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遠死集  作者: 美凪ましろ
13/44

【#014 狼藉】


 毎日何人もの男がきみを犯しに来る。


 欲望の解消を求め。


 周囲との同和を求め。


 群がる獰猛な獣たちを、きみを穴としかみなさない非人間的理性のかたまりをきみ自身どう思うかい。


 一人でも欠けるとやつらは浮くんだ、明日来ない、ならあいつハブる、そうやって協調性を維持してる。


 カメラ撮影してるやつなんか代議士の息子だからね。バレたら町全体大騒ぎになるよ。


 だから誰もいない、周囲の目の届かないこの部屋を選んだんだ。親なんていないも同然だしね。


 ところできみ。


 解放してくれないかい?


 天井に這いつくばってるのも飽きたんだ。喋る相手もきみしかいないし。


 解放されない限りきみはぼくを解放するつもりがないんだろうね。うん、それは分かる。


 縛られなくとももはやきみ、縛られたも同然だよ。顔も住所も割れてる。失踪届見てあいつらこころ痛まないのかね。ぼくが代わりに憤ってあげるよ。


 ……きみを見てるとつくづく可哀想になる。強姦罪は女子にしか適用されない。強制わいせつ罪はたった七年。捕まってもあいつら二十五にもならない、家庭持つかも分かんないお年頃で出てこられるよ。


 どうやら法がやつを裁くよりきみがやつらをかっさばくほうが先だろうね。


 あいつ、買ってきてくれたかな。


 よく利くやつ。


 魚の濁った眼を演じたきみの復讐劇に興味はなきにしもあらずだけど。


 レバーのかたまりを見るのは肉料理の下ごしらえでもない限りぼくは胸が悪くなる。


 ふしぎだね、もっと凄惨なものいっぱいきみと見てきたのに。


 でももうたくさんなんだ。


 匂いがすごい。人間が排出しうるものの全てを排出した匂いが満ちてて嗅覚が腐りそうだ。最後の砦、きみの理性まで排出されるその瞬間をぼくは正気を保てるうちには見たくないんだ。


 だからそこのきみ。


 そろそろ解放してくれないかい?



 * * *

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