第2話 カモが武器を手にする瞬間
「いいか、アカツキ。今回のようなミスを無くすためには、自分の手の**『価値』**を正確に知ることが重要になる」
喫茶店のテーブルには、トランプの山と、ソウマが描いたナプキンの図が広げられていた。
「昨日、君は**『勝率20%』と聞いて、頭が真っ白になっただろう。しかし、プロはああいう場面で瞬時に『これはコールしてはいけない賭けだ』と判断できる。その秘密は、『アウツ』と『2倍・4倍の法則』**にある」
「アウツと、法則……」
アカツキは真剣な眼差しでソウマを見つめた。
「さっきも言ったが、アウツというのは、自分のハンドが強い役になるために必要な『当たりカード』の枚数だ。君が昨日のようにフラッシュドローを持っている場合、アウツはいくつある?」
「ええと……スペードが13枚あって、場に2枚、俺の手札に2枚見えてるから……残りは9枚だ」
「正解だ。フラッシュドローのアウツは、常に9枚になる。これは暗記してもいいレベルだ」
ソウマは別の図を描いた。
「じゃあ、ストレートドロー(あと1枚で階段状の数字が揃う状態)は?」
「えっと、例えば手札が『5・6』で、場に『4・7』があったら……『3』か『8』が来ればいいんだよな」
「そう、それをオープンエンド(両面待ち)と言う。3が4枚、8が4枚で、合計8枚だ。しかし、もし手札が『5・7』で、場に『4・8』だったら? 間にある『6』しか当たりがない」
「あ、それだと6の4枚だけか」
「そうだ。それをガットショット(カンチャン待ち)と言う。アウツはたったの4枚だ」
「たった4枚!? 同じストレート狙いでも、倍も違うのかよ!」
アカツキは驚きの声を上げた。
「そう。アウツの数え方を間違えると、勝率計算が狂って大火傷する。まずは正確にアウツを数えることが第一歩だ」
ソウマは指を立てた。
「次に、実際の勝率の計算だ。プレイ中にいちいち『残り46枚のうちの9枚だから……』なんて割り算をやってる暇はない。だから**『2倍・4倍の法則』**という便利な概算テクニックを使う」
「2倍・4倍?」
「そうだ。計算は単純だ」
リバーだけ残っている時(ターン終了時点):アウツの枚数 × 2 = およその勝率(%)
ターンとリバーが残っている時(フロップ終了時点):アウツの枚数 × 4 = およその勝率(%)
「昨日、君がオールインされたのはターン終了時、つまり残りはリバーの1枚だけだった。君のアウツは9枚だったな。計算してみろ」
「9枚かける2……18%!」
アカツキは目を見開いた。昨日のソウマの言った「ざっくり20%」とほぼ一致する。
「そういうことだ。本来はもう少し複雑な計算が必要だが、実戦ではこの法則で十分通用する」
ソウマはニヤリと笑った。
「ただし、これは『相手の手が自分より少し強い』ことが前提だ。相手がすでにフルハウスを作っていたら、フラッシュを作っても負けるから実質的なアウツは0枚だし、逆に相手がノーペアなら勝率はもっと上がる。あくまで目安だ」
「でも、これを知ってるだけで、無茶な勝負は減りそうです」
「よし。座学ばかりだとつまらないから、実際にアミューズメントカジノに行って遊んでみよう。そのプレイを見て、次の課題を考えることにする」
「はい、師匠!」
ソウマは苦笑しながら席を立った。アカツキにとって、数字という名の「武器」を手に入れた瞬間だった。




