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閉話19 ミーアの回想

40000pv達成記念で、閉話を一話追加投稿させていただきます。お読みいただければありがたいです。

 私とロンが会ったのは、実家の宿屋兼酒場の看板娘として働いていた時だった。

 宿屋の立地が半分スラム街にかかったような場所だったし、建物もぼろかったこともあり、とても流行っているとは言えない宿だった。


 部屋も常時半分ぐらい空いていて、下宿屋でも兼業しようかと下宿人を探すこととなった。しかし、雨漏りするぼろ屋に住もうなんて奇特な奴は全然いなかった。


 私が、13歳の時、一人の少年がやってきて、下宿させてほしいと言ってきた。

 東の辺境から来たらしく、下級官吏になるための文官養成学校の試験を受けに来たらしい。

 バルバドスでは、貴族の位を持っていれば無試験で官僚になれ、さらに最初から中級官吏として登用される。

 だから下級官吏になるのは、貴族の次男三男か、妾の子が多かった。でも貴族の次男三男ならば無試験で登用されるから、文官養成学校に通うのは妾の子、それも認知されていない者か、平民の子供ぐらい。

 更に下級官吏は、何かで上級貴族とコネがあり、引きがなければ一生そのまま。給料も安いからアルバイトしなければやっていけないのが普通だった。

 はっきり言って少し頭が回る奴ならなる仕事じゃないってことだ。


 初めて見た時、陰のある奴だなあと思った。表情は暗いし、服装も丈夫そうだが野暮ったい服を着ていて、妹のコリンなんか「なんか陰気なやつね。あんなのうちに置くの?」と言って嫌っていた。

 「仕方ないでしょう。金さえ払ってくれれば、客なんだから」と私は言い返した。

 「あーあ、やだやだ、なんか成り上るすべはないかしら」コリンがつぶやいた。

 確かにその通り。こんなぼろ宿屋でやな客に愛想を振りまかなくちゃならないのは、本当に気が滅入るときもある。でも、うちらみたいな、下層平民が成り上る機会なんてあるはずがない。

私も13歳になって、ぽちぽちと縁談の話が持ち込まれるようになったが、まあ、大体似たような身分の者ばかり。それに私だって、まだ13歳、恋の一つもしてみたいじゃないか。

 父も母も鷹揚で、結婚なんて焦る必要はないだろうと言ってくれたので、その言葉に甘えることにした。まあ、結婚すると家の労働力がいなくなるという現実的な問題もあったのだと思うけど。


 さて、少年の名前はロバートと言って、12歳だそうだ。

 両親と面接し、まあ悪い奴じゃなさそうだということで、家の宿屋に下宿することとなった。

 ロバートは無事、文官養成学校の入学試験に受かって、役所の下働きをしながら勉強することとなった。

 あと、商店で書記の仕事も見つけてきて、王都での生活も安定したようだった。


 コリンが毛嫌いしていたせいで、ロバートとの対応は私の仕事になった。

 話してみると、結構いい奴だった。腕っぷしは弱く、ひょろっとしたもやしのような外見だったが、頭は良く、役所や商店で仕事をしながらいろいろ学んでいるようだった。

 休みの日には、宿の帳簿付けを手伝ってもらって、学がない両親はとても感謝していた。


 私はいつしかロバートに引かれるようになっていった。

 ロバートが15歳になり、正式に下級官吏として役所に採用された。

 アルバイト先の商店でも、その仕事ぶりも認められて、そっちの方も臨時アルバイトから年間雇用となり、給与も上がった。

 ロバートとはすっかり親しくなり、ロン、ミーアと呼び合う仲になった。

 

