第54話 砂漠での活動と砂漠の民の臣従、そして女難
本日も2回階投稿します。12時と18時に行いますので、お読みいただければ幸いです。
僕とロバート達は一路、南の砂漠地帯に向かいました。航海は特に問題なく、僕らは船旅を楽しみました。キャサリン諸島に着き、一休みしてから、対岸の海岸に上陸しました。そこには、アーリヤの兄たちが待っていました。
「預言者様、北の大王様よくぞ来ていただきました。部族を挙げて歓迎いたします」アーリヤの兄たちは我々に膝まずいて挨拶をしてきました。
「北の大王って何?」僕はロバートに小声で聞きました。
「アーリヤが、僕を説明するのに、そう言って説明したらしい」
「確かに北の大王だよね」
「なんか恥ずかしいよ」ロバートは少し照れたように言いました。
「お迎えご苦労様です。お兄さま。早速ですが、部族に対して、預言者様と夫である北の大王から部族に下賜品があります。お受け取りください」
そう言って、船に積んできたお土産を渡した。アーリヤの忠告に基づいて、内容はともかく船いっぱいの山盛りのお土産を用意していました。
「大変な下賜品ありがとうございます。偉大な預言者様のご厚意を全身で感じ取り、絶対の忠誠を誓います。早速部族の元へ持っていきたいと思います。長老も大喜びすると思います」感動したようにアーリヤの兄は言いました。
「いや、わが兄によく仕えてくれるアーリヤには私も大変感謝している。よき妹を持ったな」僕は言いました。
「なんという誉でございましょう。アーリヤ、兄として誇らしいぞ」
「ありがとうございます兄上。部族のためにもさらに努力していきたいと思います」
「うむ。預言者様、大変申し訳ございません。実は各部族から預言者様にお会いしたいと申し出を受けております。また、東の部族からも使者が訪れており、預言者にお会いしたいと申しております」
「わかった。それでは、早速に対応しよう」
それから怒涛でした。各部族からの要望を聞き、部族同士のいさかいの仲裁、新たな水を求めた井戸掘、土地の改良や病人の治療に走り回りました。結構多かったのが、虫歯の治療でした。歯磨きの習慣がなかったためか、かなりの人間が虫歯を患っていました。
とりあえず、治癒魔法で菌を殺し、歯に空いた穴を埋めていきました。更に歯磨きの方法を教えて、今後の予防に努めるよう指示しました。
ロバートは黒の部族を中心に砂漠の部族の組織化と武装の高度化を進めていきました。
これで、砂漠の西側は完全にローマ連邦が掌握しました。
ある程度、仕事が片付いてから、ロバートと一緒に、東の部族の者達に会いました。付き添いで、灰の部族の者達がいました。
東の部族の代表者は10歳くらいの少年達でした。
「預言者様にお会いできて大変うれしく…」そこまで言うと僕の顔を見て、あれどこかで見たなという顔をしていました。にやにやしながら、「ケメト以来だね。部族の元に戻れたのかい」というと、びっくりした顔をして、そのあと青くなり気絶してしまいました。
付き添いの灰の部族の者はあわてました。いきなり付き添いの使者が気絶したのですから誰でもびっくりします。
「灰の部族の者よ、ご苦労であった。東の部族をここまで案内した功で、褒美を授ける」と言って、砂糖や塩、食料品やランプなどの魔道具を与えました。
「この者達はわが顔を見て、感極まってしまったのであろう。しばらく介抱して世話をしておくので、そなたたちは自由にせよ」
「はい、ありがたき幸せ。もし、東の部族のもとに行く際は我々が案内を務めますので、ぜひともお声をおかけください」
「うむ、考えておく」そう言って、灰の部族たちを退出させました。
「おおい、生きてるか」顔をぺちぺちたたいて少年達を起こしました。
「お前は、我々を皆殺しにした外国の悪魔たち、なんでお前がここにいるんだ」そう少年達は言いました。
「おいおい、口のきき方には気を付けた方がいいぞ、少年。この地では、僕は預言者として崇拝されているからな。もし、態度を間違えれば、お前たち皆殺しだぞ」というと、少年はおとなしくなりました。
「僕の名前はバード、こっちはロバートだ。君の名前は?」
「僕の名前はマスード、使節団の団長をしている」一人の少年が自己紹介をした。
「それで、僕に会いたいってどういうわけなんだい」
少しためらうようにしたが、観念したのか口を開いた。「僕らの部族を助けてほしい。すでに東の全部族で生き残った8歳以上の男は、俺たち三人だけ、あとはラクダに乗れない長老クラスの者達だけだ。戦うの者がおらず、敵が攻めてくれば、みな奴隷にされてしまう。預言者様から知恵を借りて、東の部族を再興させたいと考えているのだ」
