閉話12 第2次西方大戦前夜
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ジャルマン王宮にて
ジャルマン王フリードリッヒ3世は重臣たちとともに会議を開いていた。議題は3国同盟締結に対する対応だった。
「3国同盟が結ばれたそうだな」フリードリッヒ3世は静かに言った。
「はっ、そのようでございます」外務大臣が答えた。
王はいきなり、机にあった紅茶のカップを投げつけた。「そのようでごさいますだと。貴様、われを馬鹿にしておるのか」王は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「いいえ、とんでもこざいません」外務大臣は冷静に言った。
「これでロマーンの西方諸国の中での力は増し、ジャルマンの力は弱体化したのだぞ。特にスカイ・ブレイド連合王国はバルバドス王国、アサシン王国の領土に旧フーシ領の一部と南方領土を加え、大帝国となっている。また、カリオス王国はそれまで分裂していたベリア半島を統一し、強大な国力を持つに至った。その二つがロマーンを中心に手を結び、連合を結んだ場合、その標的は我が国と決まっておる。一刻も早く、敵の力を削ぐ方法を考えるのだ」
フリードリッヒ王は一気にまくしたてた。
「一つ提案があるのですが」一人の男が立ち上がり、最敬礼をしてきた。
「こ奴は誰だ」王は尋ねたところ、「このものはバルバドスの元伯爵で、バルボアと申します。亡命貴族のなかでも使えるので、わたくしのところで雑用をさせています」軍務省次官のアイゼン伯爵が言った。
「ほう、何か良い案があるのか」王は尋ねた。
「バルバドスの力を削ぎ、更に地理的に三国を分断するのです」バルボア伯爵が答えた。
「この同盟において、内戦は共助の範囲外となっています。しかるに、まずバルバドスがジャルマンに対して、侵略を仕掛けていることにし、そのことに義憤を感じたバルバドスの亡命貴族が立ち上がり、バルバドス解放を目指すため、亡命政権を築くというのはどうでしょう」
「亡命政権だと?」
「ええ、まずジャルマンと接するバルバドス北部国境で破壊活動を行います。バルバドスはきっと反撃してくるでしょう。その時、こういえばいいのです。『我々は正当な国境防衛を行っていたが、スカイ・グランド連合王国に侵略された』と」
「そして、我々ジャルマンに亡命したバルバドス貴族で、無法なスカイ・グランド連合王国に対して、バルバドス復興を唱える亡命政権を作り、ジャルマンとブレイドの援助のもと、バルバドス国土回復戦争を行うのです。我々にとって、バルバドス回復は大義名分のある行為ですし、スカイ・グランド連合王国に侵略されているジャルマンが我々を援助するのは、さほど問題のある行為だとは思えません。また、本拠地はブレイドに置くことで、ジャルマンはあくまで間接的に援助しているという大義名分が成り立ちます」
王はややいぶかしげに、「少し理屈に無理があるのではないか」と言ったが、「ここは、ロマーンの介入を阻止できるだけの理由さえあればいいのです。内戦に対しての介入はどこの国でもハイリスクなものとなっています。もし介入するならば、他の国の介入も招き、介入した国同士で戦いが起こる可能性が高い。まともな国ならば、避ける行為となっています。それは国際社会の中で一つの常識となっています」とバルボア伯爵は言った。
しばらく考えた後、フリードリッヒ王は計画の実行を指示した。
軍務次官を南部国境での紛争担当、亡命政権の樹立はバルボア伯爵が主導し、外務大臣はブレイド王国に協力という名の命令を行い、環境を整えることとなった。
バルボア伯爵は、亡命政権の首班に全バルバドス王の弟で、王族の血を継ぐ伯爵を推薦し、閣僚たちは希望者を募って任命するようにした。多くの亡命貴族が地位を求めて、バルボア伯爵に言い寄ってきた。
肝心のバルボア伯爵は、亡命政権内での地位は求めず、ジャルマンとバルバドス亡命政府の中継ぎ役を務めたいとジャルマン王に願い出て、ジャルマン王国の男爵の地位を与えられた。
ロマーン王宮にて
ロマーン王レオ5世は皇太子の訪問を受けていた。
「父上、アント家とフライ家の力が強くなりすぎているのではないでしょうか。このままでは、ロマーンが彼らに飲み込まれるのではないでしょうか」皇太子は王に進言した。
王は書類を見る目から顔を上げ、「お前、おじい様の話は聞いているか」と尋ねた。
「ええ、フライ家とアント家の力を使い、王位を手に入れ、外国からの脅威を退けたというお話ですよね」皇太子は訝し気に言った。
「お前のおじいさま、つまり前王は王位継承権としてはかなり低い地位にあったそうだ。たまたまほかの兄弟が皆殺しにされ、更にフライ、アント家の知古を得て、王位を得たに過ぎないのだ。だから、フライ、アント家には莫大に借りがあり、王家としては彼らを優遇せざるを得ない」そう言って言葉を切った。
