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閉話17 とあるポートランド官僚貴族の独り言

本日2回目の投稿です。お読みいただければ幸いです。

 私はポートランドで中級官僚をやっている宮廷貴族の一人だ。名前?爵位?それを書くと問題が生じたとき、責任を取らされるから言えない。ただ、私もこの時代に居合わせた当事者の一人としてこの偉業を書き残すぐらいはしたいと考える程度の自己顕示欲はあるので、後世の読者は文中の記載から推察してくれると嬉しい。


 ポートランドは貧しい東の小国だ。ジャルマンとの戦争で、比較的豊かな西半分の領土を持っていかれて、残ったのは東側の貧しい土地。更に蛮族が何年かに一度略奪しに侵攻してくるという厄災に満ちた土地だ。


 まあ、あまりに貧しい土地なので、毎年きても奪うものがなくなってしまうため、南のシルクと異なり、蛮族の侵攻が数年に一度だということがせめてもの幸運だろうか。


 蛮族の侵攻の旅にジャルマンに助けを求めて、蛮族を追っ払ってもらっているが、その補給物資の調達やそれに付随する労役のほか、軍事行動にかかる費用はポートランドがすべて支払わなくてはならない。

 だから、平民の年貢の率は8公2民で、軍事行動のたびに重い賦役があった。取った年貢は領地貴族が三分の一、国が三分の二を徴収していた。

 それでもジャルマンへの支払いが追い付かず、ジャルマンへの借財がかさんでいる状態だった。


 そのためか、私たち中級の宮廷貴族に対する給与も遅配、欠配が相次ぎ、支給されても半分ならいい方で、ひどい時には1割しか支給されなかった。

 私には、妻と子供が二人いるが、服などつぎはぎだらけ。使用人なぞ当然おらず、家財も最低必要なものを除いてすべて売り払ってしまった。

 屋敷はそこそこ広かったが、あちこち壊れ、隅には蜘蛛の巣が張り、我ながらお化け屋敷のようだった。

 妻は家計を助けるために、庭に野菜など食べられるものを植えて育てていた。

 それでも生活は苦しく、一つの小さなパンを4人で分け、草の入った味無しスープで飢えをしのいでいた。


 下級貴族の私らでさえその状態であるので、その下の準貴族、平民の生活は更にひどいものらしい。

 ただ、同じ宮廷貴族でも上級貴族はもうすこしましな生活しているらしい。一度、上司である大臣の長男の結婚式に呼ばれたことがあり、その時はわずかばかりであるが肉入りのスープを食べることができた。

 家族にも食べさせたいと思い、分けてもらえないか聞いたが、分けるほどないと拒否されてしまった。それでも肉入りスープを食べられるなんてと、とてもうらやましかったことを覚えている。


 それに引き換え領地貴族たちは、税のほかに領民にいろいろな賦役をかけて、かなりぜいたくな暮らしをしていた。肉など毎日のように食べ、酒を飲み、贅沢をしていた。

 人間、妬ましさが募ると、恨みに代わる。私たち宮廷貴族で、領地貴族に親戚のいないものは領地貴族たちを恨んでいた。


 ある年、ジャルマンがスカイ・グランド連合王国に滅ぼされた。これで借金は帳消しになると、我々はひそかに喜んだ。

 そのとき、時の王であるジグムント二世は大臣たちに相談なく、勝手に軍を動かし、ジャルマンに攻め込んだ。奪われた西方領土の奪還を目指してだ。


 この王は、短気、短慮、単純の三拍子そろった王で、思ったとおりにならないと、よく癇癪を起した。ただ、前王の正妻で、ジャルマン出身の王妃から生まれた唯一の男子であったため、王位を継ぐこととなった。


 そんなわけだから、まともな計画があるわけでもなく、ジャルマンの敗北を知ってから思い付きで攻め込んだものだから、スカイ・グランド連合王国に事前に何の打診もしておらず、スカイ・グランド連合王国から糾弾の使者が送られる事態となった。


 王は我々宮廷貴族を集めて、お前たちの性でこの事態を招いたと糾弾したうえで、解決策を献策せよと怒鳴り散らした。


 内務大臣が代表して言った。「この度は、スカイ・グランド連合王国に謝罪し、軍を引いてはいかがでしょうか。そのうえで、西方領土の一部でも返還してくれるようお願いしてはいかがでしょうか」


