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第11話 セオリーの実践

ソウマとの濃密なセッションを終えた翌日。


アカツキは、逸る気持ちを抑えきれず、開店と同時にアミューズメントカジノに足を踏み入れていた。彼の脳裏には、ソウマから授かった二つの新たな**「鉄の掟」**が深く刻まれている。


一つは、「ドローハンドでのダブルバレル」。


もう一つは、**「トップペアは安易に降りずに守る」**こと。


チップを受け取り、席に着く。アカツキの目は、以前のような不安に揺れるものではなく、獲物を狙う狩人のように鋭くなっていた。


***


アカツキは**BTNボタン**で K♠T♠ をオープンレイズ。**BBビッグブラインド**のプレイヤーがコール。


フロップ(場札):9♠7♡2♠


(キングハイだが、フラッシュドローがついた!フロップで役は完成していないが、ソウマさんの教え通り、迷わず打つ!)


アカツキは呼吸をするように自然に、ポットの**1/3**をベットした。BBは少し考えてコール。


ターン(4枚目の場札):4♣


(スカった……!)


役は完成しなかった。BBはチェックで回してくる。


これまでのアカツキなら、ここで弱気になり、無料でリバーカードを見るためにチェックしていただろう。だが、今の彼は違う。


(まだフラッシュドローという強力な保険が残っている。ここでチェックして、相手の弱いペアにショーダウンまで持ち込まれて負けるのは最悪だ。ここはセミブラフの好機!)


アカツキは迷いを断ち切り、ポットの**75%**にあたる、重みのあるチップを前に押し出した。


「ベット!」


BBのプレイヤーは、フロップの小さなベットにはついてきたものの、ターンでの大きなベットに明らかに動揺した。しばらく眉をひそめて考えた後、カードを放り投げた。


「フォールド」


ディーラーがチップをアカツキの元へ寄せる。


(勝てた!……もしコールされても、まだリバーでスペードを引くチャンスがあった。これが、攻めと保険を兼ね備えたセミブラフの威力!)


***


時間が経過し、アカツキはUTGで A♣8♣ を配られた。オープンレイズし、再びBBがコール。


フロップ(場札):8♡6♠2♢


(トップペアだ。しかもキッカーはA。ソウマさんが言っていた**『自分のレンジの中で、かなり強いハンド』**に分類される!)


アカツキは定石通り、ポットの**1/3**をベット。


すると、BBのプレイヤーが、以前アカツキが Q♢J♢ の時にやられたのと全く同じように、即座にチップを掴み、ポットの3倍程度のレイズを返してきた。


「レイズ!」


アカツキの心臓が、ドクリと跳ねた。あの時の、チップを奪われた恐怖がフラッシュバックする。しかし、彼はすぐに冷静さを取り戻した。


(……よく見ろ。このレイズサイズは、以前の4倍レイズよりさらに小さい。ここで降りたら、**『弱気なプレイヤー』**というレッテルを貼られ、骨の髄までしゃぶり尽くされてしまう!)


アカツキは目を閉じ、ソウマの言葉を反芻した。


「コール」


アカツキはトップペアを降りることなく、力強くチップを前に出した。


ターン:K♢


BBはチェック。アカツキもチェック。


リバー:Q♡


BBは再びチェック。


アカツキは、ターンで相手がチェックしたのを見て確信した。相手は本当に強いツーペアやセットなら、ここでさらにベットしてくるはずだ。


リバーでチェックを返すと、BBはバツが悪そうに 5♡5♣ の弱いペアをオープンした。


「……勝った」


あの時レイズに屈してフォールドしていたら、みすみす相手に渡していたはずのポットを、勇気を持って勝ち取ったのだ。


***


トーナメント終了後、アカツキは興奮冷めやらぬままソウマに電話をかけた。


「ソウマさん!やりました!強いドローでダブルバレルを打ったら相手が降りましたし、トップペアで3倍レイズにコールしたら、相手は弱いペアでした!トップペアを守り抜きました!他にも……」


ソウマは電話口で、弟子の成長を喜ぶように優しく笑った。


「うん、よくやったな。君がトップペアをフォールドせずに守ったことで、その相手は次から無謀なブラフを仕掛けてこれなくなる。そんなことをしても損するだけだからね。これが、**GTOがもたらす『相手に付け込まれない強さ』**だ」


アカツキは、ポーカーにおける**「守りの理論」**の重要性を、身をもって痛感していた。


「次は、何をすればいいですか?」


ソウマは少し考えた後、楽しそうな声で新たな扉を示した。


「そうだなぁ。今までの特訓は、**『君がレイズした側』の話だった。ポストフロップでは、ベットするか・チェックするかを考えることが多かったね。だが、ポーカーのプレイの半分は、『レイズされた側』**になる」


「僕がBBでコールする側に回るわけですね」


「一番よくある状況はそうだね。じゃあ次は、レイズされた側の防御戦略について話そう。これがわかれば、ポーカーの基礎はマスターしたと言えるかもしれない」


「おお!頑張ります!」


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