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第2章 第2話 発進準備

サイレンが三人の頭上で鳴り響く中、松村と岡田はまるで神を見たかの様な驚き様だった。


そのパイロットの青年は彼らの大親友でありこの旅の発端である斉藤と瓜二つだったのだ。



「斉藤!お前何でこんな所にいるんだよ?今がいつだかわかるか?」


そのパイロットは冷徹な反応を示した。


「ここにいるのは私が民主連合軍空軍隊少佐だからだ。今は2545年9月24日だ。では聞く、何故空軍制服を着ていない。」


まるで別人だった。口調と人格は。


松村はまだ信じられなかった。



「あの…?斉藤桂司か?」


「私はそんな奴など知らん。貴様らもだ。とっとと搭乗して空に散れ、マラ野郎!」


少佐は二人の首筋を掴み、戦闘機の方へ引っ張っていった。

三人の頭上では、パイロット搭乗済みの戦闘機が続々飛び立って、頭上すれすれを通過していった。


「そこのクロ(松村)は238機、偉そうな坊主(岡田)は921機に搭乗しろ。きびきび動け!」


少佐は二人を突き放して、自分の機の梯子を上ろうとした。

だがこんな仕打ちを受けて、喧嘩っ早い松村が黙っているわけはなかった。


「オイ、テメエ!黙って聞いてりゃいい気になりやがって!その不細工な顔をぶん殴ってやる!」




バン!




辺りに銃声が響き渡った。

少佐の腰に付けられたホルスターが抜かれ、左手には煙の出ている銃が握られていた。

「松ちゃん!」


岡田が松村の方に駆け寄ろうとすると、少佐は銃を松村の方から岡田の方へと向けた。


松村は右肩すれすれの制服に銃弾がかすって、立ったまま死んだように沈黙していた。


「命令無視は重罪だ。」


再び銃の照準を松村の頭に合わせ、撃鉄を倒した。

引き金を引こうとしたその時。


ウ゛~~。



再びけたたましいサイレンが鳴り響いた。


少佐は空を見上げて舌打ちすると、銃をホルスターにしまった。


「撃ち殺されたくなければ、一人で中国機を10機墜とせ。日本国及び合衆国万歳。」

と言い残して梯子を上り、コックピットに飛び乗ってキャノピーを閉めた。


少佐機エンジンがかかると辺りは爆音に曝され、やがて滑走路を疾走し快晴の大空に向けて飛び立った。




今の少佐の発言で分かった事は二つ。

まず今は2545年9月24日で、日本とアメリカが連合を組んで、中華人民共和国と戦争をしているということ。


もう一つは、斉藤と瓜二つのパイロットは全く別人の少佐で、この二人に敵意を向けているということ。

敵国兵だと勘違いされなかっただけまだマシだが。



さて、この二人は命令通り、それぞれの機に向かって走り出した。


なんたって、敵機を10機撃ち落とさないと死刑だ。

だが松村には勝算があった。

彼の得意分野だ。


これ以上ないって程の。



むしろ心配なのは岡田だ。

現代の戦闘機の操縦席はおろか、戦争ゲームも知らない岡田が、松村すら見たことも無い500年後の戦闘機を実戦で戦わせる事ができるのか。

それ以前に動かせるのか?