「具体的には、どうして欲しいというのはないのか?」
「とりあえず、貢ぎ物を持ってきた。各部族から選りすぐりの美人も連れてきた。それら貢ぎ物を受け取ってほしい。それで、東の部族のもとに来てもらって、奇跡を起こして、我々の部族を黒の部族のように豊かにしてほしい。貢物の女が足りなければ部族の元に戻ればいくらでも用意する。どうか部族のもとに来てくれないか」マスードは真剣に頼んできました。
「お前たちは、俺たちを襲い殺そうとした。殺そうとしたものに助けを求めるとは、お前には恥ずかしいというものはないのか」
マスードは黙り込んでしまいました。そして、ナイフを取り出すと自分の首にあてました。
「部族を助けてほしい。その代わり預言者様達を襲った我々は自決する」
他の二人も慌てて首にナイフを当てました。
「マスードだったか、覚悟はわかった。お前たちの命、もらい受ける。それでは、お前たちの部族のもとに行くか」そう言って、ロバートに向かって、「ちょっと出かけてくる。ここで待っていてもらっていいかい」と言いました。
「俺も行くよ。お前ひとりだと心配だしな」ロバートは微笑みながら言いました。
「おい、行くのは敵地だぜ。俺が、皆殺しにした部族の生き残りの土地だ。相当恨まれているのは間違いない。それにお前はローマ連邦の皇帝だぞ。死ぬわけにはいかないんだぞ」
僕は必死に止めました。
ロバートは微笑みながら言いました。「毎回、俺はお前を危険な戦場に送り込み、命のやり取りをさせている。今回ぐらいは俺もついていきたいんだ」そう言いはりました。
いくら説得しても、行くの一点張りです。やむなく認めることにしました。
そのことを皆に伝えると、ジェミニがつかつか寄ってきて、僕の胸元をつかんできました。
「てめえ、どういうつもりだ。ロンを連れて行くなんて。お前らアントの連中が皆殺しにした部族の生き残りだろ。そんなところに行ったら、間違いなく殺されちまうだろう」
僕はロバートが行くと言ってきかないことをジェミニに説明しました。ジェミニは僕の胸ぐらを放すと「俺も行くぞ。いいな」と短く言って、その場を去っていきました。
僕とロバート、ジェミニ、アーリヤの4人と、マスードたちと貢ぎ物の女たちの13名、合わせて17名で行くこととしました。
ミリアたちも行きたそうにしていましたが、危険な場所であるため、留守番してくれるようお願いして、しぶしぶ納得してもらいました。
アーリヤは「砂漠のことは私が一番詳しいです。いろいろ助言できると思います。それにもし、預言者様や大王様が害されたときはわれら西の部族が復讐に向かいます」といって、絶対についていくと言ってきかないので、一行に加えることにしました。
久しぶりにリニア魔法を使います。砂漠を横断するので、途中で一回泊りを入れるつもりです。ちょうど、東と西の部族の境に岩山があるそうなので、とりあえずそこを目指します。
僕とロバートは何回も使ったことがあるので、落ち着いていますが、ジェミニやマスードたちは初めてです。
マスードたちはあまりの速さに気絶してしまいました、ジェミニは狂ったようにげらげら笑いだしています。
「昔は一緒によくこの魔法であちこちいったよね。なんかすごい昔のようなんだけど、まだ数年前のことなんだね」とロバートは懐かしそうに言いました。
「そうだね。ロンとこうやってリニア魔法で移動するのも久しぶりだね」
僕とロバートは昔話をしながら、岩山に向かいました。夕方には、岩山に着きました。ここで一泊です。
広い砂漠の中で、大きな岩山が一つ、とても目立つようにそびえていました。
よく見ると、一つの巨大な岩でできており、岩にはまるで虫に食われたような感じの洞窟がいくつかできていました。
洞窟の中は湿潤で、中には古代の壁画が描かれていました。動物たちやそれを狩る者の姿や、なかには、不思議な形をしたものもありました。
僕とロバートはそれらの壁画を見ながらとても感動していました。ジェミニはあまり関心なさそうでしたが、ロバートとしっかり手をつないでいました。アーリヤは後ろに控えて、蛮刀に手を持っていました。
夕食は僕が魔法で用意しました。水を作り出し、空中に浮かべ、その中に肉や野菜などの材料を加工して入れたものをゆっくりと煮ました。調味料にて味を調え、周りの砂から石のお椀を作り、皆に分け与えました。
ナンというつぶれたパンは火魔法で温めて皆に配りました。
マスードたちはこの奇跡を見てびっくりして、さらに砂からお椀を作り出したことに大変感動していました。
更に砂を集めて簡易的な部屋をいくつか作り、周囲に結界を張って、危険な虫や動物が入り込まないようにしました。
あと小さな水場を作りこれで宿営地の完成です。
