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8。初めてのおともだち

 翌日。


 アメリアさんが用意してくれたちょっと可愛い感じのワンピースに着替えて、エントランスでジャスパーさんが来るのを待っていると、あの時の…


「あら、奇妙な女性がこんなところで何をしているの?」


 嬢。名前忘れちゃった。

「こんにちは」

「ジャスパー様はどこかしら?」と言ってキョロキョロと辺りを見回す。

 今日も胸を強調し、いつかポロリとなるのではないかとヒヤヒヤするドレスを着用している。

「ねぇ。あなたみたいな奇妙な女性はジャスパー様に相応しくないと思うわ」

「そうですねー。私もそう思いますー。でもあちらもお仕事ですからー。」

「ジャスパー様の隣にはわたくしが並ぶのが良いと思うけれど?」

「あー…でもですよ?殿方というのはあからさまなモノを手に入れようとは思わないんですよ」

「あからさまなもの?」

「そうですねー。例えばその胸。もう見えちゃってるじゃないですか」

「!!」

「見えないからこそ見たくなるのが人の世の常と言うものです」

「そ…そうなのかしら…」

「そうなんですよ」

「じゃあ隠せばいいのかしら?」

「ええ、私ちょうど良いものを持っています」

 そう言ってバッグからハンカチを取り出し、広げて見せる。

「大ちゃんハンカチです」

「え…」

「これを胸元に乗せておくと…その向こうを覗きたいなーと思った殿方が…」

「殿方が…」

「コロリと落ちます」

 はっとした顔を咄嗟に扇子で隠す嬢。

「ジャスパー様も…コロリと…?」

「ええ。たぶん。良かったらそのハンカチ、差し上げますよ」

 そう言いながら、大ちゃんがよく見えるように嬢の胸にハンカチを広げてあげる。

「え?本当に良いのかしら…!?」

「はいどうぞどうぞ。もうすぐここにジャスパーさんが来ますから試してみるといいですよ。ほら、噂をすれば…」


 つかつかとやってきたジャスパーさん。

 この前は嬢と目も合わせようともしなかったのに「どうして…これを…」と、嬢の胸にいる大ちゃんをまじまじと見つめている。


 はわわ〜♡と震える嬢に合わせてプルプルと震える大ちゃん。


「仲良くなった証に差し上げたんです」

「ええ!そうですわ!わたくしたちお友達になりましたの!」

 にっこり笑う彼女と、驚く彼。


 嬢の胸を見つめたまま微動だにしない彼の背を押しつつ「では今日はこれで。ごきげんよう」と嬢に手を振る。

 去り際「そのハンカチはジャスパー様にしか通用しないので、ほかの殿方にはレースとか薔薇模様とかにしてくださいね」とこっそり付け加えるのを忘れない。


「今度きちんとお茶に招待しますわ!」と胸の前で小さく手を振る嬢。




 用意された馬車に乗り込むとすぐに「先程の…どういう状況ですか?」ジャスパーさんが聞いてきた。


「ん〜?仲良くなったのよ〜。それだけよ」

 ああいうタイプは付かず離れず仲良くなるのが一番。


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