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診療所

「今日は師匠から槍を借り(パクっ)てきました!」


と言ってウェンディは魔槍ゲイ・ボルグを構える。


そこへ上空から矢が一斉に飛来した。


ウェンディが空に向かって、槍をひと突きすると上空に衝撃波が迸る。

なんと、たったそれだけで、上空の矢は全て撃ち落とされてしまったのだ。


点の攻撃ではなく面で制圧できるのが伝説クラスの武器の特徴だ、おそらく彼女の槍も地形を変えるレベルの武器なのだろう。


「エリス・バリスタ先に行きなさい、ここは私が引き受けます」


「任せた!」


私とキャサリンは走り出す。

当然、私たちに向かって次々と矢が降ってくるが、ウェンディによって全て叩き落されている。


矢が通じないと理解したのだろう、今度は剣に持ち替えて襲ってきた。


ウェンディがカバーに入る。


ウェンディが槍の柄で男の手を激しく打ちつけると、手に持っていた剣がくるくると空中を舞って地面に突き刺ささる。

男は武器を失いその場で棒立ちになった。


「必殺ぅーーゲイ・ボルグキック!」


男は腹部に強烈な蹴りを食らい、吹き飛んで行く。


(なんでキックに武器の名が?)


私はツッコミを入れつつその場を後にした。



その後、敵の襲撃を受ける事はなかった、おそらくウェンディが全員撃破したのだろう。

私は無事に診療所に到着してほっとしたのだった。


キャサリンは入口で待機してもらい、私は診療所の中へ入る。

入口のドアを叩くと中から声がした。


「今日の診療はもう終わったんだ、お引き取り願おうか」

「急な腹痛のため訪ねて来ました。診ていただけませんでしょうか」


「そうは言っても、今日はもう……」

「貴族専門の開業医なのでしょう?名門バリスタ家の診察を断ったとあれば波風も立ちましょう」


「君はバリスタ家の者なのか?」

「ええ、バリスタ家長女、エリス・バリスタと申しますわ」


解錠され入口のドアが半開きになる。

「入りたまえ」

「ありがとうございます」


「まずは症状を聞かせてくれないか?」

「その前に先生にひとつお伺いしたい事があります」


「何かね」

「カーラ・マンデイの診断書を書いたのがジェイク先生だと聞きました」

一瞬ジェイクの顔色が変わる

「それがどうかしたかね」


「カーラは私のお友達ですの…とても心配で…どのような診察結果だったのでしょう?」

「彼女は暴漢に攻撃魔法を受けたのだよ、それで負傷した」


「具体的にどのような負傷ですの?火で火傷したのかしら、氷で凍傷になったのかしら」

「おそらく風で持ち上げられて地面に叩きつけられたのだろう、足に骨折と打撲が見られる」


「まぁ随分優しい暴漢ですのね」

普通攻撃に使う魔法は火か氷だ、それらの魔法は使われたら肌に痕跡が残るからすぐわかる。


風で持ち上げるにしても、数十メートルまで持ち上げてから落とすから、高いビルから飛び降りたぐらいの状態にはなるはずだ。

攻撃魔法を受けた割に怪我の程度軽すぎる。


「術者の魔法が未熟で持ち上がらなかったようだね」

「そうでしたの…命に別条は無い事がわかって安心しましたわ」


突然、横から声がした

「それで、本当の所はどうなのかしら?」

声の主はリリスである。


「誰だね君は?どこから入って……」

「カーラは負傷していないわね」


「な…何を言っているんだ」

ジェイクは明らかに動揺している。


リリスはじっとジェイクを見つめ

魅了(チャーム)レベル5」

と呟く


ジェイクは頭がガクンと垂れた状態になった後、ゆっくりと顔をあげた。


「本当の事を言いなさい、これは命令よ」

「わかりました女王様、本当の事をお話致します」


おおよそ予想通り金を積まれて、偽の診断書を書いた事を洗いざらい白状したのだ。


一通り話し終えると

「エリス、貴女に命令権を渡すからあとは好きにして」

と言ってリリスは消えた。


「今の話を学校で証言してもらえるかしら」

「わかりました女王様」


こうして私は診断書が嘘だと、ジェイク本人から証言してもらえる事になった。


「最後にもうひとお願いを聞いてもらえるかしら」

せっかく命令権をもらったのだ、有効に使わせてもらおう。


「なんなりとご命令下さい」

完全支配下のジェイクは、すんなりと私の命令に従うのだった。



次の日、学校に登校して教室に入ると、クラスメイトの中から彼の姿を探す。

そう目撃者のフィリップ・ デンプシーだ。

探してはいるものの、なかなか見つからない、まだ登校していないのだろうか。


丁度、担任のセシリアが入って来たので聞いてみた。

「先生、フィリップ君はどこにいるか知りませんか?」

「フィリップ君は当分お休みよ」


セシリアが耳元でささやく

「警戒されたみたいね、調査委員会の日まで彼は来ないわよ」

おそらくカーラの指示だろう。


(やってくれたわね)


カーラは目撃者を私から遠ざけておくつもりだ。

自宅に押し掛けても不在だろう、私ならそう指示する。

こうして私は、目撃者との接点を絶たれてしまったのだ。

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