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閉話9 フーシの野望とバルバドスの苦悩

本日2回目の投稿です。お読みいただければ幸いです。

フーシ王宮にて

 フーシ王イエローは重臣からの報告を聞いていた。

 「西シルクの統治は順調に進んでいます。治安維持をしっかり行い、税をシルク王国時代より単純化、公正化したことで、住民たちが我々の統治に従うようになり、安定してきました。土地の豪族たちの反乱もやみ、敵対するものは滅びるか、シルク復興国、略称北シルクに逃げたようです。味方になった豪族は我が国の貴族としての地位を与えたところ、我々に従うようになりました。予定よりも早く、同化できそうです」


 「キャサリン姫の言ったとおりに行ったら、良い結果が出ましたな」他の重臣が言った。

 「本当にキャサリン姫は有能だ。ところで、キャサリン姫が妊娠したと聞いたが、お祝いは送ってあるか」イエロー王が聞いてきた。

 「はい、いくつか見繕いお送りしてあります」重臣の一人が答えた。


 「王よ、我々が割譲した領土から魔石が発見されたとのこと。惜しかったのではないですか」商務を担当する重臣から発言があった。

 「惜しくはないな。我々では、魔石を発見することは難しい土地だった。経費ばかりかかり、何の意味もない土地だったのだから、今更とやかく言っても仕方がない。まあ、魔石を安く売ってもらえるように、交渉するぐらいはできるだろう。それにロバート殿、キャサリン殿、バード殿とは友好関係を築いておく必要がある。西部の安全のためにも、いずれ東シルクをわがものにするときのためにもだ。ところで東シルクの情勢はどうなっているか」イエロー王の問いかけに東シルク担当の重臣が答えた。


 「シルク正統王国、略称南シルクは現在安定しております。政治的には重臣に名門のベテランが多く、政治運営は安定しています。我が国と和睦したことに反対した者たちもすべて北に逃げ出したようで、最近は北への逃亡者はほとんどいません。左真人達が移住したことで、兵員の補充もできています。逆に南シルクでは外国との交易ができることで、経済が盛んになり、北から商人たちが移住してくることが多くなっています。また、これまでとは逆に農民や兵士で南に逃げてくるものが出ています。聞いたところ、北シルクでは北の蛮族たちとの戦いが増えており、税も上がり徴兵も厳しく、耐えきれずに逃げ出したとのことです」


 「北の蛮族は昔からシルクと戦っておりました。もともと第5皇子はそのために派遣されていたはずです。これまでは、兵員も戦いに係る費用もシルク全体で負担していたのが、シルクの中でも貧しく、人口も少ない地域である北東地方のみで賄わなければならないとなれば、税や兵の徴収が厳しくなるのが当然でしょう」外交担当の重臣が言った。


 「それでは、当分南に攻め込んでくることはなさそうだな」イエロー王は言ったが、シルク担当の重臣は「北シルクには多く統一を主張する者たちが流れ込んで、一大勢力となっています。その者たちが、南進を主張し、第5皇子も兵を出さなくてはならないかもしれません」と発言した。


 「南シルクには国境の守りを固めるよう進言しておこう。また、軍事物資の供与も進めるようにしろ。更に、もし北シルクが攻めてきても、守りに徹するよう忠告しておけ。北シルクはすぐに補給が立ち行かなくなるだろうからな。何せ南と西は敵国、北は蛮族、東は険しい山々により行き来が難しい土地となっている。領土は貧しく、兵士は精強だが、数が足りない。この条件で、さて敵はどう手を打ってくるかな」と、イエロー王は考えるそぶりを見せた。


バルバドス王宮にて

 王と4人の大臣たちが会議室に集まっていた。みな、沈痛な表情で席についていた。


 「グランドたちが南方領土の開発に成功したそうだな」王が口火を切った。

 内務大臣のホルム侯爵が答えた。「はい、今回フーシ王国から割譲を受けた領土から大量の魔石を発見しました。さらに我々が割譲した領土から、砂糖や貴重な作物を見つけ、それらを育てる農園を建設しただけでなく、対岸の蛮族たちを手懐けて、海岸地帯にも広大な農園を作りました。更に南方に領土を広げ、金などの貴重な鉱物や宝石を採取するなどしています。我々が割譲した群島が中継基地になっているようです」


