第55話 拡大するローマ連邦と人々の思惑
本日2回目の投稿です。お読みいただければ幸いです。
カリオス王国が送った西方探検への調査団の一部が帰ってきました。西方に巨大な大陸らしきものを発見したとのことです。
お爺様達は、その大陸の中央部の土地を探検し、文明を持つ民と接触したそうで、すぐに戦争になったそうです。どうもその文明は生贄を常態的にささげている文明らしく、接触してきたお爺様達を生贄にしようとして、襲ってきたらしいとのこと。
当然返り討ちです。さっくりと敵の首都を落として、生贄をやめさせて、生贄を推進していた王族や神官を処理したとのことです。
そこには、莫大な黄金があり、珍しい美術品も多く、カリオス王国は一躍大金持ちになりました。お爺様達も多くの宝を手に入れたそうです。まあ、あまり関心がなさそうで、おばあ様達のもとにまるごと送ってきたそうです。
お爺様達は更に冒険の旅を続けるため、現地に残っているとのことで、おばあ様達が苦笑していました。
お爺様達は元居た住民を統治するための組織を整えるとともに、カリオス王国からの移民も進めていくようです。
ただ、カリオス王国だけでは荷が重いので、ローマ連邦の力を借りたいとのことでした。
僕はロバートと相談し、北部をロマーン、フライとジャルマン、ポートランドの範囲とし、南部をバルバドスとグランドの領域とし、各々探検隊と移民団を送ることとしました。
南と言えば、ニューランドは順調に発展しており、さらに南に南ニューランド植民地を建設、移民団を送り出しています。
南ニューランドは南方大陸の南端であり、東には大きな海があるとのことです。
「ああ、僕も冒険に行きたいな」というと、ロバートも「俺も行きたいよ。早く子供が大きくなって、跡を継いでもらえないかな」とため息交じりに言いました。
正直、僕もロバートも政治や統治に忙しくて、冒険の旅に出ることができません。
ローマ連邦の領域が広がるとともに、やるべきことや問題が大量に出るようになりました。とてもどこかに行ける状態ではありません。
でもしばらくの我慢です。お爺様達を見てください。もう、好き勝手に冒険の旅をしまくっています。手紙がたまに送られてくるのですが、「すごい木の実があり、この土地の人たちはこれをいろいろ加工して食べている。わしらも食ったがうまかった」とか「めちゃくちゃ辛い赤い木の実を見つけた。でも、食べ物に混ぜて食うと癖になる」とか「こっちの酒もなかなかいける。とげのある木から作るのだが、かなり強い。すごく気に入った」などうらやましくて、泣きそうです。
本当にこの世界には、まだまだ未知の食い物がたくさんあります。
食べ物の話ばかりだって?冒険の醍醐味は食べ物です。うまいものを食う、未知のものを見る。ほんと、冒険は心が躍ります。
「現実逃避していないで、さっさと働きなさい」キャサリン姉さんに怒られてしまいました。キャサリン姉さんはお腹が目立ってきました。
ちなみにミリアとマリアンヌも子供ができました。今は大事を取って、夜はおとなしくしています。その代わりと言っては何ですが、余余二姫が参戦してきました。
余余二姫もだいぶ成長しました。「そろそろ子どもが欲しい」と言っています。
頭の痛い問題と言えば、左真人たちの件もそうです。今の居住区はグランド王国とバルバドスの国境近くですが、人口の増加がかなりのスピードです。まだ、赤ん坊や子供ばかりですが、そのうち更に増える可能性が高いです。そうすると居住区が足りなくなる恐れがあります。
グランド人も現在人口が激増しており、南方大陸への移民が多く出ていますが、それでもまだ増え続けています。グランド族の居住地域はどんどん広がっていて、このままだと、左真人の居住区に接してしまうのも時間の問題です。
ただ、左真人とグランド族は大変仲が悪く、いまでも町で出会うと、ケンカが始まることがあります。
かといって、あまり遠くに移住させると、勝手なことをし始めかねません。今でも、左真人たちから、領域の拡大と、完全な独立を求める声があり、余余二姫が何とか抑えている状態です。
とりあえずの対策として、ロマーン人やバルバドス人の農業や技術を指導する者を左真人居住区に入れて、作物の育成指導とともに、反乱防止の監視をさせている状態です。
彼らの中には、左真人の娘と結婚する者もいて、民族融和に役立っており、すこし光が見えています。
