第5話 王都へ行ったら、更に面倒を押し付けられる
毎日午後7時に投稿しています。お読みいただければ幸いです。
何日か後、僕とロバートは王都に行くことになりました。
ミリアのこともあり、結局このままロバートと行動を共にすることになりました。
ジェーンさんとミリアは僕達が首都バルバドスに行くとき、見送りをしてくれました。僕とロバートは土魔法を使って移動することにしました。
まず、流線型の箱型の乗り物を土魔法で作成する。乗り物の下には磁石を張り付けており、地面のN極、S極を魔法で変化させることで高速で移動する。僕はこれをリニア魔法と名付けていました。
すごいスピードが出るし、磁石の強弱により高さも調整できるので、あっという間に首都に着きました。
首都につくと、ロバートは「とりあえず、下宿していた宿に行こうか」と言ってきたので、僕はついていきました。そこは古くて小さな酒場兼宿屋でした。
「こんばんは」ロバートが言って、中に入って行きました。
「いらっしゃいませ、ってロン!」赤毛の女の子がロバートを見て、驚いた表情をしました。
持っていた食器をすぐにそこに置くと、ロバートに抱き着いてきました。
「ロン、無事だったのかい。本当に良かったよ」泣きながらロバートを抱きしめていた。
「ミーアちゃん、よかったな」その場にいた客が声をかけてきた。
「ほんとよかった。戦場に行かされて、それが絶望的な戦場で、絶対に死んだってお客さんから聞いて、ロンが死んじゃったって、うわーん」もう号泣だった。
「大丈夫だよ。僕は生きてる。だから泣き止んで」すごく優しい声でロバートは言った。
「いらっしゃいませ。おひとりですか」見ると、なにもなかったような顔で、一人の少女が僕に声をかけてきました。赤毛で結構美人だったが、冷たい印象を持つ少女でした。
「すまない。彼の連れでね。しばらく様子を見たいんだ」
「ああ、ロンの連れね。あいつ生きていたんだ。死んでいればよかったのに」冷たい声でその少女は言いました。
「ロンにうらみでもあるのかい。ずいぶん冷たい言い方だけど」僕は聞いてみました。
「あんた何者?」その少女は聞いてきました。
「冒険者でロンの親友」僕は答えました。
「へえーあいつ親友なんてできたんだ。でも冒険者って、クズじゃん」
「まあ、そうかもな。でもロンは官吏だろ、馬鹿にする理由はないだろう」
「官吏ったって、下級じゃん。出世の見込みもないし、あんな男に引っかかるなんて姉さんも男を見る目がないのよね」さげすむように言いました。
「そういう君は、よっぽどいい男を捕まえたのかい?」僕は嫌味っぽく言いました。
「私、明後日から、伯爵家にメイドとして働くことになっているの。私、この町内で一番の美人で通っているのよ。絶対に伯爵を篭絡して、側室の地位に納まって見せるわ」その少女は言い切りました。
「まあ、頑張ってくれ」僕はあきれて言いました。
「なに、その馬鹿にした言い方」少女は不満そうに言いました。
「だって、言っちゃ悪いけど、たかが町娘がメイドになったとして下級メイドだろ。掃除洗濯、雑用がメインで、伯爵家の人間と顔を合わせる機会さえないのが普通だよ。頑張って、中級メイドになれば顔を見るチャンスがあるかもしれないけど、それまで何年かかるか。それに町娘は絶対に上級メイドになれないからな。上級メイドになれるのは、準貴族以上の地位が必要だぞ」経験上の話としてだけどね。
「なによ、知ったような口きいて。私はこの美貌でのし上がるの。伯爵家に奉公に上がって、偉くなっても媚びを売ってこないでね」ぷんぷん起こって、立ち去っていきました。
それと入れ替わりに、ロバートがやってきました。「紹介するよ。この子はミーア」「初めまして、バードです」僕はあいさつしました。赤毛で、元気いっぱいという感じの子でした。スタイルもよく、性格もはっきりとしたいい子というイメージです。「バード、初めまして。冒険者だってきいたよ。旦那が世話になったね。とりあえず飲んで食って頂戴。宿もここにとっておくからね」
「ありがとうございます」もう旦那呼ばわりなんだ、と僕は思いました。
