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08 レッツシャッフル!

「お金がありません」


 唐突にそう言い出したのは珍しくエプロンを着たモモエル。


「いつものことでしょ」


 そう返すと、スカンジナビアさんもロゼッタも黙って頷き、厨房の余り物をつつく。僕はバカ天使にファイア鳥のむね肉を取られたので拗ねている。


「違うわ。そんなレベルじゃないの。これを見て」


 バカエルが差し出したのは通帳。そこにはマイナスを示す記号の後にたくさんの数字が並んでいた。


 通帳にマイナスって……。


「お金がありません」


 そう繰り返すモモエル。


「一体なぜこんなことが……ああ、主よ」


 ロゼッタは手を組んで神に祈り、スカンジナビアさんはご飯を食べながらため息をつく。


「絶対に当たる暗号資産って言われたのよ」

「ほう、聞こうか」

「むつかしいことは分かんないから、手続きとか全部やってくれるってその人が言って」

「ああ、それで?」

「お金渡して、期日には三倍だって言われたから待っていたのよ」

「うんうん、それで?」

「連絡が、つかない!」

「テメーは本当に愚かですね」


 僕はモモエルのおでこにフォークをサクッと刺す。


「イテーッ! あんた天使にこんなことしてタダで済むと思ってんの!?」

「人様の金を怪しいヤツに預けてタダで済むと思ってんの?????」

「あい、しゅみましぇん」


 ボカスカ僕とモモエルが殴り合いをしていると、スカンジナビアがそっと手を挙げた。


「はい、スカンジナビアさんどうぞ」


 ロゼッタが指名すると、彼はスッと立って咳払い。


「もうやめにしないか」


 え、辞めちゃうの? 泣いちゃう。


「そこのアホ天使はあまりに馬鹿すぎる」

「うびゃあ」

「パートナーであるカンタも、手綱を握れていない」

「うぬぬ……」

「そこで、パートナーシャッフルを提案する」

「パートナーシャッフル???」

「パートナーシャッフル???」


 このアホとパートナーになった覚えはないがまあ聞こう。


「今、目下の課題は如何に第五層まで辿り着くかだ。俺単独ならなんの問題もなく行けるが、このデバフシスターはちょうどいい試練になる。訓練目当てでたまにダンジョン探索に付き合って貰っていた」


 はえー、そんなことしてたんか。


「そして南京玉すだれを作るしか能のないカンタとアホなことしか出来ない天使のコンビは主に資金繰りをしていたが、それも上手く機能していない」

「あたし下げられ過ぎじゃない!?」

「妥当だろ」

「妥当ですね」


 天使が死んだ音がしたがまあほっとこう。


「上手くいかないのなら、チェンジするまでだ。まずはアホ天使と俺が五層を目指す。ロゼッタとカンタで資金繰りだ」

「あっ、なんか提案されただけでそっちのが上手く行きそうな気がする」

「良いわね! そのDVニート童貞と組むのも疲れてきた頃よ!」


 言い過ぎだろ。


「ま、せいぜいスカンジナビアさんに迷惑かけんなよアホ天使」


 バチバチと僕とモモエルの間に火花が散る。


「じゃあ解散。ひとまず、一日試してみて、夜にまた判断しよう」


 モモエルと僕はぷいっとそっぽを向いた。ロゼッタは静かにパンをもっくもっくと食べている。


「……」


         ***


「さてロゼッタさん。今日の南京玉すだれのノルマは──」

「あのっ」

「ん?」

「本当に良かったんでしょうか。おふたりは本当は仲がいいのに、少しの思い違いですれ違ってしまって……」


 僕はドンッとロゼッタに壁ドンする。


「ひゃうっ」

「あの手羽先と仲がいいってェ??」

「なんれもないれしゅ……」


 仲が良いわけない。あいつは脳みそにスイカが詰まってるアホだ。すぐに人の貯金使うし。


 だから、あいつ抜きで完璧に仕事をこなしてやるぜ!


         ***


「言い出したのは俺だが、本当に良かったのか? カンタとはマブなのだろう?」

「ぺっぺっ。んなわけないでしょ。ドーテーよドーテー」

「それを言ったら天使だって主との契約で──」

「うるせーですわよ!?」


 ダンジョン五層までの道のりを歩むあたしとスカンジナビア。


 現在第四層。むっっっちゃスムーズなんですけど。


 前回第三層で死にかけたのに!


「スカンジナビアあんたってすごいのね……」

「デバフがいなければこんなものか」


 シスターのことついにデバフ呼ばわりし始めたわ。まあ、あの子平気でビッグドクマムシのこと撫でたりするから……。


「マブ云々は置いといて、別にいいのよ。あたしは夢が叶えばそれでいい。相手が誰であろうとね」


 スカンジナビアはスモールドクマムシの群れを切りとばしながら呟く


「それが本心ならば、俺もそれで構わんのだがな」


 本心──か。


 そんなの、本当に分かってるやつなんているの?


 分かんないから損得で動くんじゃない。


 だからこれでいいのよ。今はとりあえず頑張らないと!


 あの偏屈カンタを、特大の成果で黙らせて見せるわ!!!

「ちょっと面白そう」と思っていただけましたら……!


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― 新着の感想 ―
[一言] うわぁ、そいつぁ怪しさがプンプンする詐欺っすわぁ(;'∀') でもってシャッフル……まぁたまにはねぇ。 こういうのもええよなぁ(;'∀')
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