あと、ブレイド王国の問題もあります。かの国には、国土のかなりを失いながらも独立を維持し、西方統治機構には参加していますが、独立を維持しています。
それは良いのですが、現ブレイド王は近年の大変化に対応するため、苦労に苦労を重ねたせいか、体の調子が悪く、引退を希望しているそうです。
問題は、現皇太子です。彼は失地奪回を謳い、ローマ連邦に対して、割譲した領土の返還を求めてきています。
特に海への出口を確保したいと強く希望してきていました。
我々は領土を譲る代わりに、独立を捨て我がローマ連邦に加わることと、侯爵の地位に着くことを要求しましたが、ブレイド王国はそれを拒否し、ただ、領土の返還を求めるばかりで、代償として何を差し出すかの提案はしてきません。
こちらから代償として何を差し出すか確認しても、ただ奪った領土を返せの一点張りで、話になりません。
また、気がかりなのは旧ロマーン王家の蠢動です。ロマーン王家の本家はほぼ滅びましたが、マリアンヌとエリザベス王女はいます。
また、僕やキャサリン姉さんの母親は王家の出身で、元ロマーン貴族の中には、王家の血を引くものも少なくありません。
ジェミニからの情報だと、母上たちが何か企んでいる様子なのだそうです。父にも話をして、下手なことをしないように注意してもらうようお願いしましたが、何やらあきらめていない様子です。できれば、自分の母親を処刑する事態は避けたいのです。
気がかりと言えばフーシの動きもです。フーシは東に進出すべく、東部国境に住む山岳民族を懐柔し、その東にあるイム教徒の国、パラスにいろいろちょっかいをかけているようです。皿に海賊たちを大金で雇っているそうです。具体的には、山岳民族を攻め込ませたり、海賊を使って略奪行為を行っているようです。
しかし、パラスはかなり強大で、陸では、国境に砦を築き、害敵の侵入を阻止したり、海賊たちを打ち滅ぼしたり、逆に懐柔したりして、フーシの海岸を脅かしています。
そのあおりを食って、我が国の商船も襲われており、海軍の増強を早急に求められるようになりました。ただ、船は作れますが、船乗りは簡単に育成できません。
こんな風に問題は数多くあり、細かい問題も含めると、日々頭を悩ましている状態で、とても冒険に出られる状態ではありません。
何か良い手だてはないものでしょうか。
左真人達の村にて
数人の左真人の女性たちが話をしていた。
「農作業は大変よね」
「そうね、昔の貴族だったころの暮らしが懐かしいわ」
「知ってる?南人達の羽振りの良さ、上級の爵位に任じられるものも結構いるし、大きな農場の主としてたくさんの人を使って、まるで領主の様な生活をする者もいるんですって」
「南人のくせに生意気よね。我々の奴隷だったくせに」
「食べるものに困らない生活はありがたいけど、そういう話を聞くと腹が立つわよね」
「余余二姫様が早く御子をあげてくだされば、私たちの生活もよくなるのにね」
「余余二姫様が御子を産むと何かいいことがあるの?」
「当り前じゃない。バード様はグランドの王で、ローマの重鎮よ。その御子で、次代の聖帝様にはきっともっと広い領土を与えられ、私たちも農民の暮らしから解放され、人を支配する立場に昇進するに違いないわ」
「そんなうまくいくかしら」
「すべては余余二姫様の頑張りにかかっているわ。私たち皆で余余二姫様にお願いすれば、きっと実現するわ」
「そうよね。余余二姫様は私たちを救い出した神にも等しいお方。その方ならばなんとかしてくれるわよね」
「今度余余二姫様が御戻りになられたら、皆でお願いに行きましょう」
「そうしましょう」
欲望でギラギラした目をしながら言った。
ブレイド王宮にて
「兄上、ローマ連邦を刺激することはおやめください」弟のソードは言った。
「ローマ連邦への領土要求は、かの国の怒りを買いかねません」
「わかっている」皇太子は言った。
「父王は、国土の半分近くと海への出口であった港町を失ったが、独立を守り切った。ここ数年で、西方世界の国々がいくつもが亡んでいく中、これは稀有なことだ」皇太子は言葉をつづけた。
「これは、父王の苦渋の決断をいくつも重ねた結果、勝ち得た物なのだが、しかしそれに納得できないものも数多くいる。家臣の中には、愚王と陰口を聞くものもいる」
「そんなものの言うことなど打ち捨てておけばよいのです」ソードは言った。
「父王がいる間はそれでも良い。父王は何といってもこの国に長く君臨し、民を守ってきた実績がある。しかし、私が王位を継いだら彼らは果たしておとなしくしているだろうか」
