第33話 帰国と同盟と戦争準備
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僕たちは所要の予定を終わらせて、帰国の途に就きました。
スカイ・グランド連合王国とカリオス王国は友好関係を結び、交易や人の移動の自由をお互いに認め合いました。
また、貿易に関する詳細な規定は官僚同士で打ち合わせして、条約案の作成を行うこととなりました。
そしてお互いの行き来が楽になるよう、時空魔法による王族同士が行き来できる門の開設を行いました。これでスカイ・グランド連合王国とカリオス王国との往来が自由にできるようになりました。
帰国すると、ロバート達が待っていました。キャサリン姉さんも帰ってきていました。
僕とロバート、キャサリン姉さん、ブルテン殿の四人でカリオス王国にて聞いた話をしました。
3国同盟については皆の了解が得られました。キャサリン姉さん曰く、「フット兄さんが言ったとおり、バルバドスに攻めてくる可能性はかなり高いわ。その際、それ以外の国の干渉を防ぐ効果が期待できるわね」と言いました。
あと「フット兄さんとブルネット義姉さんがいてびっくりしたでしょう」とにやにやしながら言いました。
「本当にびっくりしたよ。教えてくれればよかったのに」と僕が言うと、「私も情報に確信が持てなくて、調べている最中だったの。あとでお父様のところに連絡が来て、やっと確信が持てたのよ」と言っていました。
「さて、同盟については、ロマーン王国が主導で動くだろうから、私たちはそこに乗って動けばいいだろう。今考えるべきはバルバドスの防衛と反撃計画だね」ロバートは言いました。
「北は山岳地帯で、ジャルマンが直接攻めてくるのは難しいな。ただ、少数の兵によるゲリラ戦により、魔石の産出を妨害することは考えられる。主攻は西から来るだろう。バルバドス内部に内通者がいたら厄介だけど、今回のコール伯爵の反乱で問題分子は概ね片付いた。問題はフーシ王国がどう動くかだな。フーシ軍が西に動いたら要注意だな」僕はみんなに伝えました。
「フーシとバルバドスは情報を集めよう」ロバートが言いました。
ロバートの支配地域は元フーシ領で、さらにロバートはバルバドスの元官僚で、そのコネでフライにはバルバドス出身者が多く仕えており、両地域に人的なネットワークを持っているため、情報の収集が可能なのです。
「それでは、ブレイドとジャルマンは私の方で確認するわ」キャサリン姉さんが言いました。
ロマーンとジャルマンは仮想敵国で、ブレイドは親ジャルマンの政策を行っており、両方にロマーンは情報網を築いており、その元締めが情報局長であるキャサリン姉さんの叔父です。
「グランド兵の動員準備をしておきます」ブルテン殿は言いました。
スカイ・グランド連合王国の方針は決まりました。
しばらくして、同盟締結のための会議を開きたいという趣旨の知らせがロマーン王国から来ました。スカイ・グランド連合王国から、ロバート、僕、そして宰相格でキャサリン姉さんが出席することになりました。
会議はロマーン王宮で行われました。
ロマーン王宮は美しい庭園と白い壁面に金色の文様が塗られており、かなり豪華絢爛な建物でロバートは緊張していましたが、僕とキャサリン姉さんは何回も訪れたことのある場所で、結構慣れています。
僕たちは侍従に案内されて、外交用の会議室に案内されました。
すでにそこにはロマーン王、内務大臣つまりキャサリン姉さんの父上、軍務大臣で僕の叔父、大将軍の父がいました。
しばらくしてカリオス王国のソフィア女王も来ました。宰相のフット兄さんと大将軍のブルネット姉さんが入ってきました。
ロマーン側から事前に案として配られた同盟の条件はすでに本国で検討され、必要な修正点については、ロマーンに通知してありました。おそらくカリオスもそうでしょう。
会議室には、修正された案が配られていました。
まずロマーン王が挨拶しました。「ロバート王、ソフィア女王、お初にお目にかかる。私はロマーン王国国王レオ5世である。以後よろしく頼む」
ロバートとソフィア姉さんも続けて挨拶しました。
「さて、他の者は、皆顔見知りだな、久しぶりだな、フットそしてブルネットよ、バースとキャサリン、そういえばキャサリンは子供を産んだそうだな。おめでとう。祝いの品だが届いたかな」
「お祝いありがとうございます、あのように素晴らしい品をいただき感謝いたします」キャサリン姉さんは頭を下げました。
「うむ、大切な臣下の子供だ。その子はアント家を継ぐのかな」
「そのつもりです」僕は答えました。
「アント家とフライ家はわがロマーンの両輪、なくてはならない存在だ。アント家の跡取りができたことは大変めでたい」
「ありがとうございます、そのようなお言葉をいただけ大変名誉でございます。」僕は頭を下げました。
