閉話15 東の部族、マフードの冒険
20000PV記念で臨時投稿しました。お読みいただければ幸いです。
俺、マフードは胸の部族の戦士見習いだ。俺たちの部族はこの大砂漠の東側に住む砂漠の民だ。オアシスを渡り歩きながら、遊牧生活を送っている。
俺たち東の部族は大きな巨人の死後、体の各部所から誕生したと言われていて、俺のいる部族は胸から誕生したので胸の部族と言われている。
俺たちは長年西の部族と争ってきた。西の部族は東にやってきては俺たちの食料や家畜を奪おうとした。我々東の部族は戦士を中心に部族を守ってきた。
俺たちの部族はいくつかの階級に分かれる。一番多いのは戦士階級だ。男は16歳ぐらいから18歳ぐらいで戦士となる。彼らの仕事は遊牧の仕事と部族の防衛だ。
遊牧中に家畜が動物や人間に狙われることがある。それらを撃退し、家畜を守るのが戦士の仕事だ。戦士になれば一人前とみなされ、結婚して一家を構えることが許される。
戦士を務めあげて、生き残った者は長老となり、部族の方針や行動を決定する。
そして、戦士になるべく修行中なのは戦士見習いだ。だいたい、8歳から10歳で見習いとなり、戦士となるべく修行をする。
それより下の子供や女は守り人と言われる。戦士や長老の庇護を受け、生産に従事する。
そして、戦士となれなかった男は従者と言われる階級となる。結婚は許されず、ひげを蓄えることも許可されず、生産に従事するか、戦士の補助をすることとなる。戦士は彼らを殺す以外どう扱ってもよく、辱めとして女装をさせられている従者もいた。
僕は女装させられている従者を見て、俺は絶対戦士になると心に誓った。
西の部族との戦争で、勝てば乗り物のラクダを奪い、持ち物を奪い、人はケメトに奴隷として売った。この収入は我々の生活にとって、欠かせないものであったが、昨年と今年は西からの侵攻がなく、利益を得ることができなかった。
商人からの噂によると、西の部族に預言者が現れ、莫大な富をもたらした。更に預言者の兄に娘を献上したところ、かなりの物資がその娘からもたらされるようになり、東に攻め込まなくても生きて行けるようになったとのことだ。
おかげで我々の生活が脅かされるようになった。そのとき、ケメトの有力者から仕事が来た。フーシという国の王を殺せという指示だ。われわれはケメトと貿易を通じて交流があった。ただ、彼らは自分以外のものを下に見ていたので、服属の形で交流していた。
われわれは、その報酬と、町の略奪許可という大変おいしい条件でその依頼を受けた。
これで何年かは生きていけると、俺の父や一番上の兄など部族の戦士は全員出立した。みな、笑顔で出て行ったことを俺はいまでも忘れられない。
父たちが出て行った後、いくら待っても誰も帰ってこなかった。
しばらくすると、ケメトから作戦の失敗とその責任の追及、そして再び兵を出すよう命令があった。
この前の戦いで戦士階級はほとんど出て行ってしまったので、俺ら見習い階級と、従者たち、長老クラスでまだラクダに乗れるものが村から出て行った。
僕と二番目の兄が従軍することとなった。
他の部族と一緒に集められて、だいたい500名ほどが動員された。
われわれはケメト軍について進軍したが、いきなり敵から攻撃があった。火が飛び、風が突風となって覆い、俺は思わずラクダを座らせ、自身は砂に突っ伏した。
しばらくだったときだろう、突然風がやんだ。周りにはやけどでうめいているものと、風に巻き上げられ、地面にたたき落されて骨折しうめいている者が多数いた。
俺たちは負傷者の救助に当たった。兄の行方を捜したが、負傷者の中には見当たらなかった。死体を探したところ、母からもらったお守りの一部を持った黒焦げの死体を見つけた。
大切に下着の下につけていたので、燃え残ったのだろう。
僕は人目もはばからず号泣した。
負傷者のうち、ケメト人は野戦病院に収容されたが、俺たちは治療どころか、薬一つもらえなかった。
野営地もはずれの方をあてがわれた。負傷した者たちの治療を手持ちの薬で行ったが、重傷を負った者からどんどん死んでいった。
夜に敵の夜襲があった。僕らは夜襲されているケメトの陣地に向かった。敵の攻撃は苛烈で、かなりの仲間が死者の列に加わった。
