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【 王殺し 】王印欲しさに妖魔が人が命を狙う! 少ない護衛に守られて少年は玉座を目指す  作者: 天猫  咲良
西への旅路

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43話 妖魔との戦い

「ルークスさん!!」


 迫る妖魔との間にコンラッドが飛び込んだ。


「どけッ!」


 ルークスの体をコンラッドへ倒してロンダルが剣を振るう。


「うわあッ」


 コンラッドはのし掛かるルークスともども地面に転がった。


  ガキッ シャーッ!


 妖魔の爪と剣がこすれて火花を散らす。

 弾いた力を受けて舞い上がった妖魔が再び襲いかかった。舞い上がっては手足の爪を繰り出す。そんな妖魔の攻撃をロンダルは次々とかわした。


 妖魔は体を捻ったかと思えば空中で前転し、襲い来る爪の動線がくるくると変わる。その動きにロンダルは俊敏に対応している。


 コンラッドはロンダルの動きの邪魔にならないようにルークスを引きずった。この場から少しでも遠ざけたい。離れた場所で横たえてあげたい。コンラッドはただそう思っていた。




 ルゥイの剣が妖魔の爪を弾く。弾いた衝撃でぶれたルゥイの腕を妖魔が蹴りあげた。


「あっ!」


 蹴り上げられた反動でルゥイの剣が手から離れた。


(やられる!!)


 思わず目をつむるルゥイ。もう駄目かと思った次の瞬間、妖魔の金切り声が耳を叩いた。


「ラウルッ」


 彼の大きな背が目の前にあった。

 ルゥイの前にラウルがいたのはほんのわずか。ルゥイがほっとした直後にはラウルは走り出していた。


 皮膜の端から血を滴らせた妖魔がラウルに追いすがる。


「ルゥイ!」


 地面に落ちている剣を足で跳ね上げて、ラウルがルゥイへ剣を放り投げた。そして彼は即座に妖魔を迎え撃つ。

 ルゥイも剣を握り直して参戦していった。




 空中から襲う敵に対応して皆の目線が上に向いている。

 空を舞う敵に集中して足元がおろそかになっていた。その隙を突いて2体の妖魔が地面を駆けた。


「・・・・・・あっ!」


 地表をこちらへ向かってくる敵に気づいてランシャルの口から声が漏れる。震える剣を両手でにぎってランシャルは剣先を妖魔へ向けた。

 ウルブの剣は光っている。

 けれど、その存在を知ったいま妖魔たちは驚きはしない。


 ぎりぎりと歯を食いしばって妖魔が駆けてくる。

 戦う騎士たちの足の間からランシャルはその姿を見ていた。地面を駆けて近づく妖魔を。焚き火の明かりを遮って動く騎士たちの足、その向こうから白い妖魔の顔が迫ってくる。

 ランシャルを見据えるその目が「狙っているのはお前だ」と言っている。


 騎士たちの隙間を潜って妖魔が迫る。


「ううあぁ!!!」


 声をあげるランシャルの手から妖魔の爪が剣を奪った。

 飛ばされた剣は空中を回転し、そのままコンラッドの頭上を通過して木に当たり草むらへと落ちた。


「あぁ!!」


 飛ばされた剣の行方を追った目が妖魔からそれる。

 目の端に光る爪が写り込む。ぞっとする間もなくその光りは消えた。


  ギィインッ!!


 鈍くこすれる剣の音が間近で耳を貫いた。


(シリウスさん!)


 ランシャルに背を向けて立つシリウスがもう1体の妖魔の先手を打つ。駆けてきた妖魔たちはあっという間に撃退されて空へ飛び上がった。


 ランシャルの両脇をシリウスとラウルが固める。そこへダリルが加わった。


「動けるか?」

「大丈夫です」


 ダリルの肩の傷を見てシリウスが声をかけた。


「剣を振るう腕は無傷ですから」


 ダリルのこめかみを汗が伝う。

 動いて出る汗とは違うものだと思いながら、シリウスは剣の動きを止めはしなかった。




 腕を切られ羽を半分失った妖魔は、血を滴らせながらも高い枝の上へ体をあずけた。


「くそっ、やられた」


 白い顔を青白くして妖魔が苦々しく漏らす。その声にふんと鼻を鳴らして先にそこに来ていた妖魔が言った。


「先の人間どもが騎士の数を減らしてたら楽だったのに、なぁ」


 高みの見物を決め込んでいないであの時参戦しておけばよかった。そう思って妖魔は唇を噛む。

 枝に座り込む妖魔の傷口は乾きはじめていた。


「羽が生えるにはまだ間があるな」

「しばらくは観戦しておくよ」

「さっさと生やして降りてこいよ」

「次は油断しない」

「そうしろ」


 言って枝から滑り降りていく。

 羽を広げて旋回すると隙を見つけて突っ込んだ。




 ルークスを木の影に横たえたコンラッドは騎士たちに目をやった。

 妖魔たちは休みなく騎士たちを襲っている。それはまるで魚の群れに突っ込む海鳥のようだった。


「ルークスさん、ここにいて」


 側を離れようとするコンラッドの手をルークスが握る。声も出せず首だけを横に振るルークス。その手をコンラッドは剥がした。


「大丈夫、待ってて」


 そう言ってコンラッドは走り出した。

 ウルブの剣が飛んで行った木を目指して。




 妖魔は剣の届くぎりぎりを狙って攻め込む。そうかと思えば連なって波状攻撃を仕掛ける。


 上からの攻撃に集中すればがら空きとなった足元を狙われる。

 妖魔は飛び回り舞い上がっては突っ込んでくる。

 平面的ではない敵の動きに手を焼き、間を詰められないもどかしさに苛立ちが生まれる。


 せめて攻撃をかわすだけでも、と目を走らせるランシャルへ声がかかった。


「ラン!」


 コンラッドの声と共にウルブの剣がランシャルの手に戻った。


 斜めの軌道を描いて妖魔が弧を描く。

 皮膜が風をはらむ音がする。

 爪が深く切り込んで騎士に傷をつけようと閃く。


 戦う騎士たちの中央で守られて、ランシャルはウルブの剣を握りしめていた。


「くッ!」


 ラウルの腕に傷がひとつ。

 傷をつけた敵を逃すかとラウルの剣が走る。


「ギャアッ!」


 くるぶしの部分で片足を切り落とされて妖魔が悲鳴を上げた。

 一進一退。

 ランシャルを囲む騎士の輪が膨らんでは縮む。妖魔に誘われるように騎士たちの輪が膨らんだその時、


「はっ!」


 真上からランシャルをめがけて1体の妖魔が落ちてきた。

 滴が落ちるようにまっすぐに落ちてくる。


「うわあぁぁ!!」


 ランシャルは渾身の力を込めて剣を振り上げた。その剣先を妖魔は上手くかわした。

 天を指すような上向きの剣の横を妖魔はするりと駆け下りて来た。


 そして、


「・・・・・・!!」


 妖魔の両手がランシャルの両肩をがっちりと掴む。


「ああああ────ッ!!!!!」


 見下ろす瞳に写るランシャルがランシャルを見ていた。





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