第49話 陥れられるギルフォード
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ギルフォードはエリザベスに「よくやってくれた。これで、私が王になることができる。お前のおかげだ」と言って、満面の笑みでほめたたえた。
取り巻きの貴族たちも「さすがエリザベス様、うまく王と前皇太子を引き付けてくれたおかげで、無事王宮を乗っ取ることができました。これもエリザベス様の功績です」とほめたたえた。
エリザベスは不安そうな顔をして、「父上と兄上を監禁して、これからどうするの?私、お兄さまの言われるとおりやっただけなの。こんな大ごとなるなんて、思いもしなかったわ」と半分泣きそうになりながらギルフォードに訴えた。
「始まってしまった以上、もう止まることはできない。お前もこちら側の人間だ。私が王位についた暁には、お前には、相応の褒美を与えよう。とりあえず、お前は王宮から出ることを禁止する。自室にて、待機しておくように」そう言って、兵士に言って、エリザベスを連れて行かせた。エリザベスは激しく抵抗したが、兵士たちの力にかなわず、連れていかれた。
「ところで、この国の掌握はどこまで進んでいるのか」ギルフォードは取り巻きの貴族たちに聞いた。みな黙っていた。
「サンド宰相兼大将軍、報告しろ」
サンド侯爵はしぶしぶ答えた。「軍の掌握はまだ進んでおりません。行政組織もまだ、我々の命令が行き届いておりません」
「いつになったら掌握できる?」
「近々には」
「早急に掌握を済ませろ。軍を掌握したら、スカイ・グランド連合王国に戦争を仕掛ける」
「戦争ですか?」
「スカイ・グランド連合王国だけではない。最終的にはカリオス王国も征服する。そうすれば、西方世界のほとんどを私が支配することとなり、ローマ帝国の再建が可能となる。そして私が、ローマ皇帝になる」
サンド侯爵は困惑していた。実際、ロマーンの支配も全く進んでいなかった。地方行政組織のほとんどはフライ元侯爵が実行支配しており、軍もアント元侯爵が掌握していた。
第一、王都以外の情報が全く入らなくなっていた。サンド達の持つ情報収集能力は大変脆弱であったうえ、簒奪に成功してからまったく情報が入らなくなっていた。
さらにそれまで、首都の行政や治安を担っていたアント家やフライ家側の貴族は首都から全員が脱出しており、そのため首都の行政機能もほぼマヒしてしまった。
首都の警備隊すら、どこかに潜伏していて、行方が分からなくなっている状態だった。
サンド側には、自分たちが雇ったわずかな私兵と、アント家に不満を持つ一部の軍人が味方にいるだけだった。
サンド侯爵は仲間とともにこの情勢の打開策について話をしていた。
「とにかく軍を掌握する必要がある。命令書は送っているのか」サンド侯爵は聞いた。
軍の将軍に任命されたムノー伯爵は「使いを送っているのですが、誰も帰ってきません。軍が我々に従ったかどうかもわかりません。ただ、王都の防衛に着くよう命じた部隊も現れないところを見ると、命令が拒否され、使者は捕らえられたか、殺されたようです。そのため、すでに使者のなりてもなく、使者を命ずると逃げ出してしまう有様です」と答えた。
王都の掌握を命じられたクズナ伯爵も「行政機関はその機能をほとんど果たしておりません。残っている下級官吏どもを使い、現状の把握に努めている状態です。治安維持は大変難しくなっており、住民は皆家に閉じこもって、様子を見ている状態です。首都の警備隊は姿を消して、どこかに潜伏しているようです。現在、盗賊や犯罪者どもを集めて、傭兵部隊を編成しています」
そのとき私兵部隊の隊長を務めていたノウナ子爵が「会議中失礼します。報告があります」と入ってきた。
サンド侯爵は、「どうした。何かあったか」と聞いた。
すると、ノウナ子爵は「ご命令通り、王弟家を攻撃し皆殺しにいたしました」と言った。
サンド侯爵はびっくりして、「どういうわけだ。そんな命令は聞いていないぞ」とノウナ子爵に詰め寄った。
子爵はびっくりして、「この通り、皇太子様からの命令書が来たので、その通り実行いたしましたが」と慌てて言った。
確かにそこにはギルフォードが署名した命令書があった。
「どういうことだ。すぐに皇太子に確認しないと」サンド伯爵はあわててギルフォードのもとに行こうとした。そのとき、王宮の管理を任せていたフン男爵が来て、「ご指示頂きました側室たちの始末、すべて済みました」と報告した。
「なんということをしてくれたのだ。側室達はわがロマーンの貴族の娘だぞ。それを始末すれば、実家の貴族たちが我々に敵対するのは確実なんだぞ!」サンド侯爵は叫んだ。
フン男爵は「でも、サンド侯爵様から始末するよう指示があったと、この通り命令書までいただいているのですよ」そう言ってフン男爵はサンド侯爵からの命令書を差し出した。そこには、サンド侯爵のサインがしっかりとなされていた。
「どういうことだ。こんな命令書にサインした覚えはないぞ」サンド侯爵は大変困惑した。
そこに王宮に長年勤めている執事長がフン男爵のもとにやってきて、何か耳打ちした。
フン男爵はハッとした後、言いにくそうにサンド侯爵に言った。
「王と元皇太子が自裁したそうです。元皇太子は首をつり、王は毒の入ったワインを飲んで亡くなったとのことです」
「誰が王に毒入りワインを飲ませた!」サンド侯爵は怒鳴った。
ビビりながらフン男爵は言った。「すべてサンド侯爵の命令書により、行いました。元皇太子には首を吊るよう仕向け、王には毒入りワインを飲ませて、処理するようにとの命令でした」
サンド侯爵は崩れ落ちた。「誰かが我々を悪人に仕立て上げている。王弟家を滅ぼし、側室を殺し、王と元皇太子を殺せば、王家で残っているのは、ギルフォード様とエリザベス様だけだ。誰か、エリザベス様の警護に着け。絶対殺してはならない。たとえギルフォード様や私の命令だとしてもだ」そう言って、ギルフォードのもとに行った。
ギルフォードは王座に一人座り、頭を抱えていた。
「ギルフォード様、王弟様一家を皆殺しにするよう指示されたのは本当ですか?」
「そんな指示は出していない。確かに私は叔父上に協力を求めて拒否され、殺してやるとは言ったが、本当は殺す気などなかった。いとこである叔父上の娘は私の婚約者で、子供の時から一緒に育ったのだぞ。お互い好意を持っていたし、王になった暁には、王妃にするつもりだった。それに子供のころ、叔父上や叔母上にもかわいがってもらった。私が王にさえなろうと思わなければ、叔父上の後を継ぎ、公爵家に婿入りするはずだった。実の親より親しいものをどうして、殺さねばならないのだ」ギルフォード様は憔悴していました。
サンド侯爵は王と元皇太子、王の側室達が皆死んだことを伝えました。
「いったいどうなっているのだ。誰が命令を出している。誰かがわれらを追い詰めようとしている。誰が裏切った」ギルフォード様はうわごとのようにつぶやき始めました。
サンド侯爵はもうこの国はだめだと思った。逃げる算段をしなくではと考えた。
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