 そこに外務大臣が王に言った。「我々がロマーンの同盟国であり、この進攻はロマーンと協調したものであることを伝えてはいかがでしょうか。とりあえず、わが軍が国境地帯を確保したのち、スカイ・グランド連合王国軍を待ってその旨を伝え、決して敵対行為ではないこと、火事場泥棒的な行為ではないことを説明されてはいかがでしょうか。とりあえず、直ぐにロマーンに使者を送り、協調進攻の約束を取り付けてきます」


 王は不満そうでした。「わしは西方領土すべてを取り戻したいのじゃ。あと、今までの支配に対する賠償金と、にっくきジャルマンたちに罰を与えねば気が済まぬ」あなた自身、ジャルマンの血を引いているでしょうに、とその時その場に居合わせた官僚たちは思った。


 そうしたら、王の側付きの貴族の一人が言いました。「外務大臣の案にもうひとひねり加えましょう。ロマーンと強調してジャルマンに攻め込んだことにして、スカイ・グランド連合王国にはぼやぼやしているとロマーンと挟み撃ちにされるぞというのです。ロマーンには、不死将軍と名高いジョージ・アントを代表に常勝将軍バース・アント、暴風将軍ブルネット・アントなど名高い将軍が数多くいます。また、フライ家の面々は治政や謀略の面で、高い能力を発揮しており、他国でもフライ家の人材を欲しがるほどとか。そんな国に攻め込まれたとなったら、スカイ・グランド連合王国も慌てて軍を引くでしょう。それに乗じて、有利な形で講和を結べばよいのです」


 王はその案を気に入り、「それがいい。それでいこう」と言い出しました。

 外務大臣はあわてて言った。「おやめください。王よ。国同士の信義を裏切ることとなります。それに…」

 「黙れ黙れ、おいこいつを捕らえて牢にぶち込んでおけ。たわ言は処刑台の上で聞こう」と言って、謁見場を退出していきました。


 外務大臣は衛兵たちに謁見場から引きずり出されていきました。

 内務大臣は唖然としていた。「王は何も知らないのか。スカイ・グランド連合王国はロマーンと深いかかわりがあることを。あんな嘘なんてすぐにばれるぞ」


 ジグムント二世は勇んで、出征していき、すぐにウソがばれぼろ負けした。

 堪忍袋の緒が切れた内務大臣はクーデターを起こし、外務大臣を解放、ジグムント二世を捕らえ、スカイ・グランド連合王国に降伏した。

 その結果、賠償金は取られることになったが、領土を削られることなく、国としての存続が許された。そして、ポートランドは西方統治機構に加盟し、事実上の従属国となった。


 その翌年、蛮族が攻めてきた。その時丁度ロマーンに政変があり、ロマーンとスカイ・グランド連合王国、カリオス王国は連邦を組み、ローマ連邦となっていた。

 ローマ連邦軍が我々の救援に来た。指揮官は我々を打ち破ったバース・アントことバード・グランド将軍だ。

 彼は、王となった元内務大臣と交渉し、準王となり、王としての権利をすべて行使できるようになった。


 王の英断もすごいが、将軍は更にすごかった。あっという間に蛮族を退治し、それに伴って貧しかったポートランドを豊かな農業国家に変えてしまった。邪魔な領地貴族たちはあらかた処分され、その領地は王の直轄領となった。


 東方の蛮族たちの領土の一部も王のもとに加わり、実質的にはローマ領だが、税収の一部が我が国に収められるようになった。

 税率は領地貴族が3割、国が1割と減らされたものの、直轄領の増大、農業生産力の向上、東方領土の拡大など全体の収益が10倍近くになったため、実質3倍以上の収入が国庫に上がるようになった。

 そのため、財務官僚たちは予算の増大にうれしい悲鳴を上げていた。


 私自身、直轄地の統治の仕事で目の回る忙しさだ。


 だが、我々中級官僚もきちんと給与が出るようになり、さらに残業手当までもらえ、我が家の生活は一変した。パンは腹いっぱい食べられ、スープにも肉がかなり入れられるようになった。使用人も雇えるようになり、壊れた部分の修理も職人を呼んでできるようになった。


 まあ、上級官吏の一部には、自己の権限が置かされたことへの不満があるようだが、我々にとって準王様は救世主のようなものだ。

 この感謝を後世に伝えるため、この偉業を書き示し、後世に残すことにした。

 新たなる賢明な王と、将軍閣下に感謝を。



お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。

星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。

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