第31話 カリオス王国をめぐる蠢動
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ブレイド王国王宮
ブレイド王都重臣たちが会議を開いていた。
「ホール伯爵の反乱は失敗に終わり、完全に鎮圧されました。バルバドス王国でのスカイ・グランドに敵対する勢力はほぼ壊滅しました。また、多くの貴族が国外に追放、若しくは逃亡しており、我が国にも多数が流れ込んでおります」重臣の一人が報告した。
「我が国で何か蠢動されると面倒だ。亡命貴族はいつものようにいくばくかの金をやって、ジャルマン王国に行ってもらうよう手配しろ」王は面倒くさげに言った。そして続けて、 「南のカリオス王国はどうだ」と問うた。
「使者を送り、同盟の機会を探りましたが、反応ありません」外務担当の重臣は言った。
「ベリア半島からも多くの亡命者が我が国に逃げ込んでいますが、それらもジャルマン王国に行ってもらっています。ジャルマン王国は亡命貴族だらけになっていますな」
「亡命貴族をあそこまで受け入れているということは、そのうち、何か動きがあるだろう。そのとき我々はどう動くのが一番ベストかを考えなくてはならない。我が国はジャルマンと友好関係を結び、近隣の国々と対抗してきたが、もし今後ジャルマンがロマーンやバルバドスと戦端を開く場合、我が国にも参戦を求めてくる可能性がある。我が国はジャルマン王国とはアルプ連邦を挟んでいる。通行の自由は認められており、特に不便はないが、やはり直接同盟を結ぶのは不安があるからな」そう言ったあと、話を続けた。
「カリオス王国の動向に目を配れ。今回、どう動くか見えなかったため、ホールの反乱に積極的にかかわることができなかった。最低でも中立に、できれば我が国と同盟を結ぶよう促せ。もし、カリオス王国と同盟が結べれば、ジャルマン、ブレイド、カリオスで三国同盟を結ぶことが可能である。そうすれば、ロマーンやバルバドスと対抗できる戦力をそろえることができる。何としてでもカリオス王国を口説き落とすのだ」王は重臣たちに厳命した。
「我が国わが王家が生き残るためには、どのようなことでもしなくてはならない。ジャルマンとロマーンの情報には目を配り、すぐに対応しなくては、我が国は消滅してしまう。本当にこの国の王は気苦労が絶えぬ」王はため息をついた。
僕とロバートは話をしていました。
「今回の反乱は諸外国からの干渉もなく、無事に終わってよかったな」ロバートはほっとするように言いました。
「今回、カリオス王国の動きがなかったからね。ブレイド王国も動くに動けなかったのだと思うよ」僕が答えました。そして、「ただ、これからブレイドとジャルマンがどう動くかわからない。こちらも何か手を打っておかないと」と言いました。
「前にブレイドと戦った時はジャルマンはなにもいってこなかったよな。どうしてだい?」
ロバートが尋ねてきました。
「あの時はブライドはフーシと繋がってバルバドスに攻め込んでいたからね。不利になったと言ってジャルマンが助ける理由がなかったのだろう。あと、バルバドスの外務大臣が何か動いていたのかもしれないし。なんにしてもあの時点では、我々には裏の事情はあまり関係なかったからね」とバードは答えもした。
「とりあえずこれからどうする?」
「キャサリン姉さんに聞いて、対応を考えるか。前に連絡した時も返事がなかったし、心配だからロマーンに行ってキャサリン姉さんに会ってくるよ。ミリアのことよろしく頼む」
僕はロマーンに帰りました。キャサリン姉さんのところを尋ねると、屋敷はてんわやんわでした。
僕が近くにいた使用人に「どうしたんだ」と聞くと、「キャサリンお嬢様がまもなくご出産です」と言ってバタバタと立ち去って行った。
僕はあわあわと慌てて、出産場所に向かいました。何回か使用人を捕まえて場所を聞き、部屋の前に辿り着きました。
ドアにはこの屋敷のメイド長がでんと座っておりました。このメイド長、僕が赤ん坊の時から面倒を見てもらっており、おやつをもらったり、いたずらして叱られたりもしたこの屋敷の重鎮です。
彼女は僕の顔を見ると、「もうすぐご出産です。しばらくそこでお待ちください」といいました。
