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ANDOLL*ACTTION未来世界編  作者: 文丸くじら


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17/28

呆気ない閉幕

NYRON大会の会場売店では行列ができていた。人気アイドルケイトのCDを買うための列である。

例えアニマルデータを持っていても竜宮健斗達のように記憶を取り戻したデータは少ない。

そしてANDOLL*ACTTIONではあまりのリスクの多さに不安が付きまとった。

しかしケイトの編曲して歌ったA*Aならクロスシンクロせずに脳の共有と記憶を思い出すことができるのだ。

また思い出すのはアニマルデータだけであって、ユーザーは記憶を見ることはない。

記憶がらみで人間とアニマルデータが争うのを避けるためである。

だからこそ購入する客には時間がかかっても入念な説明や説明用紙を渡している。

そして売店では直接ケイトが握手やサインをしながら説明をしている。

その行列の中に男装に扮したマスターが並んでいるのをうっかり青頭千里は見てしまった。そして一言。


「シスコン」


とだけを呟いたが、誰も聞く者はいなかった。

そして青頭千里もテレビ局のインタビューや質問に答えを返していく。




会場のあちらこちらではケイトのCDをアニマルデータが入ったアンドールと一緒に聞く子供達が何人もいた。

傍には同伴で来ていた親が不安そうな顔で見ているが、子供達はわくわくした顔でアンドールを見ている。

一体のアンドールが音声を震わせながら流暢に話し出す。


<…ありがとう、僕の記憶を思い出させてくれて…>

「は、はじめまして…でいいのかな?本当に、本当に人間だったの?」

<うん……良いことばかりじゃない人生だったけど、それでも君に出会えて…思い出せて、本当に良かった…ありがとう>

「ほ、ほら!お母さん、やっぱりアニマルデータは僕の友達なんだよ!!」


子供が不安そうな顔をしている母親に友達と主張して、アニマルデータが入ったアンドールを強く抱きしめる。

アンドールはぬいぐるみのような手で抱きしめ返す。もし人間の体だったら涙を流しているが、アンドールは涙を流さない。

母親は子供の気迫に押されて、頭を撫でつつアンドールに向かっておどおどしながら初めましてと言う。

アンドールも初めましてと返す。それはささやかなコミニュケーションの始まり。そして大きな前進だった。


テレビ局はそんな記憶を思い出したアンドール達や親子にインタビューをしていく。

もちろん竜宮健斗達にもいくつものマイクが向けられている。

慣れない注目の視線に怯えつつ、それぞれ自分の考えを伝えていく。


「俺とセイロンはこれからも友達で、それが皆に広がればいいなと思う!」

「俺はキッドと一緒にいつかフラッグウォーズで一位を取る!だからこれからもずっと一緒だ」

「タマモの口調変でしょう?でも僕はそんな彼が大好きなんだ」

「ベアングとオイラは一心同体なんよー!!な!」

「え?えっと私はユーザーじゃないけど…ケン達が羨ましいです!だってあんなに楽しそうなんだもの」


そうやって子供達の意見がテレビ局で編集されて地上波へと流れていく。

笹塚未来も自分の考えを言う。それは珍しく偽りのない本来の目的を口にする姿。


「やっぱりアニマルデータは人類に必要じゃないかと私は思います」


その意見も地上波へと流れていく。会場内の大画面ではいくつもコマ割りしたテレビ画面が映し出されている。

生放送しているNYRON大会の様子がいくつも映し出されている。御堂正義はインタビューに答えながらもそれを眺める。

御堂霧乃やDJ・アイアンは裏方の方で放送された内容のチェックや大会閉幕までの準備を進めている。

そんな騒がしい会場内の中でテレビ局のマイクを密かに逃れる時永悠真。

あまり目立つのが好きではないのと、下手して目立って戸籍まで突き詰められると色々問題があるため。

しかし一番は数日ほど連絡の取れない柊に改めて連絡するためだ。電波が良くて静かな場所へと移動していく。

すると自然と人気のない静かな通路に一人佇むことになる。肩に梟のアンドールであるロロを乗せながら、デバイスの通話機能を開く。

数コール音の後、柊から応答する声が聞こえた。