ロバートは慣れていましたし、ジェミニは「アントの魔法は大したものだな」と言って感心していました。けれどもアーリヤは「久しぶりに預言者様の奇跡を見せていただきました」といって僕に向かって祈り始めました。マスードたちは皆、奇跡を見たことで土下座状態です。
僕は苦笑いしながら、その日はその場で休むことにしました。
翌朝、出発です。リニア魔法になれたのか、誰も動じなくなりました。いたずら心が沸いた僕は、リニア魔法のスピードをさらに上げました。ロバートを含めながら皆キャーキャー言っていました。
スピードを速めたおかげで、昼過ぎには部族の土地に到着しました。
長老が、「よくぞおいでくださいました。他の部族の者達にも声を掛けますので、しばらくおやすみください」と声をかけてきましたが、時間がもったいないので、早速行動を開始しました。
土地の魔力を探るとケメトにあるイテル川に向かっていました。何本か魔力の流れを切って、更に魔石を蒔き、土地に魔力をいきわたらせました。
さらに井戸を何本も掘って、水の確保を行いました。土地は豊かになり、農業ができるようになりました。
そのあと、ロバートの名でケメトに駐屯しているローマ連邦軍と顧問団に命じて、農業指導者の派遣と、当面の間の東の部族の防衛を命じました。
マスードたちや幼い子供たちは15歳になったらローマ連邦軍にて、訓練を受けられるように手配しました。将来的には、東の砂漠の防衛に役立ってもらうつもりです。
ケメトとフーシに、東の部族のローマ連邦への帰属について、了承を求めたところ、問題なく認められました。
まあ、ケメトは現在、フーシとローマの傀儡ですし、フーシはかの国の利権にさえ手を付けなければ、貸しができたと喜んで妥協してくれます。
さて、一連の業務が終わり、西に帰ろうと思ったところ、東の部族の長老たちから「せっかく来ていただいて歓迎の宴も開いていない。さすがにそれは恥ずかしい。部族全体を挙げて祝宴を張るのでぜひ参加してほしい」と土下座されて言われた。
やむなく、僕とロバート、ジェミニとアーリヤは祝宴に参加することとなった。
祝宴の最中、ジェミニとアーリヤはロバートの左右に座り、他の女たちを一切寄せ付けませんでした。
そうすると、僕一人が標的になってしまいました。
貢物として連れてこられていた10人の美女たちのほか、各部族選りすぐりの女性たちが僕の周りを囲んで飲み物や食べ物を給仕しており、さっきから全然手を使っていません。
さらに僕の体のあちこちに女たちの手が伸びて、いろいろなところを触ってきました。
ついには、まずいところまで手が伸びそうになり、思わず逃げ出しました。
土で箱を作り、そこにこもりました。
「預言者様出てきてください」「一緒に遊びましょうよ」「一夜でよいのでお情けを」女たちは箱を取り囲んで、口々に声をかけてきます。
ガリガリ、ガリガリ小屋の土の壁を崩そうと、ナイフか何かで壁を削り取る音が聞こえます。僕はあまりの恐怖にガタガタ震えました。
「預言者様出てきてくださいよ」女たちは口々に声をかけてきます。
数万の敵と戦い、何回も死地を乗り越えた僕がこんなに恐怖するなんて、そう思いながら気を失ってしまいました。
朝になって、ロバート達を連れて、長老たちへの挨拶もそこそこさっさと逃げ出しました。
女たちがらくだに乗って追いかけてきましたが、リニア魔法で振り切りました。
後から聞いた話ですが、灰の部族の者が東の部族を訪ねてきて、預言者様一行に立ちよるよう依頼するため、訪ねてきたそうです。
僕らが逃げ出した後で、行き違いになったことを伝えると、大変残念がっていたそうです。
「部族の美女を用意して、おまちしていたのに」と言ったそうで、逃げ出して正解でした。
黒の部族の元に戻っても、女難の相は続きました。西の部族たちも女性を献上しようと、殺到してきたそうです。しかし、今度はミリアも余余二もマリアンヌもいます。特にミリアは「正妻であるキャサリン様がいないときは私が妻の代表です。バードのことはすべてわたしを通してください」と言って、群がる女たちを一人残らず追い返していきました。
僕は、子供を持った女性は強いな、と思いました。あの引っ込み思案なミリアは影も形もありませんでした。
そんなこんなで、女難に満ちた砂漠への旅は終わりを迎えました。
マスードたちですが、預言者たちを連れてきて、部族の復興に力を尽くした功績により、10人以上の妻をもらうことになったそうです。
そして、山のような子供をつくり、部族再興の中興の祖として東の部族の歴史に名を遺しました。
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