それからミーアさんは少し言いよどんで、「妹と話をしていたでしょう。大丈夫だった?」
「特に何もありませんでしたが、何か問題でも」僕は尋ねました。
「あの子、コリンっていうのだけど伯爵家に奉公が決まってから、周りを見下すようになったのよね。私たちに対してもそう。家族の縁を切るって言ってきて。お父さんお母さんも心配しているのよ」ミーアさんは心配そうに言いました。
「貴族の妻になりたいんですかね」僕は聞いてみました。
「まあ、上昇志向の強い子だからね」ミーアさんはあきらめたように言いました。
「とりあえずくつろいでおくれよ。ロンは前と同じ部屋だからね。あとで行くから寝てちゃやだよ」そう言って、ロバートのほほにキスすると、仕事に戻りました。
「ロン、話どうする?」僕は聞きました。
「とりあえず、今日は無理だと思う。おそらく、部屋に来たら問答無用に襲われると思う」ロバートは言いました。
「そんな感じだな。頑張ってくれ」僕はそう言って、ロバートを励ました。
翌日、ロバートは青い顔をして、何かを絞りつくされた顔をしていました。
反対にミーアはてかてかと血色のいい顔をしていました。
結局それが一週間続きました。僕はロバートに回復魔法をかけ続ける羽目になりました。
一週間後、僕ら二人は王宮に呼ばれました。きちんとした礼服を手に入れ、一応の礼儀作法をロバートに教えました。僕は侯爵家の教育を受けていたから、このあたりはお手の物です。
「バードいろいろありがとう」ロバートは言いました。僕は偉そうに言いました。「お礼として、もしロンが爵位をもらったら、僕を部下にしてもらうからな。あと、ミリアとの結婚式に参加してもらうからな」
「全然問題ない。お前たち夫婦のことは一生俺が責任を持つ」ロバートは言い切りました。
王宮にて、王へ謁見することになりました。なぜか僕も一緒に来るよう言われました。従者のつもりで部屋の外で待つつもりだったので、かなりびっくりしました。
王の間に連れていかれ、王の前に進み出るよう言われました。そして王の前に跪いて、深く頭を下げました。
「両名顔をあげよ」そう言われて、僕らは顔を上げました。
「両名の功績、多大である。よって、ロバート・スペリオル、貴公を子爵とし、バルボア伯爵領の半分をあたえる。与えられる領土は後で内務大臣から伝えさせる。あと、バードとやら、貴様は法衣男爵としてロバートの下、派遣武官として働くことを命ずる。階級は大尉とする。詳細は軍務大臣から確認するように」王はそう言った。
ちょっと待て、僕まで爵位が授与されるのかよ、と思いました。
ちなみに王の言葉は絶対であり、爵位授与の命令を断ることはできません。もし断れば、王に対する不敬、国に対する反逆とすぐに死刑になっても文句は言えません。
「王よ、一つお願いがあります」ロバートは言いました。「図々しいぞ、おまえ、控えよ」重臣の一人が言いました。
「構わぬ。言ってみよ」
「スペリオル家は長男に息子がおり、後継ぎとなっております。新しい家名をいただければ幸いです」
王は重臣と話をしてから言いました。「確かに戦死したスペリオルには、嫡孫がいたな。よろしい、別姓を立てる許可を与える。スペリオル家の嫡孫には成人後に男爵の地位を継ぐことを認めよう」王はそう言って立ち去りました。
ロバートは旧伯爵領の半分を与えられました。新しい氏をロバートはスカイ、僕はグランドとしました。今後はロバート・スカイとバード・グランドと今後名乗ることになりました。
ロバートは「スペリオルなんて家名、嫌で嫌で仕方なかったんだ。これですっきりしたよ」と言っていました。
その夜、僕とロバートはミーアにジェーンさんのことを話しました。ミーアさんは黙って話を聞いていました。そしておもむろに口を開きました。
「つまり旦那を寝取った女と対決すればいいんだね」
「ミーアさん、できれば、穏やかに話をしていただけるとロンもうれしいのだけど」僕が言いました。
