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ANDOLL*ACTTION未来世界編  作者: 文丸くじら


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煌めくアイドルは妹

ケイトという一世を風靡する勢いのアイドル歌手がいる。

キレのあるダンスに抜群なボディライン、軽やかな歌声と明るい性格。

男性人気はもちろんのこと、女性人気も非常に高く、今小中高生の中でカリスマアイドルとしてCMソングも多く採用されている。

あまり芸能に興味ない竜宮健斗でさえ、よく流れるCMのケイトが歌った【ラビッツビーンズ】という曲を風呂場で歌うくらいである。

コンサートチケットも即時完売の勢いであり、海外進出も決まっている多忙なアイドルでもある。


そのアイドルがNYRON大会のテーマソングを担当し、大会当日にミニライヴすることが決まった。


各エリアのチームでは先に内容を伝えられ、歓喜と驚愕の大声がテレビ電話を通して御堂霧乃の部屋に木霊した。

特に大はしゃぎしているのが相川聡史と袋桐麻耶、そして猪山早紀である。


『まじかよ!?ケイトちゃんが、あのケイトちゃんが大会テーマソングとミニライヴ!!』

『一体どんなコネや裏金使ったんだ!?だがよくやった!!』

『じ、自分サイン欲しいな…新曲の感想とかも伝えられたら…』

「…コネねぇ…いや、確かにコネは使ったんだけど予想外でさ…多分これ聞いたらお前らのテンション下がるとは思うけど…」


一世を風靡する今をきらめく有名アイドルのケイト。彼女はマスターの実の妹である。




案の定真実を聞いた相川聡史達含む数名が時の流れを忘れたかのように止まり、そして静かに嘆く。

コネとはマスターという家族の頼みによるイベント請負であり、発案者は青頭千里。

マスターは家族とはほぼ縁切り状態だから無理だろうと言ったが、ケイトは姉から初めて頼み事されたと大喜びで仕事を受けてくれた。

さらには本当に嬉しかったのか当初は簡単なコメントを言ってもらうだけの予定が、テーマソングやミニライヴまで発展。

結果、予想以上の大会来客数が見込める話になり、さらにはマスコミの注目度がストップ高の勢いであることが判明した。


<マスターも人の子だったんだな…>

「え?セイロンはマスターをなんだと思ってたんだ…」


予想外の家族とういう存在にセイロンは本音をぽつりと零す。

マスターは歴代の天才達の頭脳や技術を引き継ぐための後継者として、子供の頃養子として引き取られた。

その際に生みの親と妹とはほぼ縁を切ったような状態だったのだが、連絡は常にとれるようにしていた。

ケイトは昔から周囲に愛される素質を持った妹で、マスターもかなり可愛がっていた方である。

しかし年に一度連絡として話すことしかなかった。妹のケイトはそれだけでも姉が大好きでたまらない気持ちを伝えてくる。

そのおかげで家族とはほぼ縁切り状態だが、妹とは親交を持っていたマスターである。

そしてその親交を青頭千里に知られてしまい利用されたのが、今回の顛末である。



ネットニュースによる速報を見て笹塚未来はほくそ笑む。

NYRON大会への注目度が高まれば高まるほど、視線は集まってくる。

視線だけではなく傍聴する耳も、映像データとして残すことも容易くなる。

またそこからコネクションを作り上げていく難易度も下がっていく。

アイドルのケイトがNYRON大会にやってくる、またとないチャンスの膨大だった。


「大会まであと少し…アダムス、ぼろを出さないように」

<未来こそ。なんにせよここが見せ所だね>


部屋のパソコンの前で蛙のアンドールを抱きながら、笹塚未来は笑う。

もう病気で苦しむことも、迫りくる死の恐怖から解放される将来がやってくる。

それはどれだけ多くの人々を幸福へと導いていくか、そして笹塚未来の自己満足を満たすか。

予想するだけで笑いが止まらない、笹塚未来は笑顔でネットニュースを巡っていた。




柊は秘密裏に玄武明良の家に人工知能クラリスのデータが入ったパソコンを送った。