 「なぜ、我々がその利益を手にできなかったのだ。南方に送った者たちは無能ばかりだったのか」王は怒りに震える声で、ホルム大臣に言った。


 「調査不足であったと言えましょう。今回開発に当たったものは罰として爵位はく奪、追放といたします」


 「魔石の件も問題ですな」カムイ軍務大臣は言った。「我が国の輸出品のうち、魔石が大きな地位を占めています。今回、発見された魔石鉱山の埋蔵量は莫大だそうです。おそらく、かなりの産出量が見込まれるでしょう。顧みて、我が国の魔石産出量は年々減少しています。掘りつくした鉱山が多く出ており、このままでは枯渇する恐れがあります」ホルム大臣は説明した。


 ブランコ外務大臣は「いままで魔石の輸出国として、外交的に強い立場でいられたのだが、その地位を失うということか。どうすれば…」と唸った。


 「グランドとスカイを独立させたのは間違いだった。何とか再併合できないのか」王は言った。スベリ宮内大臣が「今回、連合公国になると通知がありました。これを違反行為として、独立を取り消し、我が国に帰属を求めてはどうでしょうか」と言った。

 「そんなことしたら、すぐにでも戦争だ。せっかくの宗主国としての地位も失いかねんぞ」とカムイ大臣は言った。


 スベリ宮内大臣は「武力での解決は難しいか」と聞いたが、「常勝将軍バードの強さは知っているだろう。背後にはロバートがいる。ロジスティクスも完璧だ。シルクでの戦いやアサシン進攻で活躍したキャサリン嬢もいる。彼女はロマーン王国で大宰相と言われたベンジャミン・フライの孫娘だ。最悪の事態、いやそれ以上の悲惨な状況しか想像できない」とカムイ大臣は言った。


 「それ以上の事態とは何か」とブランコ外務大臣は尋ねた。

 カムイ大臣は「ロマーンの介入だ。バードはアント侯爵家の嫡男、キャサリン嬢はフライ侯爵家の令嬢だ。ロマーン王国の有力貴族が治める国に攻めていった場合、ロマーンの反応はどうなると思う?見捨てて、むざむざ殺させるとは思えんな。さすがにロマーンから軍の遠征は難しいが、2大英雄と言われたベンジャミン・フライとジョージ・アントが出てくる可能性があるぞ。ジョージ・アントの名は知っているだろう。あの不死将軍だ。全滅必至の戦場でも必ず勝って帰ってくる伝説の男だ。恥ずかしい話だが、バードとジョージ殿が戦場に出てきたら、わが軍が士気を維持できるか難しいぞ。下手すると、軍が丸ごと寝返りかねない」と言った。

 「お前軍を預かりながら、その体たらくはなんだ」スベリ宮内大臣は起こったが、カムイ大臣は「バードを便利に使いすぎた。奴のおかげで、我が国は何度も危機を救われた。国に対しても多大に利益をもたらした。そんな奴を尊敬している隠れシンパはあちこちにいる。さらに軍人ならば誰もが知っていて畏怖の対象になっている不死将軍が出てきたら、わしの力ではどうしようもない。無能と言われても仕方がないな。大臣を首にしてくれてもかまわんぞ」と言った。

 スベリ宮内大臣は黙ってしまった。つい感情的になって怒鳴ってしまったが、カムイ大臣の有能さはよく知っている。それにバードを利用することは我々皆で決定したことで、カムイ大臣には嫌がるバードに無理にやらせる役目を押し付けるなど無茶をさせたこともわかっていた。


 「お前を首にしたら、軍はどうすればいい?とりあえず対策を考えねば」と王は言った。

 スベリ宮内大臣は「王女をロバートとバードに嫁がせて、その子を後継ぎにさせてはいかがでしょうか。幸い、キャサリン嬢はロマーンに帰るでしょうし、残りの妻たちは身分が低い。正室に押し込むことは可能でしょう」と提案した。


 「確かにキャサリン嬢を除けば身分が低いが、そんなことをすればロバートもバードも間違いなく怒りだすぞ。妻たちの序列は決まっているし、二人とも妻たちをとても大切にしている。嫁がせることさえ難しいのに、正室に据えろというのはあまりに無理があるのではないか」ホルム大臣は苦言を表した。


 「ロバートとバードたちに何かするのは難しいので、魔石の件についてはジャルマン王国と分け合っている北の魔石鉱脈を奪い取って、産出量を回復させてはいかがでしょうか」ホルム大臣が言った。