翌朝、俺らに命令が下った。ここで敵を待ち伏せて、本隊の撤退を助けろとのことだった。
すでに我々は100人程度まで減っていた。そのうち重傷を負い戦えないものは、戦いのなかで邪魔になるため、やむなく我々の手で処分した。
知り合いの兄弟のうち、兄が弟をかばって重傷を負った。
助かる見込みがない者達の処分が命令されたとき、弟が兄を処分しようとして号泣し、できなかった。やむなく、俺が手伝って、処分する段になり、兄の方が「ありがとう、弟を頼む」と言ったのが、耳から離れない。
俺らは物陰に隠れて敵を待った。敵のゴーレム兵による攻撃は苛烈で、俺らは必死に戦ったが、全滅した。俺ともう二人、戦士見習いで同い年ぐらいの少年が敵の捕虜となった。
戦場の習いでは、死か奴隷かの二択であったが、尋問された後、武器を没収されて、なぜか許されて家に帰ることができた。
結局、胸の部族で生き残ったのは俺一人だった。
部族に帰り、このことを報告すると、長老たちは頭を悩まし始めた。
8歳以上の男子で生き残った者は僕しかいなかったので、とりあえず、村にいる6歳以上の男の子が集められ、戦士団が作られた。
俺は戦士長となり、6歳以上の男子の訓練を任されることになった。
そして、俺は亡くなった兄の嫁と強制的に結婚させられた。
この部族では兄弟がなくなると、その妻や子供を別の兄弟が引き継ぐ決まりがあった。
俺には、16歳と13歳の兄がいて、16歳の兄は戦士としてこの戦に出立する前に結婚していた。年は兄より1つ下で、15歳だった。
しばらくして、長老衆から僕に命令が下った。西にあらわれたという預言者様に会い、助力をお願いしに行くという目的を指示された。
この旅は、他の部族と共同で進められ、この戦で生き残ったほかの2人と協力することとなっていた。貢物として、村から貴金属が集められ、さらに13歳から18歳で美しく、ラクダに乗れ、武具を扱えるものが各部族1名、合計10人選ばれた。
胸の部族からは村一番の美女で、ラクダの乗りこなし、弓もうまいカマルという14歳の女性が選ばれた。本来は族長の息子に嫁ぐはずだったが、戦で族長も息子もなくなったため、今回の貢ぎ物に選ばれた。
俺も顔だけは知っており、美しい人だと思っていた。
いよいよ出発の日、俺は母や妹、妻の見送りを受けて、カマルとともに集合場所まで旅だった。
「よろしくね。マフード」そう言って、カマルは俺に微笑んだ。俺はカマルを直視することができずにそっぽを向いて、「わかった」とだけ答えた。
集合場所には、他の生き残りの男の子たちがいた。
「僕はザーヒー、よろしくな」「俺の名前はマフード、よろしく」「僕の名前はナーイフ、任務達成に頑張ろう」3人は自己紹介を済ませた。あと、貢物である女と貴金属も集められた。
さて、我々の旅は問題なく進んだ。女たちは一丸となり、男はその周りを囲むようにしながら、砂漠の道を進んでいった。砂漠には、はた目にはわからない道が通っており、我々砂漠の民のみが、その道を使うことができる。
そして幾日か過ぎて、いよいよ西と東の境界である岩山に際掛かった。
この岩山は神聖な土地で、いくつも洞窟があり、そこには、美しい絵が描かれていた。
我々はこの山を神の椅子として考えており、通る際は必ず神に祈りをささげた。
皆で祈りをささげた後、我々はいよいよ西に向かって進んだ。ここからは西の部族の土地である。いつ攻め込まれても不思議ではない。俺らは緊張しながら進んだ。
しばらくして、3人程がラクダに乗ってやってきた。
「ここは灰の部族の土地である。何の用があって、我が土地に侵入してきた」一人の男が訪ねてきた。
「我が名はマフード、西におわすという預言者様に会いたく、東から参りました。道をお借りしたい」そう俺ら頼み込んだ。
預言者様に会うことは、我々イムの民にとって、聖地巡礼と同じぐらい重要な行為であり、我々が信仰する教えでは、その邪魔をしてはいけないことになっている。
「預言者様に会いに行くのか。とりあえず、我々の村に来ていただきたい。今晩はわが村に泊まるとよい」
俺らはその厚意に甘えることにした。食料や水の補給もしたいし、ラクダも休ませなくてはならない。
村に招かれ、族長と会った。「初めてお会いいたします。私は東の部族のものでマスードと申します。西にあらわれたという預言者様に会いに、西に向かう途中です。村にお招きいただきありがとうございます」