「しかし…」皇太子がなおも言いつのろうとすると「これは表の話だ。お前もいずれ王になるなら覚えておけ。アントとフライは車の両輪だ。どちらかが欠けたら、片方も動かなくなる。王家はこの二つの車がきちんと動くよう調整するいわば御者の役割を担うこととなる」
「御者ですか」
「そう御者だ。あいつらも分かっている。フライ家は知恵と知識はあるが武力がなく、アント家は武力があるが知恵と知識がない。両家は補完しあってこそ、その価値が生まれるのであり、単独だとその力は大きくそがれることになるだけでなく、状況によっては家の滅亡につながる可能性もある。そして王家はその二つの家を調定し、稼働できるようにするために必要不可欠な存在だ。だから彼らは決して王家を見捨てない。王家が彼らを見捨てない限り」そう言った後、言葉を続けた。
「逆に王家にとっても彼らがいないと王としての力、国としての力が壊滅的なまでに消えてしまう。それこそ、馬がいなくなった馬車の御者だな。この馬と御者という我らの関係を脅かす存在として現在考えられるのは、スカイ・グランド連合王国のロバート・スカイだ。あいつはバース・アントにとって、不完全ではあるが、フライ家の肩代わりを行える人物だ。そして我々の影響下から外れている。これを取り込む必要がある。そうすれば両家に対する影響力は今後も保たれるだろう」
王は言葉を切り、突然話題を変えた。「おまえ、ローマ帝国を知っているか」
「ええ、当然知っています。昔あったこの西方社会を支配した大帝国ですよね。わがロマーンはその皇帝の血を受け継いでいる由緒正しき王家であると教えられています」皇太子はなぜこの時にその話題を持ち出すのか疑問に思いながら答えた。
「間もなく、ジャルマンと戦いになる。それに勝てば、ロマーン、カリオス、スカイ・グランドは我が国を中心にまとまることができるだろう。そうすれば、ローマ帝国の復活も夢ではないぞ。のう、初代新生ローマ帝国皇帝殿」王はいたずらっぽく皇太子に言った。
皇太子は雷に打たれたように、身を震わせた。
「王よ、私はもっと精進します。そして、ローマ帝国の復活を必ずかなえて見せます」
「期待しておるぞ」王はそう言って、再び書類に目を通し始めた。
フーシ王宮にて
イエロー王は重臣たちと会議をしていた。「ジャルマンから反ロマーン連合への誘いが来ています。戦いに勝利の暁には、旧フーシ領の回復とグランド地域の併合を認めるとのことです」重臣の一人が言った。
「ジャルマン、ブレイド、フーシ、ポートランドの四か国連合か、ポートランドはジャルマンの従属国だから仕方ないだろうが、ブレイドがそれに従うかな、間違いなく国土が戦場になるぞ。それに我が国はジャルマンやポートランドとは山脈を超えないと陸路での連絡がつかない。緊急の場合に援助を求めることが難しいな」イエロー王は考えながら言った。
「スカイ・グランド連合王国と単独で戦った場合の勝ち目はあるかね」イエロー王は軍事担当の重臣に聞いた。
「精いっぱい努力します。カヨク砦を抜ければ、西フーシの解放も可能であると思います」
「その後はどうなる」イエロー王は続けて尋ねた。
「ジャルマンとブレイドが奮戦して、スカイ・グランド連合王国を西にくぎ付けしてくれるならグランド領に侵攻も可能だと思います」
「仮定の話が多いな、カヨク砦が落ちなかったらどうする。粘られているうちに、西の方で講和が結ばれたら、こちらが矢表になる可能性が高いが、それには対処できるのか。あと、ロマーンやカリオスが参戦してきた場合は、どうにかなるのか」
軍事担当の重臣は黙ってしまった。そして、決意するように言った。「最後の一兵まで戦い、フーシの誇りを示します」
「つまり負けるということか」イエロー王は言った。
「その通りでございます。申し訳ございません」軍事担当の重臣が恥ずかしそうに答えた。
「いや、恥ずかしいことではない。はっきり言って私もそう思っていた。バードとキャサリン嬢を相手に勝てるほど私はうぬぼれていない。それにジャルマンとブレイドが全面的な勝利を得られるなんて、とても思えないな。よくて有利な条件で講和して終わりだろう。その際、我が国がスケープコートにされる可能性は高い。まあ、奇跡がないわけでもないが、とりあえず、中立でいくか。ジャルマンから誘いが来たことはスカイ・グランド連合王国に伝えよ、そして我々は貴国を裏切るつもりがないとも伝えておけ」
そう言って、「我々の目的はあくまでも東のシルク征服だ。そのためにもバードの力とキャサリン嬢の知恵が必要だ。友好関係を保つ必要がある。むざむざ生贄になる必要はない。遠くから見ていて、最後にもっともよい手を撃てばよいのだ」と重臣たちに行った。
重臣たちは皆礼を取った。
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