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審判

あれから進展のないまま、ついに調査委員会の日がやって来た。


私達は学校の会議室のような場所に召集されたのである。


カーラは車椅子での登場だ。


私はカーラに話しかける。

「随分大げさな恰好ですのね」


「そう言っていられるのも今のうちよエリス、貴方はここで破滅するのだもの」


「自信があるようだけど無駄よ、ジェイク先生が全て白状しましたわ」


「ジェイク先生なら来ないわよ」


私は、はっと息を飲む。

(しまった!)


おそらくどこかに隔離されているのだろう、診断書の証言を封じられてしまったのである。



「両名席に着いてください」


委員会メンバーに促され、私は指定の席へ移動した。

前方に委員会メンバー、左の椅子に私、数メートル離れて右側にカーラの車椅子の配置だ。


「まずは事実関係の確認からです」


「エリス・バリスタは工事区画Bブロックにカーラ・マンディを呼び出し、攻撃魔法をカーラに放ち負傷させたとあるが間違いありませんか?」


「工事区画Bブロックに向かうエリス・バリスタの目撃証言もあります」


私は答える

「ええ、確かにBブロックに行きましたわ、でもお話合いでおわりましたの、攻撃魔法なんて身に覚えがありませんわ」


カーラが反論する

「よくもぬけぬけとそんな事が言えるわね、こちらには診断書と証人が居るのよ」


「診断書の内容は嘘です、ジェイク先生の証言もありますわ」


「だったら今すぐ、そのジェイク先生を連れてきて証言台に立たせなさい」


「ぐっ」


「私の診断書が嘘だと証明できなければ、貴女の負けなのよ」


カーラは勝ち誇ったように言う。


私はカーラを相手にするのをやめて、委員会メンバー向き直ると


「でも、私も証拠を提出したはずですわ」

と言った。


「えっ?」

カーラが意外そうな顔をする。


そこで委員会メンバーが口を開いた


「困ったことに…」


「エリス・バリスタからもジェイク医師の診断書が提出されている」


「この診断書によれば、エリス・バリスタも負傷している事になっているのだよ」


エリスが提出した診断書は、カーラの診断書と全く同じ内容であった。

つまり二人は全く同じ箇所を負傷し、同一の症状と言う事になる。


カーラの顔が青ざめる

「偽の診断書に決まってるわ!」


私はカーラに向かって言う

「だったら今すぐジェイク先生を連れてきて、証言台に立たせなさい」


「ぐっ」


「私の診断書だけが偽物で、カーラの診断書が本物だと主張するつもりなの?」


「こ…こちらには証人が居るのよ」


この場には証人のフィリップ・ デンプシーが証人として呼ばれている。


後方から男子生徒が前に出て委員会メンバーの前に立つ。


「僕は一部始終を見ていたよ」


「待って」

と私が彼に声をかけると、私の方を振り返った。


私は椅子から立ち上がるとフィリップに歩み寄る。


「本当の事を話してくれないかな、フイリップ君」


彼は私と同じクラスだ、つまり私のあの姿を見ている、私の()()()()()()()()姿()を彼は見ているのだ。


それによって私に対する好感度が引き上げられているはず。


私は彼の元に歩み寄ると()()()()()()()

「私は君を信じているよフィリップ君」


リリスから聞いたのだが、対象者と直接接触する事で魅了(チャーム)のレベルがワンランク上げれるらしい。


今日は制服の胸元のボタンをいくつかはずして胸元を解放していた。

勿論スカートの長さも短く調整してある。


彼の視線が私に釘付けになっていた。

今の私は見ているだけでも好感度が上がるのだ。


少し前かがみになって

「私のお願い聞いてくれないの?」

と問いかけると、彼は真っ赤になっていた。


もともと好感度が高かったのだ、それが最後のダメ押しになった。


「わかったよ、本当の事を言うよ」

彼は決心を固めたようだ。


「みんな聞いてくれ、僕の証言は全部嘘だったんだ」

「母の治療費が必要で、カーラにお金を貰って嘘の証言をしたんだ」


「こ…この女は私を殺そうとしたのよ!」

いよいよ追い詰められたカーラはヒステリックに叫ぶ


「攻撃魔法を受けて、その程度の怪我で済むわけないじゃない」


「それは、術者が未熟で…」


私はおもむろに、カーラに右の手の平を向ける


「エクスカリバー」


ビーム兵器のようなエネルギーが、カーラの頭上を通り過ぎ、壁におよそ2メートルぐらいの穴を開けた。

手加減をしていてもこの威力なのだ。


「ひっ」


車椅子ごとカーラは床に倒れ込んだ。

少しズレていたら頭が消し飛んでいただろう。


「私が殺意を持ったら、()()()()()()()()()()()でしょう!」


私は魔力で赤く光る目でカーラを見下ろす。


「た…助けて!」


カーラは両足で立つと、委員会のメンバーの後ろに走って逃げた。


会場がザワついている。


「今走ったぞ」


「足の怪我は嘘だったのか」


「どう言う事なのか」


と言った声が委員会から漏れ出ていた。


カーラの足の怪我が虚偽である事を、自らが証明してしまったのである。



委員会の話し合いが行われ、結論が言い渡される。


「本件はカーラ・マンディの狂言であると判断致します」


「これにより、エリス・バリスタの無罪が確定しました」


委員会のメンバーにより裁定が下された。


私はほっと胸を撫でおろした。


「あ、でも校舎に穴を開けたので一週間の停学ね」


「そんなー」

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