A faint first love
それは、儚く散っていった。
叶う事はない、と、そんなことは最初からわかっていた。
それでも、私は想い続けた。
いつから、私がそうだったかなんて、本人でたる私ですら分からない。
ただ、いつの間にか、私の視線はキミヘと移っていた。
友達と明るく、楽しそうに笑っているキミ。
数学の問題と睨めっこして、真剣な表情で解いているキミ。
好きな作家さんについて、本気で議論しているキミ。確か、好きな作家さんは『奈須きのこ』だったかな?
部活で記録に挑戦して、あと一歩届かなくて、悔し涙を流していたキミ。
口喧嘩で、男子と対等にやり合って打ち負かしていたキミ。
色んなキミを見てきて、色んなキミに惹かれた。
どれが一番、なんて、即決しかねる。でも、そんなこと言ってても、やっぱり、笑ってるキミが一番だった。
『淡くも綺麗な初恋』何て言うと、大仰過ぎるかもしれない。それでも、私の初恋はそれだけ輝いていた。
だけど――――――
気持ちは本気だったのに、行動で本気になれなかった。
動いてみて、そのあとの悪い展開を想像すると、怖くて足が震えた。
結局何も出来なくて、何とかしなきゃ、って思っていたのに、あれよあれよという間に季節が過ぎていって、四度目の春が来た。
キミは卒業。私は残る。四月だから、当たり前だって、卒業だから、仕方ないって思ってた。
キミは上京して、有名な大学。もうずっと会えなくなる。
頭の良いキミだから、それが当たり前だって、わかっていたこと。
キミと離れるのが嫌で、本気で泣いていた私を「こんくらいで泣くなよな」って照れながら慰めてくれたキミの瞳からも、一筋の涙。
「泣いてなんかないもんっ」って泣きながら嘘ついたって、キミにはバレちゃっている。だから、ここで動いた。
私はキミに花束を渡した。キミはそれを見て、少し驚いた表情をしてから、私に「ありがとう」って言った――――――
花に詳しかったキミだから、私が贈った花の言葉くらい、きっと分かってるよね。
贈った花は『ハツコイソウ』。花言葉は――――――
『淡い初恋』
あの時言えなかった私の気持ち、キミに届いてると良いな。
「あなたは、私の初恋の人。ずぅっとずっと、好きでした」