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遠死集  作者: 美凪ましろ
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【#010 秩序】


 自分がすり減った靴底に思えることがあるでしょう。


 誰かに合わせるがために、


 守り抜けなかった正義のことや、


 貫けなかった信念。


 裏切られたと告訴する人間の瞳の真性。


 それらの残骸を手に取ると、自分が希薄化されて、元通りの純度を戻せない。確認するだけになってしまうから触れることもせず見向きもせず歩き続ける。


 私たちの生きる社会の正体です。


 万人に最大公約数の平和と幸福を約束するためには、一個人それぞれの欲求など傾聴していられません。システムが停止してしまうゆえに。


 あなたがあなた自身に関わる人全ての要求を承服できないように。


 さぞおもてになるあなた。あなたが欲しいという人間ひとりひとりに応対していてはあなたはあなたの人生を営めません。営みに注力するならば話は別ですけれど。


 最大公約数の平和からちょこっとはみ出る毛先をカットする、ある一定のフォルムを確保するために。


 それに従事したとて、それはあなたの落ち度でも罪悪でもなく、社会化の一形態なのです。


 責める必要はありません。


 自らを滅する必要もございません。


 もし、滅したらその後の正義を取り返す機会も消失する訳ですので。這いつくばって機会を伺うくらいの忍耐はお持ちください。



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