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遠死集  作者: 美凪ましろ
18/44

【#019 誘惑】

 

 くぱぁ とあけひろげて待っている


 穴蔵からいっぱい声が聞こえんだ


 おいでえ

 たのしいよぉう

 つらいことばかりでしょーさびしいでしょぉう

 こっちに来れば楽になれるよお


 手招きをするあまいあまぁい香りが漂う奥へ奥へと


 なんだか肉食のぼくが釣られるにおいでね すごく食欲がそそられるんだ 花よりも甘く蜂蜜よりも依然攻撃的で 


 導かれそうですこし怖い


 あっちに行けば悲劇のヒーローになれる


 かわいそうだねー大変だったねー

 二人ぼっちは辛かったよね

 ここに来れば住人ううんにひゃくにんがみぃんなきみの味方だよ

 怖がることなんてなんもないんだ

 あったかい肌に触れて

 みんなよってたかって慰めてくれる

 頭イイコイイコしてくれるんだよ


 でもありがとう


 女王様はぼくには要らないんだ 


 なぜならね こっちにね 一人ぼっちで膝を抱えて眠れない女の子がいる


 ぼくはその子を置いていけない


 一生ね そばにいるって約束をしたんだ


 そこの三つ葉のクローバーに誓って


 どこにでもあるものに誓えば約束は遂行される


 身近なものに愛がある


 一緒に来ればいい? て駄目なんだよあの子はね そっちの森に入れないんだ

 近づいただけで気を失いそうになる

 すごく気分が悪くなるんだ


 きみたちはすごくさみしい?

 ぼくたちが来ないから?


 もし 来るとしたらね


 ぼくがぼくの胸を刺してあの子がぼくを食べてくれるそのあと だろうね


 ぼくのことだけはあの子へーきなんだ


 でもやせ衰えてそろそろ限界に近い


 あそうだ ねえきみたち


 死んでくれないかな


 そうすればぼくたちきみたちと一緒になれるよ


 きみたちをぼくのすてきな養分にしてあげる


 おいしそうにたらふく太ってるよね


 うごかないぶよぶよのきみたちは


 うんお腹空いたんだぼく


 あ なんで気がつかなかったのかな きみたちを食べたぼくを食べてもらえればいいんだ 一日だってあの子は生きながらえる きみたちがいなくなったら木の根っこもくさらないですむ すごい においが のこってても ぼくの 血で あらえば へーきだ


 つまりはね


 ぼくの触手にさえ任せてれば


 みんなこぞって幸せになれるよ


 うんそうだね こわがってないで こっちにおいで 百人ぼっちは辛いでしょう こっちにくればあったかいよ ぼくが美味しく切り刻んであげる 痛いこと辛いことなんて一つもないんだよ


 だってぼくらには未来があるんだから


 おいで



 さあ



 * * *

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