 「ジャルマンは強い。北の強国だ。北の鉱脈はたしか、ロマーンとの戦争で弱っているところに付け込んで、何とか対等の分割に持ち込んだはずだ」ブランコ外務大臣は言った。


 「正直、今戦争をして勝てるかどうかわからん。これは戦力的な意味でだ。我が国は直営軍が少なく、貴族たちの持つ私兵に頼っているところがある。それらをまとめて戦った場合、勝てるかどうかはわからない」カムイ大臣が言った。


 「バードたちを使ったらどうだ?」王は尋ねた。

 「バードたちならば勝てるかもしれない。バルバドス軍とスカイ・グランド軍を使い、バードが指揮をし、兵站をロバートに担当させればいけるかもしれない。だが、褒賞として何を与えます?」カムイ大臣は尋ねる。「すでに独立した国に頼むのです。宗主国として依頼することは可能だが、それ相応の代償を用意する必要がありますぞ。金や勲章、王女じゃ奴らは動きません。かといって、割譲する領土はないし、魅力のある利権もない。王よ、何か彼らが欲しがるものに心当たりはありますか?」


 王は黙ってしまった。与えられる領土はない。確かに彼らの活躍のおかげで、王室直営地は増え、戦争での報奨金で国庫も潤ったが、収入として余裕がある状態ではない。


 いままでできなかった軍備の整備や放置していた王宮を代表とする各種公共施設の修理など支出要素はいくらでもあった。


 実際、フーシからもらった報奨金はすでに使い果たしてしまった。

 「今とれる策は少ない。わが娘を妻に迎えるよう依頼するだけはしておくか」王は元気なくいった。

 4人の大臣たちはそれしかないなとうなずいた。


 しばらくして王のもとに一人の男が謁見の申し出をしてきた。宮廷貴族のアサハカ子爵だ。彼は、どこの派閥にも所属できていないため、役職に就けていなかった。

 ただ、彼には野心があった。上級貴族になり、自らが派閥を率いたいと考えていた。そのため、魔法、その中でもあまりメジャーではない死霊系魔法にのめりこんでいた。


 「王よ、スカイ・グランド連合公国を手に入れる良い考えがあります」アサハカ子爵は王に進言した。


 王は驚いて、「なぜそのことを知っている?」と問うと、「スベリ宮内大臣の屋敷のメイドの一人が私の娘なのです。スベリ宮内大臣が独り言を言っているのをたまたま娘が聞きまして、そこから私が知ることになりました」と答えた。

 王は一瞬迷ったが、「その話、詳しく聞きたい。別室に移るぞ」と言って、謁見場から場所を移した。


 「わたくしのところで働いております死霊魔法使いに聞きましたところ、魂の移動という魔法があるそうです。これを使い、スカイ殿とグランド殿を操ってはいかがでしょうか」

 「その魔法と計画を詳しく教えてくれ」と王は聞いた。

 「魂の移動とは、人の魂を破壊し、そのあとに別の魂を移動させる魔法です。まず、スカイ、グランド両名を捕えます。謁見場に呼び出し、武装を解いてしまえば、捕らえることは十分可能です。そのまま、死霊魔法使いを使い、両名の魂を破壊し、その代わりに死霊魔法使いの魂を移動させるのです」アサハカ子爵は得意げに言った。

 「グランドは魔法を使うぞ、それに死霊魔法使いの魂ではなく、王家に忠誠を誓う騎士の魂を移動させた方がよいのではないか?」王は尋ねた。

 「グランド殿の魔法には謁見場に魔法封じの結界を張っておけば大丈夫です。それと、魂の移動は高度な魔術が必要らしく、死霊魔法使い自身でないと成功しないそうです」

 「信用できるのか?」

 「彼らには成功の暁には莫大な富と美女を与えることを約束しています。彼らはそれで満足だそうです」アサハカ子爵は続けた。

 「魂を移動させるためにはそのための施設と結界が必要です。王宮の地下を使用する許可をいただきたく思います。また、このことは内密にしていただきたい。あと、成功の暁には私を侯爵に陞爵いただき、魔法にかかわる部門を統括させていただきたい」


 「わかった。外の大臣たちには話さないでおこう。なんとしてでも成功させるのだ」

 「王よ、絶対に成功させます。ご期待ください」アサハカ子爵は自信満々に言った。


お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただけると大変ありがたいです。星一つ頂けたら大変感謝です。ブックマーク頂けたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。

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