 いつしか私の中でロンの存在は、欠くことの出来ないものになっていた。

 こいつと一緒になりたいなと漠然とだが思うようになっていた。だが、私は口と手は早いのだが、恋愛ごとには奥手でもう一歩が踏み出せず、恋人にはなっていなかった。

 ロンの方も遠慮があるのか、なかなか踏み込んでこなかった。


 私が17歳、ロンが16歳の時、私に縁談が来た。中堅クラスの商店の息子で、下層民の私にとっては、望外な良い縁談だった。

 私は悩んだよ。それで決断した。


 その夜、私はロンの部屋に行き、襲い掛かり、契った。

 翌朝、ロンの手をつかんで、両親の元へ連れて行き、ロンと契ったことと、ロンと結婚することを報告した。

 両親は唖然としていた。しばらくして、まあ仕方ないかとあたしらの結婚を認めてくれた。

 とりあえず、簡単でも結婚式をしようという話になり、ロンとあたしが1年間金をためて、簡単な式を挙げようということになった。

 しばらくは恋人同士というわけだ。

 コリンは「あんな奴が義兄になるなんて、考えられない。姉さん趣味悪すぎ」と言ってきたので、ケンカになった。

 ケンカの結果、あたしが勝利し、コリンはこの件について何も言わなくなった。

 ガキの頃は、このあたりを暴れまわった赤毛のミーア様にかなうはずがないだろう。


 そんな感じで、まあ幸せな恋人生活をしていたんだ。いずれは、二人でこの宿を継いで、ロンは下級官吏をしながら帳簿付けや書類作成を担当し、接客や宿の管理は私が行い、宿を今より大きくしたいなと二人で将来のことを話したよ。あの時までは。

 いきなりだよ。ロンが戦場に引っ張られたのは。それも書記とか事務の仕事ではなく、兵を指揮する隊長だって聞いて、驚愕したよ。だって、ロンは頭は良いけど、武ばったことは大の苦手で、剣ひとつまともに振れやしない。そのまま戦場に連れて行けば、生きては帰れないことは明白だ。

 私はロンに泣いてすがったよ。

 ロンが言うには、ロンは男爵の妾の子らしく、認知もされていなかったが、その男爵も跡継ぎの長男、次男までも戦死したため、男の子がいなくなり、代わりに戦場に送られることになったとのことだ。

 話が終わると、ロンは両腕を兵士に捕まれて、馬車に乗せられ、戦場に運ばれていった。

 あたしはとにかく泣いたよ。こんなことってあるかよ。奴らはわずかな幸せさえ奪っていくのかよ、と恨んだ。


 旦那を取られて、とても悲しかったが、あたしたち下層民は食っていくためには、働かなくちゃならない。

 あたしは一心不乱に働いたよ。休むと変な考えが浮かんでくるからだ。

 客たちの噂だと、かなりひどい戦場で、兵士のはとんどが戦死して、現状まともな兵力もなく、寄せ集めの時間稼ぎのための捨て駒が集められて、敵に充てられたとのことだ。

 さらに客たちはあそこに送られたら、生きて帰れないだろうと噂していた。


 そんな時だよ。コリンに伯爵邸に仕える話が出たのが。まあ、はた目で見てもコリンはきれいで、スタイルもよく、結構いいところから縁談が来ていた。

 父親の知り合いが、伯爵邸で下級メイドが結婚などで退職したので、補充を探しているという話を持ってきて、コリンにどうかと言ってきたんだ。

 コリンは大乗り気で、面接に行ったところ、無事採用が決まったんだ。

 両親は喜んだが、コリンは何を勘違いしたのか、私の美貌で伯爵を篭絡し、側室になるんだ。そうしたらこの家と縁を切るからと言いだした。


 私はあきれて、なんかの物語りの読みすぎだ、平民の娘が王子や上級貴族に見初められて、側室になるなんて、そんなこと現実にあるはずないだろう、といったが、聞く耳を持たず、姉さんはあんな男に引っかかってババを引いたけど、私は成功するんだ、うらやましくてそんなこと言っているんでしょ、と言って私を馬鹿にしていた。


