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【#027 熱情】
朝が始まる前の、茜が白を覚え始めるかたちを見せたい。
この胸の高鳴りをどうにか箱のなかに詰めてお渡ししたい。
いったいどうすれば私は近づける?
肩で虚空を切るあなたへと。
存在すら覚えてもらっていないのです。
お忘れでしょう、幼い時分に。あの野原で白詰草の冠をお渡しした少女のことなど。
私は思い出だけで生きていけます。
けれども時折。この立方体から抜けだして飛びたい、と思うことがあるのです。
背負うことにおいてはあなたと同一です。
責任とは束縛。拘束力となって働き蝕んでいくのです。
いま私の意志を無視して奔走する私の支配者なぞ権力に侵された好例です。骨の髄まで水浸しなのです。どれだけ濁った目をしているのか。どれほど自分の領地を増やす欲に取り憑かれているのか自身は気づいていないのです。
忘れられた塔に隔てられて、煉瓦の間の四角い小窓から世界を眺むだっただけの私が。
世界の中心へ追いやられようとしています。
ですからねえあなた。
お逃げください。
私があなたという領土を焼ききってしまう前に。どうか。
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