エピローグ〜或いはそれこそが幸せな日々?〜
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エピローグ
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「おっはよー伸!圭吾!義美〜」
「おはよう明巳ちゃん。」
「おはようですよ明巳。」
「おー、おはよう明巳。珍しく殴りかかってこないんだな。」
ギャー!!
朝一の通学路。三日間ぶっ倒れていた伸は再び元通り学校への通学路を歩いていた。
今日からの通学で変わったことといえば、義美を圭吾が俺んちまで案内してきたことくらい。
でも、義美がこのメンバーに加わっても思ったよりずっと安定した日常のままだった。
「それにしても、もう伸ちゃんは大丈夫なのぉ?」
俺の顔を覗き込むみたいに、圭吾はステップを刻んだ。
「完璧。でももうあーゆーのはゴメンだな。追い掛け回されるのはあれっきりの人生にしたいよ。」
三日前の騒動を思い出して目を細め、伸は空を仰いだ。
「それは私もそうだって。」
「私だってですよ。」
三人はそろって、肩をすくめて笑いあう。
「でも、もう平穏な日々が訪れてくれるんじゃないか?あわただしい日々はあの日に一生分消費したと思う。」
「だろうね」
「正直、そうじゃなきゃ困るですよ。」
「………」
ニコニコと微笑んだまま、圭吾はだまりどおしだ。
「?どうした圭吾。」
「なんでもないよぉ。ごめん、ちょっと先に行くねぇ。後は三人でごゆっくりぃ〜」
ぶんぶんと演技がかった様子で大きく腕を振りながら、圭吾はあっという間に見えないところまで飛んでいってしまった。
「なんだあれ。」
「さあ。」
「学校までもう、すぐ着くですのに。」
「「「「いたぞぉ!!青崎伸だぁ!!」」」」
「「つかまえろぉ!」」
急に背後から体育会系の声が響き渡った。
「へ?」
ゆっくりと振り返ると、なぜか男連中が群雄割拠。手には物騒な武器を装備しまくってこっちを睨みつけている。
「今、俺の名前呼んだ?」
「「いけぇぇぇ!!」」
「え?え?あ?どういう……わぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ああっ伸!?」
「伸さ〜ん?」
走っていく伸と、それを追いかける男たちを見送る二人。
そこに、ふわりと風に乗り飛んできたのは学校新聞最新部。
表題のほぼすべてのベタを占めているのは、伸の頬に明巳と義美がキスをしている写真と。
『ダブルアイドル篭絡!!今世紀最高のスケコマシの名は青崎伸!!!』
「「え?」」
明巳と義美の声が重なる。
そして、どちらからともなくクスクスと笑い出した。
一面の左下のほうには小さく伸が捕まえた本物のストーカーである真鱈目の話題と、伸がストーカーとして名乗り出たいきさつが乗っていたものの、あまりにも衝撃的なニュースの陰に隠れて、あまり名誉挽回の役には立たなかったとか、何とか。
「けぇぇぇいごぉぉ!!どぉこいったぁぁぁ!!」
泣きながら伸は校内を駆けずり回る。
後ろに殺気立った鬼たちを引き連れて。
「や、ゴメンねぇ、伸ちゃん。」
「赦すかぁぁ!!」
「あっはははははは…」
小日向高校が静かになるのは一体何時になることか。
ブルーに成ると存在感が薄くなるはずの青崎伸は、一躍学校のビンゴブックにでかでかと名前を連ねる有名人へと格下げとなったのだった。
「これで、学校に知れ渡ったことになりましたですよ。」
「ああああああぁぁ〜〜」
明巳は頭を抱えてもんどりうった。それを、愉快そうに見つめてから、義美はさっきの圭吾のように明巳の前へ躍り出る。
「公認の、ライバルですよ。明巳。」
「えぅ……そ、そんなことより伸を助けに行かなきゃ!あいつこのままじゃ殺されるわよ?」
「今回は、はぐらかされておきますですよ。」
明巳はなんともいえない苦笑を浮かべて。義美は、そんな明巳の様子さえうれしそうに。
二人は伸の絶叫が聞こえてくるところへ向けて駆け出した。
「ち、ちくしょぉぉっ!!なんで、何でインビジ・ブルーこんなときに限って発動してくれないんだよぉぉ!!!」
「「何をわけのわからないことを!」」
「「スケコマシには天誅を!!」」
「「「うらやま……天誅をぉぉぉぉ!!!」」」
「か、勘弁してくれぇぇ」
入梅前の青い青い空に、伸の絶叫は響き渡り溶けた。
これは、暗殺者の家系に生まれた主人公青崎伸のどたばたとんでも青春ライフである。
――――――――終幕。
稚拙な物語ではありますが、お付きあいいただき、本当にありがとうございました。
また機会があれば、よろしくお願いいたします。
指摘など、歓迎ですので、もしなにかあればお気軽にお願い致します。