「さて、同盟の話だが、ロバート王、ソフィア女王、何か問題はありますでしょうか」
ロマーンの内務大臣が尋ねました。
ロマーンの案を見ていたフット兄さんは問題ないことをソフィア姉さんに伝えました。
ソフィア女王は「問題ございません」と答えました。
キャサリン姉さんとロバートもすでに中身を確認しており、問題ないと判断していました。
ロバートも「これで問題ありません」と答えました。
「ではこの案で同盟を締結する。三国が手を取り合って進もうぞ」とレオ5世は言いました。
3国同盟は問題なく結ばれることとなりました。
内容は相互の交易の自由、人の行き来の自由、どこかの国が侵略を受けたら、物資の支援等行うなどの防衛協力協定が結ばれました。
ただ、軍事協定には、内乱に対する介入や直接的な軍事支援は含まれておらず、その判断は二か国間、若しくは三か国での話し合いにて対応、解決することとなりました。
まあ、内乱にかこつけての内政干渉と軍事介入がこの三国内で行われる可能性が完全に否定できない以上、仕方がありません。
その夜は祝賀会が行われました。
今回参加したメンバーのほか、ロマーン貴族も参加し、盛大に行われました。
僕たちもロバートの妻のジェーンさんとミーアさん、アーリヤさんが、僕の妻のキャサリン姉さん、ミリアと余余二姫が参加しました。子供たちは幼いので、国に置いて世話役に預けておきました。
僕の顔見知りも多く出席しており、あちこち挨拶に追われました。
「お久しぶり、やっと会えたわね」声をかけられたのでそちらを見ると、マリアンヌ王女が立っていました。
「お久しぶりです。マリアンヌ王女様」顔は平静を取り繕いつつ、内心びくびくしながらあいさつしました。
「ちょうどいいわ、家族の方々を紹介してちょうだい」微笑みながら王女は言いました。
ばっと見る限りは今夜は王女として、きちんとしたドレスと態度であり、ここでいきなり襲われることはないだろうと、家族たちを集めて王女に紹介しました。
「まず、妻たちですが、キャサリン、ミリア、余余二姫の三人です」
「お久しぶりでございます。キャサリン・アントです」
「初めまして、ミリア・グランドです」
「お初にお目にかかるのじゃ。わらわは余余二・グランドと申す。よろしく願う」
「皆さんお久しぶり、若しくは初めまして、私はマリアンヌ・ロマーン。皆さんにお願いがあるの。単刀直入に言うと、私もバースの妻に混ぜてほしいのだが」
ミリアと余余二姫はキャサリン姉さんの方を見ました。
「今日はずいぶん大人しいですわね」
「あれから父上にこっぴどく叱られてな。さすがの私も少し反省した。だから正攻法で行こうと考えたわけだ」
「申し訳ありませんが、もう枠はいっぱいなので、お断りさせていただきます」
「バース殿の意見はどうなのじゃ」今度は僕に振ってきました。
「私自身もう十分です。これ以上妻はいりません」と断言しました。
「しかし、キャサリン殿は出産してまだ一月ばかり、聞いた話だとミリア殿も妊娠中だとか、余余二殿はまだ幼い。夜の生活も満足にできていないのではないか」マリアンヌは畳み掛けてきました。
「わらわもバードと一緒に寝ておるぞ」余余二姫は胸を張って言いました。
マリアンヌはびっくりした顔で「おぬし、このような年端も行かぬ子に手を出しておるのか。さすがにそれは引くぞ。英雄色を好むとは言ったが、それはまずいだろう」と言いました。
周りの女性たちの目が痛いです。キャサリン姉さんとミリアの方を見ると、やれやれという顔をしていました。
ブルネット姉さんがこっちにやってきます。顔が怖いです。
このままでは半殺しは確定です。よって、本当のことを言うことにしました。
「寝たと言っても、ただ一緒に寝ただけ。何もしていない。余余二姫、そうだよな」僕は余余二姫に同意を求めました。
「一緒に寝る以外、何かあるのか」余余二姫は首をかしげて不思議そうに答えました。
周りの空気が柔らかくなりました。ブルネット姉さんもやれやれという顔をして、戻っていきました。九死に一生を得た思いです。
「そうかそうか寝るだけか」マリアンヌ王女は破顔一笑しました。
「それでは、やはりたまっておるだろう。ほれ、私を娶ればお前の欲望を解消してやろう」
「マリアンヌ様、あまりに直接的です」僕は頭を抱えました。
「大丈夫です。私が解消してあげますので」ミリアが僕に抱き着いて言いました。
「でもおぬし、孕んでおるのだろう」マリアンヌ様は言いました。
「我々の部族に伝わる妊娠しても夫を満足させる方法を母に教わっております」ミリアはにこやかに言いました。
「ほう、それは興味深いな」マリアンヌは興味を惹かれたように言った。
「それはそれとして、お主たちずるいぞ」とマリアンヌは言いました。
「キャサリン殿は許嫁だったのだろう。ミリア殿はロバート殿の縁で知り合った。余余二殿など押しかけ女房と聞いたぞ。みなたまたま私より先にバースと知り合っただけではないか。私にだってチャンスが欲しい」