「これは、マスード殿、我が名は灰の部族の族長、ユースフと申す。預言者様に会いに行くと聞いたが、誠であるか」
「はい、是非ともお会いしたく思い、旅をしてまいりました」
「しかし、それは難しいぞ」ユースフ殿は言った。
「預言者様は遥か北にお住まいで、連絡が取れるのは西の端にいる黒の部族のみだ。黒の部族は預言者様のおかげで、土地を豊饒にしてもらい、また、預言者様の兄が王となっている国の傭兵として雇われており、その報酬は莫大だ。さらに預言者様の兄に族長の娘が嫁いでおり、そこから送られてくる贈り物は大変珍奇で高価なものだ。誰もがその徳にあやかりたいと思い、預言者様への面会を希望するが、ことごとく断られておる」
「預言者様の会うことは我々東の部族にとって、部族全体の存続にかかわることなのです。なんとか黒の部族に会って、預言者様に合わせていただくよう願い出るつもりです」俺らは必死に訴えた。
灰の部族の族長はしばらく考えた後、「我々も黒の部族の恩恵で、傭兵として雇ってもらっている。1年交代で10名づつ雇ってもらっており、その収入でわが部族は生活している。間もなく、次の者達が出発する予定だ。その集団と一緒に行きなさい。護衛も兼ねるよう命じておくから、安全に黒の部族のもとにたどり着けるだろう。そこでお願いしてはいかがであろうか」と言った。
マスードたちは感激し、感謝の言葉を述べた。
「その代わりなのだが、もし、マスード殿たちが預言者様にお会いできるならば、ぜひともわが部族の者も一緒にお会いしたい。その際は力になってほしい」とユースフ殿からお願いされた。
俺たちはその申し出を了解した。これで、預言者様に会うための伝手を見つけられたと思い、僕らは神に感謝した。
マスードたちを案内した男が、族長に尋ねた。
「やつらかなりの金品と、美しい女を連れています。殺して奪ってはいかがですか」
ユースフはその物言いにあきれて、諭すように教えた。「おまえ、イムの人間が、預言者様に会いに行く途中の者を襲い、殺して金品を奪えば、業火の地獄に永遠に落とされることを知らないわけではあるまい。イムの民として、大変恥ずべきことだ。そして、もしこのことが他の部族にばれたら、我々は、恥知らずとして弾劾され、傭兵の職も失い、生活が成り立たなくなるぞ」続けてユースフは言った。
「確かにあんな小僧が、使者として西に行くのはおかしなことだ。東の部族に何かあったのかもしれん。東に侵略すれば略奪も楽に進むかもしれない。だが、それはこの策が失敗に終わってからでも遅くはない」
「この策とは何ですか」
「あいつらは預言者様に会いに行くという。何か切羽詰まった理由があるのだろう。もしかしたら情にほだされ、預言者様もお会いになるというかもしれない。もし、奴らがうまく会えれば、一緒に我々も会うことができるよう取り計らうよう約束をしている。恩を売っておいて、約束を守らせればよい。もし、我々を裏切れば、恩知らずだとして、侵略の良い理由になる」
ユースフは言葉を続けた。「会えれば、我々にも恩恵を授けていただけるようお願いできるし、東の部族のもとに預言者様が行く場合は、ここに立ち寄っていただくこともできる。いま略奪のために進攻して、預言者様の不興を買うより、ここは彼らを助ける方が恩恵が大きい。黒の部族を見ろ。あいつら亡ぶ寸前まで行ったのに、預言者様の恩恵で、あっという間に一番力を持つ部族になり、我々すら奴ら黒の部族の恩恵にすがって生きているようなものだ。預言者様においでいただき、恩恵をいただき、できればわが部族の娘を何人か娶っていただければ、黒の部族なぞに及ばぬほどの恩恵を授かることができようぞ」
そう言って、ユースフは笑った。
「悪い賭けではあるまい。どう転んでも我々の損はない。せいぜいあいつらには頑張ってもらうじゃないか」
20000PVありがとうございました。誤字脱字の修正本当にありがとうございました。私のつたない文章をお読み下さる皆さま本当に感謝感謝です。
第4章は現在書き進めております。皆様にご期待に沿えるよう頑張る所存でおります。
申し訳ありませんが、今しばらくお待ちくださいますようお願いいたします。




