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クソヒロインの息子を育てる事になった女王の受難  作者:
お前はもう詰んでいる<後日談>
23/24

その先は地獄だぞ

 イブはゲーム未プレイだ。


 各ルートどころか、登場キャラクターはアクエリアスしか知らない。

 タイトルすらうろ覚えな状態でゲームの知識は殆どない。


「実の息子が攻略対象になるヤバいゲームがある」と小耳に挟んで、wikiで気になる部分をさらっただけなのだ。


 先ほど口をついて出た『スポドリピンク』は、その問題となったゲームから生まれたネット用語だ。


 ヒロインの息子・アクエリアスは、色彩や髪質などヒロインの男バージョン状態で描かれている。

 配色や顔立ちを変えてしまうと、父親を限定してしまうからだというのはわかる。


 次に名前だがこのゲームのキャラクター名は、黄道十二星座が由来だ。アクエリアスは水瓶座なのだが、日本人にとってその響きはスポーツドリンクとして浸透し過ぎていた。


 幼い頃からユニコーンと仲良しで「お前がヒロインじゃね?」な外見の攻略対象、しかも名前が出るたびにスポーツドリンクが脳裏にチラつく。ゲームをプレイした者ほど痛感した、これ失敗作だと。


 『スポドリピンク』とは登場キャラクターとしてのアクエリアスを指すと同時に、それなりに根拠があり、ちゃんと考えて作ったにも関わらず微妙な仕上がりになった時に使用する言葉だ。


(αが正統派の乙女ゲーで特に捻りがなくて、βがイロモノ。別名ヤベータ)


 αは興味がなかったので、メインストーリーどころか登場キャラクターすら調べていない。

 ストロベリーブロンドの男爵令嬢が、エリザベートからアリエス(牡羊座)王子を奪った事は記憶を取り戻す前から知っていたので、彼女がαヒロインだと判断した。


 ヒロインがαで誰かと結婚した後に解放されるのがβ。

 正確には、結ばれた相手との子供を出産後、ヒロインが不慮の事故で命を落とすところから始まる。

 この時点でかなり香ばしい。


 ヒロインの死から十数年後。聖域に入り込んでしまった少女が、偶然儀式を発動させてしまいヒロインが少女に憑依してしまう。

 これがプレイヤーが操作する新たな主人公(ヒロイン)だ。


 成長した息子・アクエリアスはかねてから少女に恋をしており、彼女の体を乗っ取ったヒロインを母親とは露知らず攻撃的な態度を取る。当たり前だ、どうみても悪霊だもの。


 ヒロインを成仏させ、少女を取り戻すために二人が聖域の謎を解くのがβのメインルートだ。


 これだけ聞くと普通の少女小説なのだが、乙女ゲーなので恋愛要素が入る。


 故意ではないとはいえ、少女の体を奪った憎い相手なのに一緒に過ごすにつれヒロインに惹かれていくアクエリアス。


 母親だと言い出せず、それでも成長した我が子と一緒に過ごす幸せを感じていたのに、彼にときめいてしまうヒロイン。

 この気持ちは体の持ち主の影響なのか、自分の魂が彼を異性として見ているのか……


「親子だけど肉体は血が繋がってないから、近親相姦にはならない」というのが製作陣の主張だ。


 イブが知っている、このゲーム由来のネット用語は『ヤベータ』と『スポドリピンク』だけだ。

 ヤベータは「一応配慮したけど、本質ヤバいまま」な状況を指すときに使用する。


(確かハッピーエンドが憑依したまま両思い。バッドエンドが儀式が解除されて、ヒロインは成仏して息子も彼女と過ごした記憶を失うんだっけ。『ハッピーとバッド逆じゃない?』ってツッコんだ覚えがある)


 他のエンドや、ルートは記憶にない。

 ネタ元を確認したかっただけなので、独断と偏見に満ち溢れたwikiの一部分しか読んでいなかったのが悔やまれる。


(もうちょっと知ってる作品だったら、どうにかなったかもしれないのに!)


 しかしこれはチャンスだ。

 失言とは言え、あの時エリザベートの関心を引かなければ、イブは終生あの屋敷に閉じ込められただろう。


(お姉様の反応から、ヒロインが死んでいるのは確定)


 馬車に乗り込むまでの僅かな時間だけでも、アクエリアスがエリザベートに好意を抱いているのは明白だった。


(もしかしてお姉様が新ヒロインの体の持ち主? でも憑依されているようには見えなかった)


 淑女の鑑と称されていた頃に比べると豹変しているが、憑依という感じではない。

 何よりヒロインが入っているのであれば、もっと男ウケする性格のはずだ。


(まだ儀式前? いやでも、成長するとか若返るとか、そんなファンタジーな展開儀式くらいしか思いつかないんだけど、私が知らないだけで他に何かあるの?)


 使えるカードは無いに等しいが、上手くやれば自由――は難しいかもしれないが、外の世界で生活できるかもしれない。


(お肉! 卵! スイーツ! あったかいご飯!)


 先日食べたキャラメルは美味しかった。唾液腺が刺激されて頬がすごく痛くなった。

 前世でコンビニスイーツ食べて「うーん。六十点」とか言っていた自分を殴りたくなった。

 半熟じゃない茹で卵に不満を抱いていた自分を蹴飛ばしたい。


(大丈夫。記憶を取り戻したくらいだもの、きっと主人公補正的な土壇場の閃きと運の良さでなんとかなる!)


 ざまぁの数年後に記憶を取り戻している時点で、イブの運命力は底辺なのだがそのことからは目を逸らした。

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