第13話 絶対にチェックすべき状況
「ドンクベット、ですか?」アカツキは聞き慣れない単語に首を傾げた。
「ああ、そうだ。語源は**ドンキ―(ロバ)**らしい。欧米では『下手な』『マヌケな』という意味のスラングだね」
「可哀想なロバ……」
ソウマは、そのアクションが何を意味するのかを丁寧に説明した。
「ドンクベットとは、前のストリート(フロップならプリフロップ)で主導権を握った人がいるにもかかわらず、その次のストリートで先手が先にベットすることだ」
「例えば、BTNがレイズし、君がBBでコールしたとする。フロップが開いた時、先手の君(BB)がいきなりベットした場合、これがドンクベットになる」
***
「ドンクベットが推奨されない理由は、大きく二つある」
1. レンジが弱い
「BBはプリフロップでレイズではなくコールを選択している。そのため、AAやKKなどの最強クラスのハンドを持っていない(これらは再レイズするため)。対して、レイズしてきたBTNは強いハンドを多く持っている」
「つまり、レンジ(戦力)全体で見るとBBの方が弱い。戦力が弱い側から喧嘩を売っても、返り討ちに遭うことが多い」
2. ポジションが先手で不利
「BBはアウトオブポジション(OOP)、つまり相手より先にアクションしなければならない。情報が少なく不利な状態なので、基本的に先手は後手よりもベット頻度が低くなる」
「あとは、初心者のドンクベットは大体バリューベット(強い役ができた時だけ打つ)だから、ハンドがバレやすいという問題もある」
***
ソウマは、アカツキのレベルではドンクベットを「禁止」に近い形で指導した。
「ドンクベットは、GTO上でも推奨される頻度は非常に低い。まずは、コールして先手なら、次のアクションは必ずチェックすると覚えよう」
「わかりました。弱いレンジで、不利なポジションから無理に攻めない、ということですね」
「そうだね。もちろんリンプと同じく、どんな状況でも絶対にダメなプレイというわけではない。ドンクベットが悪手なのは、コールした側のレンジが弱いことが大きな要因だっただろう?」
「そう言ってましたね」
「レンジが弱いことが原因なら、ボードにレンジが強くなるようなカードが出れば話は変わる」
「レンジが強くなるようなカード……?」
「そう。例えば BTN vs BB でボードが Q−T−7 だったとしよう。BTNがフロップでベットし、BBがコールした後、ターンで 7 が落ちた場合を考えてみよう」
「この場合、スリーカードになる7を持っている可能性が高いのは、BTNとBBのどちらかな?」
アカツキは少し考えた。「7、ですか?そうですね、確かBTNのプリフロップのオープンレンジには、強い手が多いから……7のような中途半端な数字はあまり入っていないはず。だから、BBでしょうか」
「ほう。良い着眼点だ。確かにその理由もある。だが、それ以外にも大きい理由として、BBはBTNのフロップのベットで弱いハンドをフォールドしていることが挙げられる」
「ああ!ノーペアの確率が下がっているので、その分ペアの確率が上がっているんですか」
「そうだ。そのため、当然スリーカードという強い役の割合も上がる。ボードにこちらに有利なカードが出て、こちらのレンジが強くなった(強いハンドを持っている確率が上がった)場合は、ドンクベットが有効になる」
「なるほど!ボード次第で強弱関係がひっくり返るんですか。面白いですね」
「そうだね。よくあるのは、今回の例と同じくターンで数字が被った(ペアになった)場合だ。特に、被る数字が低い方が、相手がその数字を持っている確率が低いのでより良い。これは、さっき君が言ったように、プリフロップレンジが関係しているよ」
「それ以外にも、フロップでレンジベットを使わない場合は7はそこまでベット頻度が高くないことも影響している。まあ、今はまだレンジベットでいいし、ドンクベットもしなくていいけどね」
「それじゃあ座学も済んだことだし、また実践に移ろうか」




