プロローグ バルバドス王国重要閣僚会議にて
第2章始めました。お読みいただければ幸いです。本日は9時と18時に投稿します。
会議室には5人の男たちが集まっていた。王と4人の閣僚たちである。
「次の議題は何か」王が言葉を発した。
「次は南方領土の問題です」内務大臣のホルム侯爵が発言した。
「領有から1月が経ちますが、結論から申し上げて、まったく採算がとれておりません。今後も黒字になる可能性はありません」
「どういうことか、詳しく説明せよ」王は尋ねた。
「今回、我が国が領有したのは、大小10余りの群島とその側の海岸線部分です。しかしながら、群島部分は土地の性質的に麦の生産に向かず、群島の中で最大の島でも面積がさほど大きくありません。さらに川がないため、水の確保にも苦労する始末です。また、海岸部では多少麦の生産が可能ですが、蛮族の襲来が度々繰り返され、防衛のために軍を駐留させる必要があり、兵員の維持にかかる物資のほとんどを本国から輸送するしかなく、その経費がかなり掛かります」
ホルム内務大臣からの説明を聞いて、王は渋面を作って言った。
「フーシ王国は南方領土からかなりの収益を上げていると聞いているが、これはどういうことか」
「フーシの治める南方地域はカルタ地方と言い、農業が盛んだと聞きます。さらにその東にはケメトという王国にあり、大変栄えていると聞きます。おそらくその国との交易でも相当な利益があるのでしょう」ホルム内務大臣は淡々と報告した。
「つまり我々はババを引かされたわけだ」王はあきらめたように言った。
「そのうち、誰かに押し付けるか。有力な貴族に恩賞して与えて、力を削ぐのに使えるか」王は閣僚たちを見回していった。
閣僚たちはみな下を向いていた。
「次の議題は何か」王は問うた。
「西の国境守備の問題です」軍務大臣のカムイ侯爵が言った。
「現在、西の国境は新規に獲得した領土を含め、王国軍が直接防衛に当たっていますが、王国軍の派遣経費がばかになりません。また、領土支配も代官を派遣しておりますが、新規領土の支配は困難が多く、うまくいっていないようです。この国の方針では国境付近に伯爵を配置して、支配と防衛に当たらせております。誰か配置することをお勧めします」
「誰か適任者はいるのか」王は尋ねた。
「現状、伯爵クラスではおりませんので、子爵を陞爵させて充てるのがよろしいかと」カムイ大臣は答えた。
「東部の脅威はほぼ去ったと言ってよい。グランド伯爵を西部に移動させてはいかがか」外務大臣のブランコ侯爵は言った。
「グランド伯爵はスカイ辺境伯の家臣である。引き離そうとすれば、拒否してくるだろう。無理に命じたらスカイ辺境伯とともに反乱を起こしかねない。面倒なことに伯爵はロマーン王国の侯爵嫡子で、あのロマーン再興の英雄の孫でもある。本人も常勝将軍の名を得る戦上手だ。うまく扱わないと国が亡ぶぞ」カムイ侯爵は言った。
「一つアイデアがあるのですが、聞いていただけますか」宮内大臣のスベリ侯爵が言った
「申してみよ」王がそういうと、スベリ大臣は「それでは、謹んで話をさせていただきます。現在、南東のアサシン帝国の国境を防衛しているホール伯爵を西に移動させてはいかがでしょうか。今のアサシン帝国との国境周辺は土地がやせていて、とても生計が成り立たないため、隣接している比較的豊かな土地を領土として足してやってホール伯爵領として防衛に当たらせています。さらに上納金を免除しておりましたが、それでもかなり苦しいらしく、領土を返納したいと王家に申し出ております。今回獲得したガイロ―の周辺は良い穀倉地帯となっていて、かなりの収入が期待できます。それに少し領土を足してやり、西部の防衛を任せるのはいかがでしょうか。ホール伯爵はきっと喜んで、西に転封されると思われます」と進言した。
「アサシン王国への対応は誰にやらせるのだ」王は尋ねた。
「グランド伯爵にやらせてはいかがかと。国境周辺の領土をグランド伯爵に与え、代わりに西部に持つ領土を召し上げるのはいかがでしょうか。丁度領土が近接していますし、離れた土地よりまとまった土地の方が伯爵も喜ぶかと思われます」スベリ大臣が恭しく言った。
「よいアイデアだとは思うが、グランド伯爵に少しきつくないか?」カムイ大臣は言った。
「それでは、アサシンとの国境地帯を含めて現ホール伯爵領の3分の2に当たる部分を領土して与えよう。さらに上納金を免除しよう。それでどうか」王は言った。
カムイ大臣は「それでよろしいかと思われます」と王の言葉にうなづいた。
「さて次の議題は何か」
「実はフーシ王国から軍事援助の依頼が来ております」カムイ大臣は続けて言った。
「隣国のシルク王国と前国王の王妃と王女の返還問題や、婚姻により一時沈静化していた国境問題などの理由で戦闘状態となっており、それに対する軍事援助を求めております。援助の代償して、かなりの額を金銭で支払う旨、申し出が来ております」
「具体的には、何を要求している?」王は尋ねた。
「グランド伯爵の派遣と、兵1万人です」
「その件は了承する旨、返答せよ。王としてグランド伯爵にフーシ王国への派遣を命ずる。また、兵力はスカイ辺境伯から出すよう命ぜよ」
「お待ちください、陛下。領地替えからさらに派兵まで、すこしいきなりだと思われます。命ずる前に、グランド伯爵、スカイ辺境伯に根回ししておいた方がよろしいかと思われます」カムイ大臣はあわてて王に進言した。
「それはカムイ大臣、お前に任せる。ただ、派兵は決定事項である。大臣の力でこの命令を実現させるように」そう王は言い、「次の課題の前に休憩を入れよう」といい、席を立った。
他の大臣たちも席を立ち、カムイ大臣だけが残された。
「グランドの扱いは注意が必要だというのに。西部戦線で働かせたばかりで、また戦場行か。うまく伝えないと、本当に反乱を起こしかねんぞ」カムイ大臣は小さく独り言を言って、その場を立ち去った。
お読みいただきありがとうございました。少しでも気になりましたら星かブックマークをいただけるとありがたいです。第3章を書くかどうかの判断材料にいたしますので、どうかよろしくお願いいたしますします。