 何を言っても無駄と思い、そのまま放置することとなった。両親もそうすることにした。

 まあ、家の仕事はするし、家族や常連客に自慢するぐらいなら実害もないので、いうだけ言わせとけばいいかと思ったよ。

 まあ、ロンのことを悪く言ったことについてのお仕置きはしておいたが。


 そんな時だよ、ひょっこりロンが帰ってきたのは。もう泣いて喜んだよ。

 そん時に連れの男を紹介されたんだ。名前はバードと言い、金髪で肌の色の白い男だった。一見普通の男に見えるけど、眼光は鋭く、気配も普通ではなかった。スラムの親分クラスの迫力があったね。


 ロンの話だと、戦場で実際に戦ったのはバードで、隣国の大軍を見事に撃退したそうだ。冒険者っていうけど、いったい何者なのかね。まあ、なんにしてもバードのおかげで、ロンが生きて私の元に戻ってきた。

 うれしくてうれしくて、毎晩ロンのもとに行って、恋人活動をしたよ。一週間連続で一晩中は少々やりすぎたかとも思ったけど、まあ、仕方ないよね。

 コリンが伯爵邸に奉公に行き、しばらくたつと、ロンとバードが王宮に呼ばれた。すると、二人とも貴族になったと言われた。ロンが子爵、バードが男爵だそうだ。

 貴族の位なんか、普段縁がないからよくわからない。伯爵よりは下だということなので、まあ大したことないのだろう。


 それよりショックだったのは、ロンにジェーンという婚約者がいて、結婚式を挙げていたということだ。

 一瞬頭が真っ白になったが、そのあとメラメラと怒りがわいてきた。私の男を取ろうなんぞただじゃ置かない、勝負してやると闘志を燃やしたね。

 バードの魔法で、そのジェーンとあった。まあ、話をしてみると悪い奴ではなかった。ただ、バードに関する気持ちは本物だった。二人で話し合った結果、ロンが貴族になったので、二人とも妻にできるらしい。一応正妻はジェーンが、正妻格としてあたしがなるということで話がまとまった。

 なんで正妻の地位を譲ったかって?まあ、あっちの方が先に唾をつけてたんだし、そのくらいは譲ってもいいかと思ったんだよ。何にしろ、ロンの妻に成れたんだ。いいとしようじゃないか。


 まあ、そのあとは、ロンもバードも戦場を飛び回り、いつの間にか、ロンは辺境伯から公王、国王と、そして皇帝へと上り詰めていった。あたし、いや私も正妃格の地位を得て、ついにはローマ連邦皇帝第二正妃となっていた。

 下層の平民の娘が、西方社会を統べる皇帝の正妃だって。

 むかし、コリンに言ったあり得ないことが私の身に現実になったわけですよ。

 まあ、ジェーンさんもその妹でバードに嫁いだミリアも似たようなものだけど、あっちは村長の娘だからね。私の方が下だよね。


 ロンもいるし、子どもも生まれた。実家もロンのおかげですごいホテルに建て直していて、父も町の名士になったって、手紙に書いてあったわ。

 コリンはミリアの子の専属メイドになって頑張っているらしい。専属メイドは、結構そのまま側室になることが多いって聞いたことがあるわ。ミリアの子は将来グランド王国の国王になるのだから、もしかしたらコリンは王の側室になるかもしれないわね。

 伯爵の側室を狙っていたあの子が、王の側室だって。

 本当に人の運命って分からないわよね。


 この話を聞いた図書館のローザは、早速ミーアに取材を申し込んで、ミリアと同様に本にしたところ、これまたベストセラーになった。


 ミーアは本を読んでとても照れていたが、なんか気に入ったらしく、何回も読み返していた。


 後世、身分を隠した貴人と婚姻して、出世するパターンをミリア・ストーリーと言い、出世する優秀な男を捕まえて、一緒に成り上るパターンをミーア・ストーリーというようになった。


本当に読者の皆様には感謝しかありません。現在、戦国時代の武士が異世界に転生する話を書いています。6月には、投稿できる予定ですので、もしよろしければ、ご一読いただければ大変ありがたいです。

侯爵嫡男も、続編を望まれる方が多ければ、第5章書かせていただこうかと思います。ご意見いただければありがたいです。

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