「キャサリン姉さんは大丈夫なのか?」と聞くと、きっとにらまれて「バース様、出産は女の一大事です。戦と同じで命がけでなんです。大丈夫ではありません!」と言いました。
「バース様はここで女の戦を見ていてください。キャサリンお嬢様なら無事にやり遂げるはずです。キャサリンお嬢様を見守ってやってください」と言って、他のメイドに椅子を用意させ、僕を座らせました。
何時間たったでしょう。部屋からおぎゃという声が聞こえました。
僕とメイド長が顔を見合わせて、「生まれた!」と同時に叫びました。
僕が部屋に入ろうとすると、メイド長が「しばらくお待ちください。私が様子を見てまいります」と言って、中に入っていった。
しばらく待たされて、僕も中に呼ばれた。中に入ると、キャサリン姉さんが疲れた表情で、寝ていた。僕の顔を見ると、「男の子よ」と一言言った。
「ありがとう、本当にありがとう」僕は涙を流しながら言った。
「母子ともに健康です。おめでとうございます」医者が僕に挨拶してきました。
「先生ありがとうございました。子供はどこに」というと、メイド長が子供を抱いてきました。赤ん坊はふみゃふみゃ泣いています。顔を覗き込むと、なんとなく僕に似た可愛い男の子でした。
父親として頑張らなくてはな、といまさらながら自覚しました。
とりあえず、キャサリン姉さんは今日は休むそうで、僕は実家に帰りました。
実家に帰りついて、何か忘れていることに気が付きました。
あっ、キャサリン姉さんに聞くことがあったんだ。でも、あの状況じゃとても無理だし、落ち着いてからでいいか、とその日は実家に泊まりました。
両親にキャサリン姉さんが出産したこと、男の子だったこと、ミリアが妊娠したことを伝えると、とても祝福してくれました。父など「初孫だな。早く会いたいな」と言って、小躍りしていました。
そのあと、父とジャルマンについて話をしました。
「最近、ジャルマンがロマーンとの国境でいろいろ蠢動している。外交的にも何か画策しているようだ。おそらく、ロマーンの影響が強いスカイ・グランド連合王国がジャルマンの南にできたことで、かなり脅威に感じているのだろう。ロマーンとジャルマンは何度も戦い、現在も潜在的に敵対している。形成が完全にロマーンに傾く前に、何か手を打とうと考えているのではないか」と父は推測していることを話しました。
「ロマーン王国の内務大臣でキャサリンの父であるレオポルドは、スカイ・グランド連合王国とカリオス王国と何らかの関係を持つことを考えている。また、ジャルマンも同様のことを考えているはずだ」そういって、にやっと笑い、「バード・グランド大将軍はロマーンとジャルマン、どちらを選ぶかな?」と言った。
「父上、自明の理を確認する必要はないでしょう」と僕が言い返すと、「おまえ、国家というものは、その利益を最大に考えて行動する必要があるのだぞ。たとえ、親兄弟といえども、国益に反すると思えば、敵対する必要もある。その覚悟をもって国を運営して行かなくてはならない」と教え諭すように言いました。
「このあたりの考えは、フライ家の方がもっと苛烈だろう。俺たちアント家は情に流されやすいからな」と笑って言いました。
翌日、スカイ・グランド連合王国に帰り、ロバート達に出産の件を伝えると、皆で喜んでくれました。ミリアも「早くキャサリン姉さんの子供をみてみたい」と言って、自分も出産を頑張るぞと意気込んでいました。
ちなみに、スカイ・グランド連合王国にフライ侯爵家から僕宛の使者が来ていて、キャサリン姉さんの出産が始まったことを伝えに来ていたそうです。
どうも行き違いになってしまったようでした。
ロバートには、カリオス王国の件は相談できなかったことを伝えると、仕方ないよと言いました。
ロバートと相談して、カリオス王国に挨拶に向かうことにしました。とりあえず情報収集です。キャサリン姉さんがいないのが少し不安ですが、やむをえません。
僕を団長に外交団を派遣することとなりました。外交担当の家臣や何人かの魔法使い、書記官などを引き連れて、カリオス王国に行くことにしました。
先ぶれの使者を先に送り、訪問することを伝えました。
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