決戦前夜~オペレーション・ゼロ~(後編2)
「すると…、アンドロイドに会わずに、新型結核装置を破壊、できる?!」
「ご明答」
セイジは笑みを浮かべた。
が、すぐに真剣な表情に戻った。
「と言いたいところだが、それは俺たち次第だ」
ここまでセイジが言ったところで、今度はステゾーが割って入った。
「まあ、そういうことだ」
鼻をスン、と言わせてステゾーは続けた。
「…俺とセイジで一度に叩いたアンドロイドの数は、最大で八十体。正直言っちまうと千体は未知の領域だ。そして、もう一つの不確定要素がある」
ステゾーは座っているモノノベ衆たちにちらりと目線を送った。
「こいつらの前でこれを言うのはちょっと酷だが…。それは、実戦の数、だ。確かにモノノベ衆の二十八人の腕は保証する。ただ、訓練と実戦は別ものだ。そのうえ、俺の持つ妖刀・芥屋之門とセイジの溶刀・能解口。モノノベ衆の刀はその普及版で六割の切れ味に留まっている…」
静かに聞いていたモノノベ衆だが、その横顔を見ると、なんだか不服そうだ!?
この人たちのチームワーク、ほんと、大丈夫なん!?
そんな僕の心配をよそに、ステゾーは言い終えると、一瞬で表情を崩し、ガハハと笑った。
「ま、そんなハンデもナンジャラホイ、といえるような英雄がここから出てくれば別だがな?」
試すようなステゾーの問いに、モノノベ衆の反応は?
ん? いや~、うまいんだ。人を乗せるのが。もう、みんな、目の輝きが一瞬で変わっちゃってる!
すると、今度は苦笑いして首を手でさすりながら、セイジがステゾーに声をかけた。
「まあ、そう脅すなよ、ステゾー。あんな、ここでタケシたちにも伝えておきたいんだが、勝算がないわけじゃねえんだよ」
セイジは、黒板のステラブリーズ号の胴体あたりを指さした。
「なぜ、俺たちが、わざわざDeck4を侵入口に選んだか……分かるか? 実はな、このDeck4は、普段はウェルカムスペースだ。国によっちゃあ、船を降りずに出入国手続きをする場所にも使われてる。だから一見、だだっ広いホールのように見えるが、この部屋の奥は、手荷物検査場や検疫エリアを確保するため、うなぎの寝床みたいに壁で仕切られた構造になってる。つまり、だ。アイツラが一度に攻撃したくても、せいぜい、前方には五十体くらいしか押し寄せてこれねぇ。後ろは乗降階段だけ。回り込まれる心配もない。俺たちは、包囲されず、前方の敵だけを叩き続けりゃいい、ってこと」
なるほど!よく考えてる!
「な? これで心配も少しは減ったろ? 五分後にお前ら決死隊が、後部のメンテナンス階段から船内に侵入する頃にゃ、こっちの闘いは、ちょうど山場だ。セキュリティアラートにさえ引っかからなきゃ、船の構造上、医療エリアまでは一直線で行ける。――時間は、稼ぐ。だから、お前らは、ただ、落ち着いて行動すりゃあいい」
セイジの発言で、僕らの心配も少しは吹っ切れた。が?
「よしっ! ここで全体集会は一度やめて、休憩後にモノノベ衆、そして決死隊に分かれて役割分担などを固めてくれ。決死隊のアドバイザーにはセイジが付く」
ステゾーが皆を立たせようと、改めて口を開いた瞬間。
ギギギギギ、と大きく椅子をずらす音が響き、振り向くと、ニッキが、そびえるような体をゆっくりと起こしながら、右手をぐっ、と天井に突き出した。
「聞かしてくれねぇか?」
「ん? 何だ」
怪訝な顔をしてステゾーが振り向いた。
「だいたい、作戦の内容は分かった。まぁ、俺は心配や不安よりも、人生で始めて実戦で俺の力を百パー発揮できるってんで、楽しみしかないんだが? けどな?俺ら『決死隊』って呼ばれてっけど、このネーミングだけは勘弁してくんねーか? なんだか、モチベーション上がんなくてよ? それに、この作戦自体、なんか、こう、ビシッとした名前つけれねーのかなぁ?」
ニッキの発言に、ステゾーはムッ、として黙り込んだ。
すると、意外なことに間髪入れず、ワタルが手を挙げた!
「僕にいいアイデアがあるっ!」
教室にいた皆んなが、ビックリしてワタルに注目した。
「僕たちはっ、僕たちには今は、何も、ないっ!」
ワタルは断固たる態度で言い切った。
「ゼロ、だ!
だけど、僕らが瀬神町の未来を、ここから切り開くんだ!
僕らの未来はここからはじまるんだ!
だから…」
言い終えると、ワタルはスタスタと教壇に上がり、チョークの音をキイキイ言わせながら、少し右肩あがりの字で書き殴った」
「作戦名は…、オペレーション…、
オペレーション・ゼロ、だ!」