ソードは黙った。家臣たちの暴発は十分に考えられたからだ。家臣達は自分の所領を削られたものや失った者ばかりだ。さらに領土が減ったことでの中央に徴収される年貢の率も上がっており、地方領主は苦しい生活を強いられている。今、王が変われば、当然今までの不満を爆発させる可能性が高い。
「彼らをなだめるためにも、私はローマに領土の返還を要求し続ける必要がある。そうすれば、彼らの中にもしかしたらという希望が生まれ、破れかぶれで武装蜂起を起こすという最悪の事態は避けられる可能性が強い。万が一、我らがローマのために働く機会があれば、その代償として領土の一部でも回復させることができれば、それこそ家臣たちの負担を軽くできる」
「しかし、ローマの不興を買えば、元も子もなくなります」
「そこでだ、ソードよ。わが最愛の弟よ。もし、私がローマの不興を買い、ローマ軍が我が国に進攻しようという事態になったら、私を殺せ。そしてその首をもって、お前が王となり、恭順を誓え。一緒に反乱分子を処理すれば、家臣たちも一時的だがおとなしくなるだろう」
「兄上、そんな…」
「お前には、兄殺し、売国奴など汚名が付くだろう。しかし、ブレイド王家の血は残る。お前につらい役目を押し付けるが、やってくれるか」
ソードは涙を流しながら言った。「わかりました。兄上の意思、私がかならず達成いたします」
「頼むぞ、ソード」皇太子は微笑みながら言った。
ローマ連邦ローマ王宮にて
三人の女性がお茶を飲んでいた。「マリアンヌ、お腹の子の様子はいかがですか」
「はい、とても順調です。お義母様と叔母様」マリアンヌは答えた。
マリアンヌと一緒にいるのはバースとキャサリンの母親だった。
「あなたの子は我々ロマーン王家の正当な血をひくものにとって希望の星です。その子はロマーン王家の血を最も強くひく子供です。ロマーン王家再興のため、その子を丈夫に育てるのです」
「はい、でも私はバースの妻ですし、アントとフライの血を引くものは王にはなれないのでないですか」
「状況は変わります。現皇帝のロバート・スカイは所詮成り上り者。星の巡りで皇帝になりましたが、永久にその血が続くわけではありません。今は何もできませんが、ロマーン王家の血を守り続けるのです。いずれ、ロマーン王家再興の機会もありましょう。いいですね、マリアンヌ」
「わかりました。バースとの間にたくさん子供を作ります。できれば、妹のエリザベスも戻していただいて、血を継ぐ者を多く作るべきではないでしょうか」
「そうね。夫たちにも相談してみます」
三人の女たちは微笑んだ。
フーシ王宮にて
フーシ王イエローは苦悩していた。ローマ連邦ができ、その力が日々大きくなっていく中で、フーシの独立を維持するためにも国力の増強が必要不可欠と考えた。
北と西は、ローマ連邦に抑えられている。南は、ほぼローマ連邦の勢力圏となっていて、砂漠の民はローマに従っている。
ケメトはローマと我が国が影響力を持っているが、ローマの影響力の方が強く、我が国は押され気味である。
ならばと、東にあるパラスに進出し、さらに東方にあるガンダーラとの交易を独占することで、力を強めることにした。
ガンダーラからは多様な産物や鉱物、そして貴重な香料や調味料がもたらされており、その需要はかなり高いが、ガンダーラの西にあるイム教諸国の商人にその商品の取り扱いを独占され、我々が直接交易するすべがなかった。
パラスを支配下におさめれば、ガンダーラとの直接交易も可能となる。そう思い、シルクの東にいる山岳民族を懐柔し、海賊たちを雇って、パラスを荒らさせた。
しかし、山岳民族たちはパラスに追い返され、海賊たちも殺されるか、寝返った。逆に我々に襲い掛かってくる始末だ。
フーシ海軍で対処しているが、消耗が激しい。
ここは、ローマの力を借りるか、しかしそれでは少なくとも権益の一部を差し出す必要があるし、場合によってはローマにパラスを併合されてしまうかもしれない。
それに今ローマは領土を開拓により急拡大しており、戦争の必要を感じておらず、和平を持ちかけられるかもしれない。
そうなったら、東への進出ができなくなる。このまま力を落としていけば、いずれはローマに併合されてしまうかもしれない。
フーシ王イエローはひたすら苦悩していた。
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