「それは無理です。出会う機会は運ですから」キャサリン姉さんは言いました。
「そんなこと言わないで分けてくれよ。側室でいいから。こんな面白そうな男いないのよ。これ逃したら、血筋だけは良い、面白みのないどっかの貴族に嫁入りさせられることになるんだよ」マリアンヌ王女は懇願しました。
「同情はするけれど、それは仕方がないことよ。王族に生まれたのだから、それは甘んじなくてはいけないわ」
「なんだよ、バースだって侯爵家の嫡男で大貴族だろ。それが、自由を手に入れたと思ったら、国を作って、名声をほしいままにしているじゃないか。私だって、自由が欲しいし、バースみたいな冒険がしたい。バースだったら、私をハラハラドキドキの世界に連れて行ってくれる。キャサリン、あなただってそうでしょう。侯爵の正妻として、つまらない社交界で女たちの嫉妬や欲望にまみれたやり取りに一生を費やすはずが、大国の宰相として堂々国を動かしている。私もそういう世界に行ってみたいんだ。お願いだよ」マリアンヌ王女は泣きそうになりながら懇願しました。
「別に結婚でなくてもいいじゃないですか」ミリアが言った。
「貴族の女が自由になるためには、結婚しなければならないのよ。夫と一緒なら多少の自由は認められるけど、独身の娘が自由にできる範囲なんてたかが知れているの」マリアンヌが答えました。
「あなたは、ミリアさんね。バースのこと、そしてその妻たちのことは調べたわ。バースの親友の婚約者だった姉の縁でバースと知り合ったのよね。すごい運だわ。あなた、異民族の村の村長の娘、それも次女なのよね。それがバースの妻に収まって、一緒に冒険したんでしょ。南の果てまで言ったとか。普通、村から一歩も出ることない、それも異民族出身者が、いまや大国の第一側妃で、将来あなたの子が国を継ぐのよね。将来の国母よ国母、上級貴族の娘が最大の目標として努力を重ね、派閥を作り、あらゆる手管を使って成し遂げるものをやすやすと手に入れられるなんて、あなたの強運がうらやましいわ」
ミリアは泣きそうになりました。僕は言い返そうとしたところで、余余二姫が口を開きました。
「ミリアをいじめるな。ミリアは旦那様のことが好きになってすべてをささげたのじゃ。旦那様がたまたますごい人物でここまで来たが、旦那様と一緒なら例え普通の農民でもよかったはずじゃ。おぬし、王女であろう。民のことを考えて働くのが筋じゃろう。さっきから聞いていれば己のことばかり。恥ずかしく思わぬのか」
「あなたに何が分かるの。王女の苦労なんて何も知らない癖に」マリアンヌ王女はにらみつけた。
「わらわも王女じゃ。それも亡国のな。見知らぬ蛮族の王に嫁ぐように言われ、親しい臣下も奪われ、捨てられるように嫁ぎに来たら、蛮族の王からも婚姻を断られ、もう一生日陰者として生きるしかない人生だった。そして戦争が起き、国が滅び、旦那様の温情で妻にしてもらい、わらわに付き従う多くの民を守っておる。おぬし、わしの立場になってみるか」余余二姫はマリアンヌ王女に厳しく言いました。
マリアンヌ姫はうつむいて、黙ってしまった。床にぽたぽたと水滴が落ちた。
「ごめんなさい。つい感情的になってしまったわ。ミリアさん本当にごめんなさい。余余二姫、私あなたのことも調べて知っているわ。あなたの人生は一つの英雄譚よ。余人にまねできるものではないわ。敵が攻めてくる状況で、逃げることができなかった民とともに運命を共にする、その行為だけでも王族の鏡だわ。そして敵の王の前に身をささげて民を守り、それらの民をまとめて国を再興した。その話を聞いた時、正直私には無理だと思ったわ。そして激しく嫉妬したの。あなたは王族の理想そのものだもの」
そして反省するように言ました。「そうよね、私、自分のことばかり考えていたわ。王族の一員として、どうあるべきか考えていなかった。それに、バースのことも単に自分のために利用しようとしていたにすぎなかったわ」
マリアンヌ姫は踵を返して、立ち去ろうとしました。僕は思わず声をかけました。
「また戦争が起きると思います。もし戦争に勝てたら、私はまだ、冒険できる期間があります。その際には誘ってもいいですか」
マリアンヌ王女はにこりと笑って「ありがとう。ぜひ誘ってほしい。喜んでついていくよ」と言って立ち去りました。
「バースって、甘いのだから」キャサリン姉さんはあきれたように言いました。
「でもそこが旦那様のいいところです」ミリアが言いました。
「そうじゃな。ところでさっきの話じゃが、一緒に寝れば子供ができるのではないのか?」
「あとで、キャサリン姉さんかミリアに聞いてください。詳しく教えてくれますよ」僕はそう言って微笑みましだ。
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