松村にすら出来るかどうかもわからないのに。



「僕、戦闘機の操縦なんてできないぞ!」


「オレが無線でビギナー向け講座をしてやるよ。安心しろ。」


「無線が付いてなかったらどうする?」


「絶対に何らかの通信装置が付いてる筈だ。」


「松ちゃん、もしものためにこれを渡しとく。」


岡田が放り投げたのは、ペンに似た一本の棒だった。


「何これ?電子遺書?」


「トランシーバーだよ!有効距離は500m。」


「500m?戦場じゃ役に立たないぞ。」


「念のためだよ。」


「あんまりオレの機にくっつくなよ!じゃあな!」


二人はそこで別れた。

再会できるだろうか…。




松村はコックピットに飛び乗った。

だが、その中には見たこともない機器が乗っかっていた。


予想より窓が大きくとられ、計器類はあるが、操縦桿すら無かった。



「は?これでどうやって動かせばいいって?」


しばらく機器を見回すと。


中に取っ手の付いた腕一本程の大きさの穴が左右にあり、「INHAND」と書いてあった。


松村は恐る恐る、穴に両腕を入れ、中の取っ手を握ると。


まだ閉まっていないキャノピーの方に画面が出て、「Close a canopy」と表示されていた。


松村はキャノピーを閉めた。


その数秒後、画面にズラズラと英語が現れた。


「This plane starts an engine by voice inputting. I start an engine. "yes"or"no" .」




勿論、松村にはチンプンカンプンだ。


誰か英語が分かる奴に聞こうにも、松村が知っているクラスメート達はとうの昔に死んでいる。


抑ここは戦場のそのまた無線も無い戦闘機の中だ。誰にも連絡はできない…。

その時、松村は思い出した。

トランシーバーがある。

出るのはこれまた頼りない岡田だが、いないよりはマシだ。


早速岡田に通信した。


「おい岡田!聞こえるか?多分お前も英語無理だろうけど…」


「『本機は音声入力で起動する。エンジン起動するかしないか。』」


「は?何の事だよ?」


「どうせ松ちゃん英語ダメなんだろ?通信来ると思って訳しといた。」


「岡田って、英語できるの?」


「大得意だよ。ニュージーランドにホームステイしたぐらいだ。」


「心強い味方だな!」


松村は画面に向かって「Yes」と返事した。


すると今度はまた別の表示がでた。


「Please input 8 columns of passwords within 60 seconds」


これは松村にも分かった。


「8桁のパスワードを60秒以内に入力してください」だ。


松村は一瞬だけ解読した喜びを味わったが、すぐに覚めた。

二人にとって非常にマズイ状況だ。


再びトランシーバーの出番だ。今度は岡田の方から通信が来た。


「何?パスワードって?」


「500年後の時代のパスワードなんてオレが知る訳ねえだろ!」


しばらく間が空いて…。


「そりゃそうだ。ハハハハハ…。」

「ハハハハハハハハハハ…って笑い事じゃねえよ!」


そうしている間に、画面に新しい表示が出た。


「This plane blows up unless I input a password within 30 seconds」


松村が表示の解読に精を出していた。


「『within 30 seconds』が『30秒以内』で『blows up』が自爆か。なるほど…って、え~~!?マジ?」


又しても画面が切り替わって新しい表示がでた。


「Input the date of "the Japanese humiliation"」



岡田から通信が来た。


「[『日本の屈辱』の日月年を入力せよ]?『日本の屈辱』の日って何なんだ?松ちゃん!?」


「だから、なんでオレに聞くんだよ?」


「松ちゃんって歴史に詳しいだろ?」


「だから、500年後の歴史なんてオレは知らないって…!」


…松村の脳裏に、ある事件が浮かんだ。


つい最近の。










「分かった!『24092010』だ!」


この声は、戦闘機の融通効かないコンピューターにも岡田にも聞こえた。



とうとう画面に待望の表示が出た。


「Password approval. Have a nice day.」


二人の機は猛スピードで滑走路を駆け抜け、大空高く舞い上がった!





あのパスワード、何の数字かお分かりですか?

分からない方は次話かニュースをご覧ください。


分かった方は、つじつまが合わないと思われる方もいらっしゃると思いますが、今度過去の話を修正してつじつまが合うようにしますので、御了承下さい(杜撰ですみません)。


また、この話から英文が頻発する予定です。もし英文が間違っていたら報告をお願いします。



この戦争の原因は例のあの事件が理由です。

こんな時事ニュースを小説ネタにした経緯については次話の後書きで。



また、本日「羅生門」に関する二次創作小説を掲載しました。タイトルは「下人の行方」。原作の事件直後の下人の物語です。

さほど長くないので、そちらの方も是非ご覧下さい。

ではまた次話後書きでお会いしましょう。



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