閉話20 ルミラとバクダッドの危機感
本日2回目の投稿です。お読みいただければ幸いです。
ルミラ王とバクダット王が秘密裏に会合を開いていた。この二つの国は犬猿の仲で、年中衝突していたから、両国の王が直接会談を行うのは、建国以来初めてのことだった。
「偽預言者の件は知っているな」「当然だ。預言者の子孫であるカリフの称号はわしの物だというのに、預言者を名乗り、民を惑わすものが出たとは許しがたい」
「おい、カリフの地位はわしの物だと言っておるだろうが」
「何を言う、預言者の正当な子孫はわしだ」「いいや、わしだ」「この背教者め」「なんだと、神を恐れぬ不届き者め」
「お二人ともおやめください」この地域のイム教の総指導者であるアルハム・トリム総主教が二人の争いを止めた。彼は、カリフ派を信仰する地域であるバクダット、ルミラ、パラスの三国にまたがり、イム教の総指導者としてカリフ派を統括していた。そのため、二人の王もこの男には強く出ることはできなかった。
「状況はかなり危機的になっています。パラスの民とイム教の指導者たちは偽預言者に心酔し、我々の正しき教えの導きから離れようとしています。偽預言者として民たちに広めるよう指導しても、これに反発し、逆に預言者として認めるよう強く要求してきます。破門を言っても、我々は真の預言者に仕えるのみ、背教者はあなたたちだと言って、反発してまいりました。東にいる砂漠の民もすでに偽預言者に騙され、完全に支配下に置かれています」そう言って、少し興奮したように続けた。
「それだけではありません。バクダット、ルミラの民や一部イム教の指導者も偽預言者を認めるような言動を始めています。私がパラスに送り、パラスの民を正しい道に戻そうと送った熱心なイム教指導者がことごとく寝返りました。なんと、奇跡を見たというのです。預言者様と同じく、天に上ったというのです。それを見て、全員がこの方は預言者だと確信したそうです」
「偽預言者の信仰が広まったら、我々が支配者としてこの地を治める根拠が消滅してしまう」バクダットの王がうめいた。
「東のメシア派はどうしている」
「メシア派はしばらく傍観の構えです。奴らの教義では預言者様はただお一人、世襲は認めないという考えで、預言者様はいずれ復活すると信じられています。かの偽預言者が復活した預言者様なのか、様子を見ているようです」トリム大主教は苦々しげに言った。
ルミラ王が言った。「イム教のことも問題だが、東方貿易がローマに支配されたことで、我々の国の交易は壊滅的な打撃を受けている。すでに多くのイム教商人たちは破産寸前だ」
「国の根幹をなしている交易が壊滅したら、国が亡びるぞ」バクダットの王は頭を抱えてうめいた。
「偽預言者がこれ以上はびこったら、イム教のこれまでの秩序が破壊されます。私たちのイム教徒に対する指導力も消えてなくなるでしょう」トリム総主教は嘆いた。
「我々がすべきことは、偽預言者を引きずり落とし、ローマの東方貿易をやめさせることだ」
「どうすればいい?」
「ジハードを宣言し、スエズ運河を破壊します。そして、偽預言者を殺します」
「ジハードか!」王たちは叫んだ。
ジハードが宣言されると、すべてのイム教徒は戦争に参加し、神の敵を滅ぼす戦いに参加しなくてはならなくなる。ただ、メシア派とカリフ派は長年いがみ合っており、カリフ派がジハードを宣言しても、おそらくメシア派は従わないだろう。
しかしカリフ派がこの宣言に従えば、少なくともパラスの民はジハードの名の下、ローマとの戦いに決起するだろう。
そうすればスエズ運河を破壊し、パラスの地をフーシの支配から解き放つことができるはずだ、と3人は考えた。
2人の王は解放されたパラスの領土について、どう分割するか、話を始めた。もう勝ったかのように、喧々囂々とお互いの要求をぶつけ合った。総主教は少しあきれたように、まあ、仕方がないかと思いながらその姿を見ていた。
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