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1。異世界へ転移

 金曜日。

 会社の机の上に置かれた小さなデジタル時計の表示は「16:48」


 街に溢れ始めたクリスマスのグッズ。

 毎年楽しみにしている、お気に入りのお店のアドベントカレンダー。今年もしっかり予約してあり、明日の休みにはそれを取りに行く予定。それと、毎年一つか二つ増やしている素敵なオーナメント。それもついでに探してくるつもり。


 彼氏もいない「おひとり様」だけど、おひとり様万歳!時間を全て自分のために使えるなんて幸せ。自分のために働き、自分に還元!

「なんて幸せなの〜」

 仕事も残さず頑張って、明日は心置きなく買い物三昧。明日の予定でウキウキするなんて久しぶり。


 心置きなく買い物する為に仕事は全て終わらせた。

 あとは時計が17時になるのを待つだけ。




 幸せ気分に浸る私の背後に近づく、ぺったんぺったん…と響く耳障りなパンプスの音。


「浜崎せんぱあい。すみません〜、先方からの急な会食のお誘いがあってどぉしても行かなきゃいけないんですぅ。なので先輩から頂いたお仕事が出来なくなっちゃいました〜。これお願いしますね〜」


 新人の山下莉央華(やましたりおか)がドサっと私のデスクに乗せた書類の山。


「はい?」

 どう見ても私が渡した仕事量を超えて戻ってきている。

「わあ!もう行かなきゃ。じゃあお願いしますね。お先に失礼しますう〜」

「ちょっと!」

 私の呼び止める声をスルーして、付けたての香水のキツい香りだけを残して山下は行ってしまった。


 置き去りにされた書類をパラパラと見ると、私が頼んだもの以外のものもある。

「え…?うそ!これ何も手を付けてないじゃない!え?これも!どーすんのよ!」

 それらは週明けの提出期限のものばかりだった。

 ちゃんと間に合うか確認した時は「大丈夫です!ばっちりですよ!」と言っていたくせに!


 とりあえず期限間近な物から片っぱしから片付けるつもりだが、一人では無理だと判断。

 部長に事情を話し、部長がすぐに他の人にも声を掛け仕事を分担してくれた。私はただひたすら頭を下げ、手伝ってくれる皆に謝罪し仕事にとりかかる。


 部長他、数人が山下に電話するも電源を切っているようで繋がらない。

 フロアに残る人たちは皆殺気立って仕事を片付けていた。。。


 そして部長と私、他数名が土日出勤して、なんとかギリギリ間に合った。



 。。。



 週明け。



 ピンクのワンピースにゆるゆると巻いた髪を揺らし、部長のデスクの前で目を真っ赤にしてグズグスと鼻を鳴らしながら「だって…」「でも…」を繰り返す山下。


 全然可哀想に思えない山下を尻目に、次の会議に必要な書類をコピーするため立ち上がる。

 何部必要かなど、考え事をしながらコピー室のある一階へ歩みを進めていると背後から山下の声がした。


「浜崎せんぱいっ!酷いですよ!なんで1人でやらないんですか!?みんなに言いふらすなんてパワハラですよ!」


 振り向くとすでに山下は真後ろにいた。驚きと同時に右肩に強い衝撃を受ける。

 私の肩を押した山下の右手が引っ込められる瞬間、私が必死の思いで掴んだのは山下の左腕だった。


 パラパラと舞う書類の隙間から見えた、山下の驚く顔。


 バランスを失った私と山下は階段を逆さまに落ちて行った。




 。。。




「…せとかちゃん。お林檎食べる?」

「うん…」

「ほら、うさぎさんの林檎よ。ぴょんぴょん。せとかちゃん、早く元気になってね」


 これは夢…

 亡くなった母は私が風邪で熱を出した時、りんごのうさぎを作ってくれていた。


「ありがとうおかあさん」


 …


 ………


 ……「……いったぁい!もう!なんで私まで!ほんと、色々巻き込むのやめて下さい!」


 山下の声に目が覚める。

「…ん…」


 久しぶりに見れた母の優しい笑顔。自然に溢れてしまった涙を拭う。


「もう!そうやって泣けばいいとか思ってるんじゃないですか!?泣きたいのはこっちです!」

 ギャンギャン騒ぐ山下の背後に目をやれば、神殿風の柱が見える。どうみても会社の景色ではない。 


「う…やました?…ここ…どこ?」

 ズキズキする頭に手を当てながら問えば、ハッとした山下も周りを見渡す。

「え?え?」


 2人で呆然としていると、誰もいないように見えた柱の影からパラパラと人が現れ始め、その中の一人、金髪に透き通るスカイブルーの瞳を持つ「どこからどうみても王子様」な人物がスッとこちらに手を差し伸べた。


「よくおいでくださいました。して…どちらが聖女様でしょうか?」


「はい?」「はい!」


 私の声に被せるように返事をした山下が、すかさず王子の手を取る。


「はい…わたくしが聖女です。こちらの女性は巻き込まれました。何の関係もありません」

 さっきまでの殺気立つ山下は一瞬で消え去り、胸の前で手を組み聖女のポーズ?をとっている。




「はぃい?」

〜名前のメモ書き〜


浜崎せとか(みかんの名前)


山下莉央華。リオカ(イスカリオテ・ユダより。イエスキリストを裏切った弟子の名前)


ロブラル(外国のチョコレートメーカー)


ローザリンデ(ラテン語で美しいバラ)

カードラン(増粘剤)


デュラン(フランスの英雄が持つ聖剣の名前で「強き/長久の刀剣」と解釈されている)


ジャスパー(精神的な安定感や安心感をもたらす。「聖なる石」とされ、お守りとしても重宝される。感情のコントロールを助け、ポジティブな感情を促す石)

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