「あ、柊さん…いったい今日まで何して…」

『悠真さん。一人にならずに誰かの傍にいてください』

「…どういうこと?」






『やられました…未来からの刺客です。僕と同じ…アンロボットの…』





通話内容を最後まで時永悠真は聞くことができなかった。

栓が抜けるような小さな発砲音。サイレンサーをつけた際の銃声。

デバイスを落として力が抜けていく体で床に転がりながら、時永悠真は腹に手を当てる。

真っ赤な血が手の平を汚して、さらには溢れて床を汚していた。


『悠真さん?悠真さん!?』

<悠真!!?>


二つの音声を聞きながら霞む目で時永悠真は音がした方を見る。

誰もいないと思っていた通路の先で銃口を向ける人物が一人。その人物はすぐさまその場から去る。

消えていく意識の中で時永悠真は走馬灯と、やっと死ぬことができた安堵感に包まれていた。

自分で死ぬ勇気がなくて、でも憎しみだけが溢れてきた日常が終わる。

それを感じながら時永悠真は口元に微かな笑みを浮かべながら瞼を閉じた。




ロロは翼を動かして近くにいた人間に話しかけ、倒れた時永悠真のところまで案内する。

そしてすぐに救急車を呼ぶように手配を頼みながら、デバイスの通信機能で柊に早く来るように訴えかける。

テレビ局がすぐに映像を映さないように係員が立ち並び、その場で簡単な応急処置が施されていく。

しかし不思議なことに時永悠真は撃たれたように腹に穴が空いている。貫通しており、床には焦げ跡もある。

だというのに弾がどこにも落ちてない上に、弾痕も焦げ跡だけで穴が空いてないのだ。

まるでレーザーで撃たれたかと思うほどだが、今の技術ではレーザー銃は開発できない。

止血と意識の覚醒を主とした応急処置をしている間に、救急車が時永悠真を搬送しにやってくる。

柊もその時には会場に辿り着き、そのまま付き添いとしてロロと一緒に救急車に乗り込む。

救急隊員に許可をもらいつつ、デバイスでマスターの携帯電話に通話を繋げる。


「クローバーの代理人、もとい柊です。緊急事態ですので、貴方達の権威などお貸しください」

『…事件があったと騒ぎがあるが…クローバーが寄越した奴が事件にあったのか?』

「そうです…ここまで言えば聡明な貴女は全てを理解するはずです」

『青い血の人外が手籠めにしている医者がいる。そいつの元へ行くよう手配してやる』


柊はお礼だけを言って通話を切る。

そして意識が危うい時永悠真の手を強く握りしめる。


「悠真さん…死んだら駄目です。未来を…二人を守ると決めて…ここまで来たんだから…」

<そうだ。悠真…これからなんだろう?お前の人生はまだまだあったはずなんだから…死なないでくれ!>


そんな柊とロロの声は時永悠真には届かない。

時永悠真は懐かしい思い出を駆け巡るように見ていた。

生まれて物心ついた時から撃たれる瞬間までのこと。

大事で大事にし過ぎて誰にも言えなかった時永悠真という人生を見返していた。




時永悠真が誰かに襲われたという報せを竜宮健斗達にも知らされた。

テレビ局もすぐさまNYRON大会での発砲事件と特番を組み始めた。

笹塚未来は慌てて病院に向かう竜宮健斗達を見送りつつ、犯人の時永悠真が撃たれたことに驚いた。

むしろ時永悠真が大会中にアダムスを狙って襲ってくるのではないかと不安を感じていたほどだ。

その不安はなくなった。しかしスッキリしない思いだけが胸中にわだかまる。

そんな笹塚未来に近づく人物が一人。褐色の肌をした楓という少年に見える存在。

楓は笹塚未来に軽く声をかけて御辞儀をした後、アダムスに向かって話しかける。


「未来の貴方からの命令で…時永悠真を撃ちました」

<…え?未来…>

「な、あ、あ、アンタが…殺した…」


目の前で無表情に告げてきた楓に笹塚未来は声が出なかった。

楓は淡々と大会の閉幕式が終わり次第、中央エリアの時計台に来てほしいと告げる。

そして会場から静かに去っていく。笹塚未来は混乱するだけだが、アダムスは楓は使える駒と打算的だった。

成功しかけていた大会は一転して、発砲事件によって不穏な空気が流れていた。

竜宮健斗達がいなくなったまま、NYRON大会はざわめきを残したままその幕を閉じた。


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