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第11限目「おじさんたち、大人になりたい!」


「なぁ……大人になったらさ……もっと何でもできるって思ってたよなあ……」


 骸期はぼそりと呟いた。


「でも、実際は働いて、時間がなくて、何も得るものがなくて……俺たちが望んだのはそんな未来なのかって……」


「そもそも、俺は大人になれているんだろうか……」


「最近は子ども部屋おじさんなんて揶揄されることも多い。実家で生きてるおじさんというだけで下に見られるんだ。加えて弱者男性なんて言葉もある……本当におじさんの人権はどんどん奪われていく……おじさんに輝かしい将来は……」


 骸期の艶やかな黒髪が左右にゆっくりと揺れる。今更説明は不要であるが、骸期ロロの容貌は美少女ではあるものの、中身はただのおじさんなのだ。


「すぅ……」


 華美咲が大きく息を吸った。そして……


「球技大会はあああああああああああああああ????」


「ん? もう終わったじゃん、サリア何言ってんの?」


「はぁ? 視聴者ごとまた結果までスキップしたのね! 視聴者も困惑するわッ! 次回予告したうつろちゃんもこれじゃただの嘘つきになっちゃうじゃん!」


「虚は嘘∞(うそはち)って名前だし、嘘つかないと逆に詐欺罪で捕まるから大丈夫っス」


「言われてみればたしかに……ってそういう問題じゃなーーーい!」


 頭を抱える華美咲。たしかに前回まで球技大会を行っていたはずなのに、誰も違和感なくまたこの日常を楽しんでいるのが許せなかった。


「あーもー朝からうるせーな、今何時だと思ってんだヴォケ!」


「普通に午後三時だが! おやつタイムだが!」


 的外れな叱責をする藍我を、一蹴する華美咲。


「サリアだけがいない街、もしかして始まっちゃう感じ? これもしかして、もしかしちゃう?」


 己がタイムリープしてしまっていることを信じて止まない華美咲。


「サリアちゃんは、ただの人……思い上がるのはよすのじゃ」


 天使の輪っかを頭上に乗せたじゅんが諭す。この天使に言われたら全てが丸く収まる。まさに鶴の一声だ。


「んで、今回の議題ですが……」


「この金城こんじょう、セレブリティ全開ですわ~~」


「あ、出番の少ないお嬢様」


「ぐッ……」


 蒼鴫あおしぎの一言は痛烈にヒットする。


「蒼鴫さんも、数えてみたらわたくしと同じ回数しか出てませんわ~~」


「はいはい、出番争いするのはやめよう」


 晴彩はざいが二人の仲を取り持とうとした。


「ま、一番出番が少なくてキャラが立ってない人もいますから」


「そうね。私たちよりも影が薄い子もいるしね」


「それって、一体誰のことかな?」


 ピキピキと血管が浮き出て怒りを露にする晴彩。


「はいはい、どうどうどう、そこまでそこまで」


 骸期はそう言ってすぐさま、続けた。


――んじゃ。


「ロロから始まるリズムに合わせて、どんどん」


――レミチェケ!


「YO チェケラッチョー! どんどんあむ4」


「あむあむあむあむ! どんどんまる2」


「〇〇まるまる! どんどんれい3」


「〇れいれいれい! どんどんボンバイエ!」


「「「「「1・2・3ダー!!!!」」」」」


 元気よく拳を天高くつき上げる一同。


「『1・2・3ダー!!!!』じゃなくてえええええ!」


「ん? サリア、みのりかリズム4知らない?」


「知ってるけど!! そうじゃなくて!!」


 多くの視聴者は知らないだろうが、これはリズムゲームである。一昔前にブームだったたこともあり、おじさんなら最初の掛け声があれば誰でも気軽に参加できるのだ。


「はぁ……もう何で怒ってたのか忘れちゃった」


「どんどん嘘八百ってね」


――ってことで、まあ、次回もよろしくっス。


うつろ嘘∞(うそはち)はいつものように灰かぶりの髪を乱雑にわしゃわしゃして言った。




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