第17話 トーナメント(前編)
数日後、アカツキは再びアミューズメントカジノのトーナメントに参加していた。前回のバブル敗退の悔しさをバネに、彼はソウマから学んだ「ベット側の戦略」と「コール側の戦略」を意識してプレイを続けていた。
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トーナメント中盤、アカツキはBBに座っていた。スタックは平均的だ。
UTG(一番最初のポジション)のプレイヤーが3BBでレイズ。
アカツキの手札は K♣6♢ (キング・シックス・オフスート)。
(UTGからの3BBレイズ。レイズ額が大きいし、ポジションがUTGならオープンレンジも狭いはず。プリフロップではコールレンジ外だ。もし2BBならコールするが、ここは降りるべき)
「フォールド」
アカツキは以前なら「BBだから」とコールしていたかもしれないハンドを迷わず捨て、1BBの損失だけに留めた。
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数ハンド後、またしてもBBで、今度はBTNが2BBでレイズ。
アカツキの手札は T♠8♠ (テン・エイト・スーテッド)。
(2BBレイズ。安いし、スーテッドだ。これはプリフロップのコールレンジ!)
「コール」
フロップ:9♣7♣2♢
(オープンエンドストレートドロー(OESD)だ! 6かJが来ればストレートが完成する)
BTNは2/3ポットのCBを打ってきた。
(2/3ポット...ベットサイズは大きいが、T8sは強いドローがある。降りるにはもったいない!)
アカツキはコール。
ターン:J♢
ストレート完成! アカツキは**ナッツ(現時点で最強の役)**を手に入れた。
(強い! 思わずベットしたくなるが……待て。ここでベットしてしまうとドンクベットになる。レンジが弱いBBはチェックが原則だ。相手に打たせて、さらにチップを引き出すんだ。チェック!)
アカツキははやる気持ちを抑えてチェック。
予想通り、BTNはダブルバレル(ポットの半分)を打ってきた。アカツキはここで牙を剥いた。躊躇なくレイズ。BTNは驚いたようにハンドを確認し、すぐさまフォールド。アカツキは大きなポットを獲得した。
「よし。ボードとベットサイズを見て、ドンクベットを回避し、正しい判断ができた」
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さらにトーナメントが進み、アカツキはチップを増やして**HJ**ポジションになった。
アカツキの手札は A♢J♢。
彼は2.5BBでオープンレイズ。BBがコール。
フロップ:K♢8♠3♣
(キングハイボード。AJsは何も絡んでいない。しかし、ここはCBを打つ場面!)
アカツキは1/3ポットのCBを打った。BBはコール。
ターン:T♢
(フラッシュドローになった!……それに、Qが出ればストレートにもなる。コンボドローだ。強いドローだから、ここはセミブラフ!)
アカツキは自信を持って、2/3ポットのダブルバレルを打ち込んだ。
BBはしばらく苦渋の表情で考えた後、「フォールド」を宣言し、ハンドを見せてくれた。「8♡7♡ でした」
アカツキは満足げに頷いた。
(87s のセカンドペアなら、フロップの1/3ベットはコールできる。でも、ターンの2/3ベットには耐えられないはず。教科書通りのフォールドを引き出せたな)
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その後、アカツキはソウマから教わった通り、バブル付近ではICMを意識して慎重にプレイを続けた。無駄なリスクを避け、確実にスタックを温存した。
そしてついに、一人のショートスタックプレイヤーが脱落し、残りは10人。
「インマネです!おめでとうございます!」
アナウンスを聞いたアカツキは、静かに、しかし深く安堵の息をついた。バブルのプレッシャーに負けて AK をフォールドし自滅した前回とは違う。今回は冷静な判断と、正しい知識によって、確実に賞金圏内へと到達したのだ。
(ソウマさん、やりました。チップを増やしながら、入賞できた!)