配達ではなく梱包して簡単な組み立てイスを玄関前に置き、その上に梱包したパソコンを置いただけである。

後はインターホンを押してダッシュで逃げる、いわゆるピンポンダッシュで正体を隠した。

玄関先から出てきた扇動美鈴が驚いた顔で周りを見た後、組み立てイスの上にある梱包を手にする。

首を傾げつつその場で梱包を解き、納得した顔で父である扇動岐路の名前を呼びながら家へ入っていく。

その様子を見届けてから柊は住処へ帰ることにした。


その途中、柊によく似た少年らしき人物の楓が立ちふさがる。


周囲に人影はない。大雪のせいで外出する稀有な者が少ないためだ。

柊もパソコンを届けるためにあえて大雪の日を選んだ。人目について後で厄介なことが起こると面倒だからだ。

しかし厄介事もあえてこの日を選んだらしく、両手には小型のスタンガンが握られている。


「…なるほど。これが世界を…未来を変えるの代償ですか」

「お前に一切の恨みはないが、博士のためだ。壊れろ柊」


博士のため、と言われて柊は体の動きを止める。

まるで機械が動きを止めるかのように、ピクリとも動かない。

瞼すらも動かさない状態になり、避けることもできないほどの静止を見せる。

楓は静止した相手に対し一切の躊躇を見せずに走り出す。そしてスタンガンを頭と胸にめがけて当てようとした。


「ロボット三箇条の一つ。ロボットは身の危険を守れる」


完全なる静止から俊敏に動き始めた柊は指先しか出てない長袖の中からトンファーを取り出す。

取っ手を強く握って勢いよく振り回し、楓の持っていたスタンガンを叩き落とす。

積もった雪の中に二つのスタンガンが落ちて埋もれるが、楓は同じように指先しか出てない長袖から新しいスタンガンを取り出す。


「…楓。貴方の生まれた意味は博士を守ること。僕の生まれた意味は博士の命を遂行すること…」

「俺は…」

「この意味はロボット三箇条に制限されない、僕達の自由です。遵守する必要はない…が僕と同じくらい生真面目な貴方は従うしかないのですね」

「そうだ…だから柊、最初の一手を防いだお前に一つ頼みごとがある」


そう言いつつ楓はスタンガンを改めて柊に当てようと走り出す。

柊はトンファーを構えているが、攻撃する体勢ではなく防御する体勢で待ち構える。

機械的な言葉を柊はスタンガンが当たって意識が暗くなる前に捉えることができた。






「俺が三箇条を破った時、お前が俺を破壊しろ」





白い雪の上で柊は静止していた。電撃によって意識を取り戻すには時間がかかる。

大雪のせいでその体の上には雪が降り積もり、少しずつ埋まっていく。

普通の人間だったら体温低下による死の危機だが、柊にはその心配がない。


なぜなら柊は人間ではないからだ。





試作機SUZUKAは届いたメールを元に容姿を整えていった。

マネキン人形のような無骨な姿ではなく、人間らしい、むしろ人間にしか見えない容姿に仕立て上げた。

波打つ金髪に青い瞳は西洋人形を意識した。しかしそれだけでは物足りないので雪の髪飾りでアクセントをつける。

ノースリーブの赤いドレスはフリルを多めにして可愛く、その上に北エリアらしい真っ白のポンチョを着せて温かく見せる。

そして少し汚れてしまったが今は亡き娘、扇動涼香に送った桃色の犬のぬいぐるみを腕に抱かせる。

眠っているようにも見える抜け殻の試作機SUZUKAは、今からANROBTとして動くことになる。

送られてきたパソコンの最終チェックを行い、インストールを始める。

時間はかかったが、完了の文字と共にANROBOTは動き出す。史上初のアンロボット。

その目醒めはとても緩やかで、気怠い眠りから目が覚めた少女のような声が響いた


「…おはようございます」

「ああ……おはよう」


一歩も踏み出していなかったが、この瞬間は扇動岐路にとっても、人間にとっても大きな一歩だった。

NYRON大会に向けて準備は整ったと言わんばかりに、扇動岐路はエリア管理員会の御堂正義に連絡をした。

そして月日が経つのは早く、NYRON大会は開催の朝を迎えることになった。



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