アスクル
どれほどの思いがあれば、明日を望まないのだろうか。
安藤はその答えをまだ知らない。
今思えば夢だったのではないかとしか思えないのだが、
確かにあの日は『繰り返された』。
そして二度目の今日が終わり、
7月11日、つまり『明日』はあっけないほど
すんなりと72票という表示と共にやって来た。
漫画や小説よろしくエンドレスになるのではと、
怯えていた安藤はその表示をみて飛び上がり喜んだ。
それ以外の記憶はあまりない。
なんだかふわふわとして、
しかしながら妙な緊張感があった『今日』であった。
あれからすでに数ヶ月たっても時々思うのだ。
投票しなかった人々は、
繰り返した『今日』に満足したのだろうか。
72という投票ははたして
答えなのだろうか。
否、残りの28人はそれでもまだ
『今日』を望んでいたのだろうか。
そうだとしたら、迎えた『明日』は、
彼らにとって、絶望なのだろうか。
安藤にはその答えはまだわからない。
つまり自分は幸せなのだろう、
気が付かなかっただけで。
安藤は手を伸ばし、
アスクルのボタンを押し込んだ。
迎える明日が明るい未来…か、
どうかはわからないが、
それでもボタンを押すその瞬間は、
間違いなく、明日を望んでいる。
明日がくるようにと