第8限目「おじさんたち、すすります!」
「ってことで、みんなで天一の作ったラーメンをいただいてるってワケ」
「レミドォ! 一体誰としゃべってんだよ」
「視聴者」
「はぁ? メタい発言すんなよヴォケ!」
平常運転の藍我に赤都葉。美少女たちはたらふく飲んだ後、すっかり締めのモードに入っていた。
「今回はこっさりを目指してみました。魚介と鶏ガラのダブル出汁スープ!」
いい感じに濁りのあるスープ、一口食べれば旨味が口の中いっぱいに広がる。素人の作ったものとは思えない美味しさだった。
「いやこれ、普通に店だせるレベルじゃん!」
「ま、ヴァーチャル世界だから好きな材料揃うってだけ」
天一は少し照れくさそうに謙遜する。
「マジ美味いっス! 濁声姉さん見直したっス」
「ああん? 誰がダミ声か、言ってみ?」
天一は声のネタには敏感であった。ヴァーチャル世界なのに味覚までも再現できるなんて今更ながら凄いシステムだなと虚は思った。
「んでさ、みんなはどんなラーメンが好き?」
骸期は何の気なしに、皆に問いかける。
「これってアレだろ? 豚骨とか魚介とか醤油とか塩とかそういうジャンル分けだろ? んじゃ俺は豚骨~」
レミドはそう言って豚骨派を表明する。
「塩派だとか言うやつ、いねぇよなぁ!!」
ここは藍我の煽りに反応する者はいなかった。やはり塩派など、おじさんの中には存在しなかったことが証明された。
「鶏白湯とか、おいしいよね」
「ああ、それ分かる。なんか直前に泡立てたりするやつとかあるよね」
「麺に魚粉練りこんでるやつとかも美味しいと思う。それでにぼしラーメンとか、なんかスープもこだわってたらなおよし」
「サイドメニューってみんな何頼む? やっぱりチャーシュー丼とか頼んじゃいがちなんだよねー」
「いや、分かる。だいたいランチセットとかでお得だったりするよね」
「チャーハンとか餃子もあったら欲しくなるよね」
「いやー分かる。チャーシュー増量系があったらそれも頼んじゃいがち」
皆がそれぞれのラーメンのこだわりポイントについて話をしている。年代・住む地域は違えど、ラーメンの話で盛り上がることができる。それがおじさんなのだ。
「んで、何の話してたんだっけ?」
ひとしきり話し終わったところで我に返った天一。
「ま、いっか」
彼らはこの仮想空間で美少女を演じている。だが、いずれはこの中の一人になるまでしのぎを削り合わなければならないのだ。
戦友であり、強敵である。
「いや、強敵って……ナレーションもセンスがおじさんっスね」
――ってことで、次回もよろしくっス。
虚嘘∞は残ったスープを啜りながら言った。