣雷冠は叫んでいた。血反吐を吐きながら空を震わせる咆哮のように。


「アダムス!!全部お前のせいだ!!俺様がお前を襲うのも、俺様の友達が死んだのも、お前のせいだぁああああああああああああああ!!!!!」


豊穣雷冠の遺体はその場で焼却された。人間の体のまま死んでいった。

時永悠真には二人の友人がいた。二人とも死んでしまった。

そして政府はその二人と関わりがあった時永悠真を安全のために監禁することにした。

だがその決定をアダムス自身が覆した。監禁する場所まで連れていかれた時永悠真はその場ですぐに帰ることになった。

だが帰途につく間、なぜかアダムスが時永悠真に連れ添った。

もう死んでしまった求道哲也の体で微笑みながら、時永悠真を励まそうとした。


「お友達残念だったけど…元気出して!良かったら僕が友達になるからさ!」

「…放っておいて」

「放っておけないよ!ねぇ、笑ってよ!笑えば元気になるからさ!」

「どっか…いってよ!」

「いかないよ」


そして微笑みながら手を差し伸べるアダムス。

麻呂眉を優しく垂れ下げて、目尻も優しく、頬もつり上げた。

全てを許すような聖人の笑みを浮かべていた。

しかしその体は求道哲也の体で、その笑顔は時永悠真が知っている友人の表情ではなかった。

差し伸べられた手を叩き落とすように振り払い、時永悠真は叫んだ。


「お前が死ねばよかったんだ!!いいや、もっと昔に死ねばよかったんだ!!そうすれば僕がこんなにはならなかったんだ!!」

「え、ゆう、ま…」

「気安く呼ばないで!僕が両親に捨てられたのも、友達を失ったのも、この時代も、全てがお前のせいなんだ!!死ねよ!!頼むから、死んでくれよ!!!」


呪いの言葉を吐き出して、時永悠真はアダムスから逃げるように走っていく。

本当は一番死にたかったのは自分だった。でも死ぬ勇気もアダムスを殺す覚悟もなかった。

だから逃げ出した、二人の死からも、自分の死からも、時代や世界からもひたすら逃げていた。

走り疲れて顔を上げたらいつも生活して求道親子が経営するカフェが佇んでいた。

そしてその扉の前で切札三葉があらかじめ来ることを知っていたかのように立っていた。


「…おかえり。悠真くん…もし、二人が生きていける可能性のある未来を作れるとしたらどうする?」

「…え?」

「百%の保証はないし、この世界にも帰ってこれないけど…雷冠くんと哲也くんが生きていける未来があるとしたら…どうする?」


切札三葉の告げた言葉に時永悠真は理解が追い付かなかった。

ただ求道哲也と豊穣雷冠が生きている未来、その可能性という言葉が耳から離れなかった。

組んでいた手を解いて、切札三葉は時永悠真に手を差し出す。


「タイムマシンで未来を変えるチャンスを君にあげる…」


リスクもデメリットも何も伝えられてない。

それでもタイムマシンで未来を変えるという言葉が時永悠真の胸に突き刺さった。

考える時間はいらなかった。時永悠真はアダムスの時とは逆に切札三葉の手を強く掴んだ。





本と実験器具だらけの部屋に案内された時永悠真は切札三葉の話を聞いた。

タイムマシンを作る際に前提とした複数世界理論。それは時永悠真が知っている二人の死は変わらないということ。

今時永悠真がいる時間は過去にどんな干渉しても変わらず進んでいくということ知った。

ただし過去のある時間世界で変化を起こせば、もしかしたら求道哲也と豊穣雷冠が死なない未来世界が作れるという可能性だ。

その未来世界では三人とも出会わないかもしれないし、もしかしたら誰かが生まれない未来かもしれない。

だけど時永悠真が体験した最悪の時間以外の未来世界が作れるかもしれないという理論。


「まぁ、一番確実なのはアダムスの意思を変えることだけど…」

「殺しちゃ…駄目ですか?」

「…………殺せるの?」

「哲也と雷冠が…あの二人が生きてくれるなら…殺せます」


時永悠真は力強くそう言った。その目は殺意で爛々と不気味に輝いていた。

切札三葉は溜息をつき、それもある意味確実だけどねと補足した。

そして時永悠真の目の前に十徳ナイフを差し出した。


「ああ、僕の学者名というかペンネームはクローバーね。とりあえず君にこのナイフを渡すけど、どうするかは君の判断に任せるよ」

「…ありがとうございます」

「君にはある時間に向かってもらう…アニマルデータについて詳しく知ってもらうためにも、本当に始まりみたいな時間に」

「…」

「まぁ当分はここでその時代の常識やアダムスについて勉強してもらうけど…覚悟してね」


切札三葉、改めクローバーは静かに告げる。





「殺すってことは殺されても文句を言えないからね」




そして時永悠真はタイムマシンで向かう時代のこと、アダムスの生い立ちなどを勉強した。

また接触する必要がある集団に溶け込むためのデバイスと、梟のアンドールであるロロをクローバーから渡される。

アニマルデータはそちらの時代でインストールするようにとクローバーは言う。

時永悠真はそんな確実にインストールできるのかと聞けば、君ならできるよと確信したようにクローバーは言う。

さらに身の回りのことや生活できる場所を整えるための助手、アンロボットの柊がついてくることも決定した。

あまりアンロボットに良い思い出のない時永悠真は嫌そうな顔をしたが、クローバーに絶対必要と押し切られたため渋々頷く。

またタイムマシンで戻れないこと、タイムマシンの構造を覚えられたら厄介だから行く前は睡眠薬で簡単に寝てもらうことを了承した。

寝ている間に柊が時永悠真を背負い移動すると告げてきた。時永悠真は一体どんな機械なのかと好奇心が湧いたが深くは追及しなかった。


「ああ、ちなみに向かう時代では幼い僕がいるからね」

「…え?何百年も前って…」

「僕はこの時のために人間を捨てたからね…まぁ、昔の僕によろしく」


それだけを言ってクローバーは準備を進めていく。

柊が教えてくれたクローバーの若い頃に時永悠真は仰天しつつ、同じように準備を進めた。

そして覚悟も固めていった。アダムスを殺すための覚悟を。そのために死んでも構わない覚悟を。





合同エリア大会の当日朝、時永悠真は竜宮健斗達に近づいた。

予定通りにロロをインストールした後に、アニマルデータのことを知らない子供のように振舞って。

気軽に声をかけた。いつか訪れるチャンスを待つために。


そして色んな出来事に出くわした。クラリスの事件から始まって地底遊園地まで。

念願のアダムスにも会えた。だから殺そうとして失敗して、逆に殺されかけた。

おそらく楓の言葉から察するに、未来のアダムスが一手打ってきたのだろうと予測した。

いくら今の自分が揺るがないといっても、別の時間世界で自分が殺されるのは面白くなかったのだろう。

なによりあの時手を振り払ったのが気に食わなかったのかもしれない。

時永悠真はそれでもいいかなと感じた。二人を救いたい、けど自分の知ってる二人はもう生き返らない。

ただ違う未来世界の二人を過去から守るだけ、そして時永悠真はその二人に会えることはない。

何故なら予定通り二人が生まれるとしたら数百年後の未来で、人間のまま生きると決めた時永悠真にとって到達できない距離だからだ。





アダムスに対して殺意を抱くのも疲れた。

生きるのにも疲れた。

大切な友人二人がいないことを認めるのも疲れた。


もう、いいや。そんな予感がするんだ。




時永悠真は生きるのを諦めた。




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