「はぁ、何言ってんのよ。大切な旦那がほかの女に取られかかっているのに、悠長なこと言ってられるかい。そいつとすぐに会おうじゃないか。そしてこの男は私のものだとはっきりさせるんだ」
「なんでロバートにそこまで執着するんだい。子爵になったからかい」僕は聞きました。
「シシャクだか、ゴシャクだか知らないが、私はこいつと見込んで処女をささげたんだ。たとえ、地獄に行くとしてもこいつと一緒にいると決めたんだ。それをほかの女に寝取られてたまるかい」
おう、ミーアさんかっこいいな、僕はと思いました。ロバートは顔を真っ赤にしていた。
翌日、リニア魔法で村につきました。早速、ミーアとジェーンの顔合わせを行いました。
「ここから先は女同士の話だから、旦那たちは席をはずしておくれ」「そうね、二人とも席を外してちょうだい」二人から有無を言わせない迫力で言われたので、僕とロバートはすごすごと引っ込みました。
「なあ、バードどうなると思う」「とりあえず治癒魔法の用意をしておくよ」僕が答えました。
「すまない、頼む。できれば殺し合いだけは避けてほしいな」ロバートは言いました。
「ミーアさんはわからないけど、ジェーンさんは優しいから大丈夫だろう」僕がそう言うと、顔をこわばらせて言いました。「ジェーン姉さんもそうだけど、ここの女はおっかないよ。働き者で情が深くて世話焼きだけど、男に対する執着は半端じゃないからね。裏切ればただじゃ置かないし、相手の女は理由によっては殺しかねないからね」
ミリアの優しそうな顔を思い浮かべながら、ミリアもそうなのかなと僕は思いました。
しばらくして、2人が出てきました。意気投合という感じでした。「話はまとまったよ。どっちも同格で上下なし、夜も半分づつな。あと、ロバートの管理は二人でして、これ以上側室、愛人は増やさせない」「ええ、ミーアさんはしっかりした人ですから、ロバートにとってよい方だと思いましたわ」
「ロン、よかったじゃないか」僕が言うと、ロバートは「よかったとは思うけど、これって俺、二人に全部管理されるってこと?」
「まあ、なれることだな」僕は笑って言いました。
「とりあえず、円満解決ということで3人でちぎっておくか」ミーアはニヤリと笑いながら言いました。「そうですね、そうしましょう」ジェーンもニコニコしながら言いました。そして、二人でロバートの腕をつかんで、寝室に運んでいった。
「バード、助けてくれ~」ロバートが言ったので、「頑張れよ~」と言い返したら「裏切り者~」と帰ってきました。
翌日、何かを搾り取られたロバートと肌つやのよくなった二人を見ました。
ロバートには、国境地帯を中心に、ロバートの故郷だったパプル村(初めて名前があることを知った)とその周辺を含めた領土が与えられました。
いろいろ情報を集めたところ、いろいろなことが分かりました。ちなみに僕は得意の土魔法と回復魔法を使って、情報収集が得意なのです。
派遣武官をしていた男爵家だが、元伯爵と一緒に救援要請に行った男爵は爵位をはく奪されたとのこと。ただ息子が準男爵に叙され、功績次第では男爵へ復帰させることを約束されたらしいです。また、ロバートの実家であるスペリオル家は嫡男が15歳になり成人となった暁には、男爵位を継がせることとなりました。
子爵に降格された元伯爵も法衣貴族となり、戦いの矢面に立たなくてもよいと安堵しているとのことでした。
大体この地域では小競り合いが多く、ちょくちょく戦闘が起きていたらしいです。
今回の戦闘もその延長ぐらいに思っていたら、敵が2万の軍勢で攻めてきて、前線の城砦にいたスペリオル男爵は敵に包囲され全滅、慌てた元伯爵と元男爵がとてもかなわないと味方を呼びに行ってしまったとのことだそうです。
敵は再度の侵攻を狙っているのは間違いないらしいです。国境の防衛に新参者で消耗しても惜しくないロバートと僕を当てたということは、僕らは捨て駒扱いだなと思いました。
正直、王の采配が腹ただしくある半面、なかなかうまい手段だと僕は感心しつつ、面倒ごとに巻き込まれたなあと思いました。
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