第3話 バルバトス王国へ
明日からは19時に投稿します。お読みいただければ幸いです。
旅の目的地バルバトス王国につきました。この国でも盗賊たちはたくさんいて、僕の財布の一部になってくれます。
正直、もう一生働かなくても贅沢三昧できるぐらい稼ぎました。
いつも魔法ばかりで剣の腕が鈍ると嫌なので、王国の首都バルバトスで開かれた剣士の大会にも出ました。戦いが楽しくて思いっきりやってしまい、優勝してしまいました。そうしたら騎士団から騎士にならないかと言われました。
当然丁寧にお断りしました。騎士なんかになったら、冒険できなくなりますしね。
バルバトスで、おいしい料理をいろいろ味わい、この後行き先を東の方に向かうことにしました。聞いたところ、東には未知のフルーツがあるとのこと。ねっとり濃厚にして、甘すぎず、そのままで食べてもよし、揚げてもよし、焼いてもよしのフルーツだそうで、これは食べるしかないでしょう。
東に向かった僕はいきなり冒険者ギルドから徴兵されてしまいました。情報を集めたところ、東に広い領地をもっている伯爵が、部下の男爵2名と東の国からの防衛に当たっていたのですが、いきなり東の国から大軍でもって攻められたそうです。
男爵の一人が息子たちとともに最前線の防衛拠点の砦にこもって防戦していたが、かなりの大軍だったため、伯爵は救援に向かわず、もう一人の男爵とともに王に救援を依頼するという名目で首都に行ってしまい、そのため守っていた男爵一家は全滅したとのです。
妾腹の息子が一人いて、その子が急遽呼び戻され、防衛軍の指揮を任されたとのことで、冒険者ギルドもそこに兵士を出すことになりました。僕はたまたまそこにいたため、徴兵されてしまいました。おまけに強制依頼らしく拒否ができませんでした。
集まった兵士たちを見て、僕は愕然しました。農民たちが徴収されてはいましたが、武器はなく、冒険者たちも全く統制が取れていませんでした。
一応軍人の家系なので軍務についてある程度は知っていた僕は、このままではまずいだろうと思い、だめもとで指揮官のもとに行って意見しようとしました。聞き耳をもたなかったら、場合によっては逃げ出すのもありかと思いました。
総司令官のところにはすんなりと通されました。司令官のいるテントに入ると、総司令官は青い顔をして、頭を抱えていました。僕が「大丈夫ですか?」と声をかけるといきなり抱き着いてきて、「ねえ、君、軍の指揮できる?お願いだから助けて」と泣きつかれました。
話を聞いてみると、その男爵の三男、ロバートと言うが、現在17歳、王都の下級文官で、軍事は全くの専門外だそうです。
そもそも妾腹で本妻の男爵夫人から嫌われ、苦学して下級文官試験に合格して王都で働いていたとのことだそうです。
仕方がありません。一応軍人一家の嫡男で子供のころから戦術・戦略に触れる機会も多かったし、ロバートよりはましかなと思い、司令官代理を引き受けました。
とりあえず、農民たちには、盗賊から奪った武器を配り、足りないものは自腹を切って購入しました。僕は補給とか物資の管理、いわゆる後方任務は正直苦手なのだけれど、ロバートに任したら、途端に生き生きと仕事をし始めました。
ロバートはなかなか優秀で、お金を預けておけば、武器、防具の補給、食糧の配給などとても手際よくこなしてくれました。
敵の侵攻は続いています。僕は渓谷の谷間に陣地を作り敵を待ち受けました。
吊り野伏せの戦法を行います。これは、おじい様が使った戦法で、子供の時から何度も聞いてそのたびに感動したものです。
おじい様たちが国を再建したあと、弱った我が国は外国から一斉に攻め込まれました。
特に大国であったジャルマン王国は10万以上の軍勢で攻め込んできました。
これに対処するため、会議が開かれました。「ジャルマン王国が今回の攻撃の首謀者だ。奴らさえたたけば、おそらくほかの国は撤退するだろう。だれか、ジャルマンと戦うものはいないか」王はその時集まった将軍たちに言いました。誰もが下を向いて答えませんでした。
祖父のジョージも目を閉じて黙っていました。それはそうでしょう。当時の王国の兵力は動員しても1万人程度、10万以上の敵にかなうはずもありません。
王は泣きそうになっていたそうです。そのとき、臨時宰相だったベンジャミン様が言いました。「ジョー」
祖父は目を開けて言いました。「ベン」二人はしばらく見つめ合っていました。
いきなり祖父は立ち上がり、「兵をお借りします。わが命にかけて必ず敵を打ち破ってみます」そう言って、その場から戦場に行ったとのことです。
祖父は決死隊500名と祖父の魔法で生成したゴーレム兵1万で敵の本隊を襲撃、逆襲してきた敵から逃げたように装い渓谷に引き込み、事前に隠れていたロマーン王国軍1万の兵士で挟撃しました。
敵はこの攻撃に混乱し、多くの犠牲者を出して、本国に逃げ帰ったそうです。
祖父と決死隊500名のうち、決死隊のほとんどは戦死し、残ったものも全員重傷者という損害を出し、祖父自身、全身に20か所以上の怪我を負い、生死の境をしばらくさまよったそうです。
しばらくしてベンジャミン様に問うものがいたそうです。「幼馴染で親友のジョージ様にどうしてあんな危険な戦場に行かせたのですか」
ベンジャミン様が答えました。「ジョーに死んでくれと言えるのは私だけだ」
同時期に他のものが祖父に尋ねたそうです。「どうして死が待っている戦場に行かれたのですか」
「ベンが行ってくれと言ったからさ。俺に死ねと言えるのはあいつだけだ」
その話を聞いて、僕は震えました。こんな友情があるのだなと。
僕とロバートにはそこまでの関係ではないけれど、おじい様から聞いた吊り野伏、なんとしてでも成功させようと、考えました。
僕はゴーレム兵1万とともに、敵を待ち受けました。初めての本格的な戦闘で、僕の心臓は激しく動悸がしています。敵が接近してくると、僕とゴーレム兵は敵に突入しました。敵の攻撃は苛烈でした。僕自身剣をふるいながら、少しずつ渓谷のある方向に引き挙げて、敵を渓谷におびき寄せました。敵が渓谷の真ん中に来たところで、両脇から味方に攻め込ませました。冒険者たちを臨時の指揮官として、まず矢や石で攻撃し、敵が弱ったところで突入させました。敵はいきなりの奇襲に慌てふためいています。
僕は目をつけていた敵の本陣に突っ込んでいきました。邪魔な敵はすべて土魔法で左右に吹き飛ばし、敵の本陣に切り込みました。
本陣に突入すると、敵の指揮官や参謀たちを皆殺しにし、高らかに勝利を宣言しました。
敵兵は撤退していきました。わが方の勝利です。
みなで、勝鬨を上げました。
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