第9話 レベル1の限界
ソウマから**「3分の1ベットの魔法」という、迷いを消すシンプルな戦略**を教わった翌日。アカツキは逸る気持ちを抑えきれず、すぐにアミューズメントカジノに乗り込んでいた。
アカツキのプレイは、以前とは全く違う、迷いのない、機械的で安定したものになっていた。プリフロップは厳選されたハンドでのレイズのみ。そして、BBがコールしてフロップが開くと……。
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アカツキはBTNでA♦︎ Q♦︎をオープン。BBがコール。
フロップ(場札):A♣︎7♠︎2♥︎
(トップペアだ!大きく打ちたいが……いけない。レベル1戦略は**『全てのハンドで1/3ベット』**だ!)
アカツキは興奮を抑え、冷静にポットの3分の1のチップを前に押し出した。
「ベット」
BBは少し考えた後、その安さに誘われるようにコールした。
(1/3なら、相手は中途半端なハンドでもコールしなくてはならない気持ちになるはずだ)
ターンは6♥︎。BBはチェック。アカツキはさらにチップを奪いたいため、再び1/3ベット。BBはコール。
リバーは5♣︎。BBはチェック。アカツキはためらわずベットすると、BBはフォールド。相手の手札は見えなかったが、アカツキは**「コールされやすいサイズで、最後まで主導権を握り続けた」**ことに、深い満足感を覚えた。
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アカツキはUTGでT♥︎ T♣︎をオープン。BBがコール。
フロップ(場札):K♠︎J♣︎5♦︎
(最悪だ!キング、ジャックがボードに……。自分のTTは、一気に弱くなった)
以前のアカツキなら、この恐怖のボードで恐れてチェックしただろう。しかし、今は違う。
(ルール通り、ポットの3分の1ベット!)
BBは「また小さいな」と呟きながら、ため息交じりにフォールド。
ポットはアカツキのものになった。
「すごい! CBのたびに迷いがなくなった!」
フロップで悩む時間がなくなった分、アカツキは次のアクションの準備に集中できるようになった。チップは安定し、気がつけばテーブルで平均以上のチップを抱えていた。
(ソウマさんの言った通りだ。判断ミスが劇的に減った気がする!)
しかし、このシンプルな戦略は、ポーカーの複雑な戦場においては、すぐに限界を迎えることになった。
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アカツキはA♥︎ 4♥︎でオープンレイズ。BBがコール。
フロップ(場札):9♥︎7♥︎3♣︎
(ナッツ(最強の)フラッシュドローだ!)
アカツキはルール通り、ポットの1/3をベット。BBがコールした。
ターン(4枚目の場札): J♦︎
フラッシュは完成せず、相手はチェック。
(さて……どうする?フロップでコールされたってことは、相手は何かを持っている。このままチェックしてリバーを見るべきか?)
結局、アカツキはチェックし、リバーでもチェックで終えた。相手は7のペアを見せてポットを取った。
「くそっ!ターンで打って、あの7のペアを降ろすべきだったのか……?」
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アカツキがQ♦︎ J♦︎でオープン。BBがコール。
フロップ(場札):J♥︎9♣︎2♠︎
(トップペアだ!)
アカツキは自信を持って1/3ベットを打った。
すると、BBのプレイヤーが、アカツキのベットの4倍近くの、巨大なレイズを返してきた。
(ぐっ……!この圧倒的なレイズサイズはなんだ!?Jのペアをはるかに超える強い役か?それとも、俺の1/3ベットを舐めたブラフか!?)
アカツキは、この圧倒的なプレッシャーに、手のひらに汗をかいた。コールすれば、次のターンでオールイン勝負になる可能性が高い。
「フォールド……」
トップペアという強い役にもかかわらず、その大きなレイズという名の威圧感の前に、降りることを選択した。
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トーナメント後。
アカツキの頭の中で、「フロップ1/3ベット」というシンプルな戦略は、すぐに**「ターンとリバーのベット」、そして「相手の大きなレイズへの対処」**という、さらに複雑な問題に分化し始めた。




