第12限目「おじさんたち、決闘します!」
「みんな、よく集まってくれた……ついに初の犠牲者が出たようだ……」
さながらどこかの辺鄙な村の村長の如く、赤都葉は言った。厳かで落ち着いた雰囲気から、事の重大さを感じさせる。
「あー……ついに消えちゃったんだ……」
「ま、仕方ないの」
「あいつ、けっこういいやつだったよな……」
それぞれが故人に思いを馳せる。この世界は弱肉強食の世界、弱い(人気のない)者は生き残れない世界なのだ。
「かれこれここ4話ぐらい出番なかったもんな……」
「もう実はその時からいなかったのかも」
「ありえる~」
「ま、仕方ないでござる。なにしろ……」
――《《不人気》》キャラだったし……
「生! き! て! る! か! ら!」
――ちゃんと、ここにいるから!
山樹森は人生で一番デカい声を出した。
「何勝手にみんなで寄ってたかった存在抹消しようとしてるわけ! あたしはずっといたんだよ!」
必死に訴える山樹森。
「はい、茶番も終わったし解散、かいさ~ん」
「待てや骸期ィ!!」
「あたしは前からお前が気に入らなかった! 勝負しろ!」
唐突に始まった決闘ムード、山樹森のこの度胸に皆少し興味を持った。
「お? やんのか、やんのかァ!」
シャドーボクシングの真似事をする骸期。絶対に負けないという余裕を感じさせる挑発行為だった。
「翠香ァ! ロロやったら認めてやるぜェ! 頑張れやァ!」
藍我もすっかり乗り気である。しかもオッズが低いであろう山樹森に賭けている。
――決闘!!
「俺の先行! 俺はエル〇の剣士を攻撃表示で……」
「ちょっと待ったああああああ! 骸期、何いきなり決闘始めてんだよ!」
「遊〇王派じゃなくてデュ〇マ派だったか? それなら俺は凶戦士、ブレイズ〇ローを……」
「デュエマ派でもねえ!!」
相変わらず骸期は論点や話題を逸らすことに長けていた。
「あたしは、拳でやり合おうって言ってんだ」
「ったく、しゃーねーな、やってやるよ」
空気が変わる。先ほどまでのお祭りムードとは違う、河原でやり合うあの男と男の喧嘩の様相だ。
両者睨み合った後、骸期が、
「賭けろ! その外見《誇り》を! 負けた奴は脱落だ!」
「いいぜ! やってやろう! そのくらいの覚悟がなきゃやる意味がねえ!」
「という、わけで、山樹森はこのゲームから身を引きましたとさ」
「とさ、じゃねえ! 勝手に自分の都合のいいように結果を改ざんするな」
結局のところ、お互いにボコすか殴り合ったところで勝敗と言う勝敗はつかなかったのである。
「今日のところはこれくらいにしといてやるぜ」
「それ、負けた奴の言うセリフだぞ」
一部始終を見ていた赤都葉が呆れ気味に言った。
「ま、とりあえず脱落者は出ていないってことで。これからもみんな仲良くやってこーぜ」
「ま、まだ12話だしね」
――ってことで、まあ、次回もよろしくっス。
虚嘘∞は灰かぶりの髪をわしわしと掴みながら言った。