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第1限目「おじさんたち、美少女になります!」

つい先日、ほんの数日前のことだ。なんだかよく分からない会社がとんでもない薬を発明した。その名もTSDトランスセクシャルドリーム。つまるところ、女体化薬ってやつだ。胡散臭い会社の商品ではあるが、効果はどうやら本物らしい。


 気になるお値段は……なんと2億円。そんなの一般市民が手に入れられる代物ではない。当然この俺だって手に入れることは出来ない。


 だが、1つだけ、方法があった……それは……


――1番可愛いおじさんになること。


 まったく、何を言っているのか分からない、だって?

 俺だって分からない。だけど、それが条件なんだ。


 ってことで、俺たちは仮想空間で最高に可愛い美少女になることを目指した!!



「いやいや、んなこと言ってるけどよー、お前は物珍しさで、野次馬根性で、物見遊山のつもりで、このゲームに参加したってことだろうがよ! ったく、今すぐこのゲームから降りろよ!」


 赤髪が怒髪天を突く勢いだ。語気強く捲し立ててきているのは、赤都葉せきとばレミド。制服をルーズに着こなすその様はまさに番長、凛々しい中にも猛々しく荒々しい魂を感じさせる。

――それもそのはず、彼女も俺と同じ、中身はおじさんの美少女だからだ。


「そんなやいのやいの言ったって、決めるのは視聴者なんだから。私たちは媚びへつらえばいいの」


 蒼鴫あおしぎみかめは呆れた様子で言った。こめかみにかかった髪を優雅に耳に押し当てるその様は、流れる川の如しだ。流麗で清楚、月下美人と呼ばれる類の美少女もまたおじさんである。


「蒼鴫さんの言う通りだよ。怒っていたって意味がない。そう、俺はただ、このゲームで優勝して、この薬を転売することが目的なんだ。まっとうな理由だと思わないか」


 骸期むくろぎロロは一切眉を顰めることなく言い放つ。漆黒の髪に淀んだ瞳。いかにも悪役、先ほどの蒼鴫とは対照的に負のオーラを感じさせている。中身もただのニートのおじさんなのだから、中身ガワは体を表すという言葉がよく似合う。


「そう言うところが気に入らねーって言ってんだよ! つか、転売ヤーは滅びろ」


 このクラス、いや、この仮想空間には13人の参加者がいる。この中で1番可愛いと評価された者だけが、2億円の女体化薬を手に入れることができるのだ。


「ほんとその通りですわよ! 転売ヤーは滅びろですわーーー!!!」


 金城こんじょう・ラトライト・ララエールは声高々に言った。金髪巨乳のお嬢様、巻き髪で高貴なニオイを惜しみなく滲み出している。その金切り声を快く思わなかった藍我あいが愛夢流あむるは、


「うっせーんだよヴォケが! いちいち(感嘆符)が多いんだよ! このあむる様が何歳か知ってんのかあ?」


――三十二歳だぞお!


 恥ずかしげもなく年齢マウントを取っていた。ズボラでガサツ、こちらも先ほどの金城と対照的なキャラクターである。藍我は紺色にくすんだその無造作な髪の毛を逆立てて、金城を鋭く睨む。


「年齢でしかマウントが取れない愚かな人種……なんて悲しいのでしょうか」


 蒼鴫が静かに嘆く。


「おい! あむるゥ! 表出ろや!」


 レミドも黙ってはいなかった。


「いいぞーやれやれー」


 野次馬の骸期は無感情に言った。


「一話から喧嘩するだけの物語がどこにあるっスか!」


――普通、自己紹介からでしょ!


 オレンジ髪の溌剌っ晴彩はざい祭明さめが勢いよくツッコむ。その通り、自己紹介が先にあってしかるべきだ。だが、自己紹介は二話だ。一話はこのまま喧嘩をして物語は閉じる。


「ま、そんな感じの物語ってことで……」


――よろしく。


 うつろ嘘∞(うそはち)はその灰かぶりの髪をわしゃわしゃとしながら囁いた。




推しを応援して出番を増やそう!!

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