第3限目「おじさんたち、ティック〇ッカーになります!」
突如、教室のスピーカーから音が流れる。
「諸君、よくぞ、集まってくれた。運営側からの指示は一つ……」
「第3話にしてようやくデスゲームの主催者が現れやがったか……」
眉間に深い皺を寄せながら、赤都葉レミドが言った。
「いや、そんなメタいこと言わない……てか、これデスゲームじゃないから」
「実際人気ないやつは消されるんだろ。ただのおじさん、略してTOになっちゃうんだろ」
「いや、略す意味……てか、まあ、そういわれてみればそうか。いや、そんなことはさておき、それでは気を取り直して……」
話の腰を折られてしまった主催者は一呼吸おいて言った。
――全力で美少女を楽しめ!!
以上だ。
「はぁ? それだけェ? さんざん溜めて、それだけェ! このヴォケが! ヴォケ通り越してこんなのゲヴォだ!」
藍我的には、どうやらヴォケの上位後はゲヴォらしい。
「君たちの予想を裏切れなくて済まない。後はこの教室で開催されるイベントに参加して、色々はっちゃけてハッスルしちゃってくれ!!」
「いや、ハッスルって死語だろ……」
骸期が静かに呟いた。そう言い残してTSD製作者、咲乙女博士の放送は途絶えた。
「控え目に言って、おじさんだらけの教室ってクサッてならないスか?」
――かく言う私もおじさんなんスけど。
ギザ歯をギラリと輝かせて虚は言った。
「外見的には女子校だし、いい匂いしそうだし、美少女だし、問題ないでしょ」
――かく言う私もおじさんだけど。
蒼鴫みかめは眉一つ動かさずに言った。そう、この状況、本当の話は、ただのおじさんだらけの教室なのだ。外面だけ取り繕ったところで、中身はおじさんまみれ、おじさん特盛なのである。
「ま、そっか」
頓着する様子もなく、虚はそれ以上何も言わなかった。
――ってことでェ、ウェーーーーイ!!
急に教室の空気が変わった。死んだ目をした漆黒の黒髪がまた、奇行に走ったのだ。
「あたしら、自撮り王! いや、自撮り女王! Ti〇Tokでいいね荒稼ぎすっぞーー!!」
「ウェーーーーイ!!」
空気に呑まれ、藍我と赤都葉も立ち上がる。
アップテンポな曲に合わせてウインクしながら踊るその様はまさにJKそのもの。誰も中身がおっさんだと思うまい。
「うし!じゃあ誰が1番フォロワー集めれるか勝負だ!!」
「望むところ!」
いくら中身がおじさんだろうと、今は美少女。先ほどの放送にもあったように、美少女を楽しまなければ損なのだ。そして、人気のない美少女から消される運命でもある。人気を上昇させなければ、視聴者に媚び諂わなければ、己の未来はない。
骸期のこの提案はふざけている様に見えて、案外真っ当な提案だった。
「んじゃ、ロロちゃんからいきまーす!」
――パンケーキ食べたい! パンケーキ食べたい!
「いや、古ッ! さすがにおじさんチョイスすぎんだろ! 何年前のネタこすってんだよ!」
すかさず華美咲サリアがツッコんだ。外見的に見れば、華美咲サリアと、天一月渚の二人が一番Ti〇Tokについて精通していそうだった。
「こういうのはスタイルのいいあーしが圧勝なんだよ!」
「いや、そのダミ声ダメでしょ!」
「誰がダミ声じゃ! その喉使えなくしてやろうか! 文字だけじゃ読者は分かんないだろうがよ!」
天一は華美咲に容赦ない怒号を浴びせる。おじさん同士の争いは過激で物騒になりがちなのだ。
「えー次回はTi〇Tok研究編ってことで……」
――よろしくッス。
虚嘘∞はその灰かぶりの髪をわしゃわしゃとしながら囁いた。